第15話 フラダンスmovieの追憶
たしか、まだ、文字だけのLINEから、
LINE電話に移りはじめていたとき
雪のある年末近くだった気がする。
ひろみはフラダンスのショート動画を
「かっこよく編集してよ・・」と言った。
編集仕事で動画編集も教えていたから
だろうと想った。
「愛を込めてね!・・」と
軽やかに言ったのを記憶している。
もちろん、この時点で、
お互い恋心には気づいていたものの
恋に落ちている訳ではなかった。
だからこそ、よけいに彼はひろみの
「愛を込めてね」の軽やかな言葉が胸に刺さった。
ひろみの気持ちも察し、自らの気持ちもわかっていた。
しかし、どうなるものでもない、
禁断の恋と彼は思っていた。
フラダンス動画編集は
切ない、恋しい、でも、という感情が
自ずと彼の悲しい心を映し出すようなものとなった。
ある動画では、別れの切ない歌を
バックミュージックにしたとき
ひろみは「すごく泣いちゃったよ。なんであんな、音楽なの!」と直感的に泣いてつっかかってきた。
「そんなつもりじゃないよ」と返答したが
実は、彼も胸が張り裂けそうな思いで、進んではいけない恋への思いをバックミュージックに流していた。
だから、フラダンスmovieは、
彼にとっては、切なく、恋しく、
それでも進んではいけない想いを
静かに踊らせる映像になった。
ひろみは泣き、
彼もまた、泣いていた。
ただ、その涙の理由は、
お互いに、まだ言葉にできなかった。
フラダンスmovieもいくつ、つくっただろうか。
だた、真剣に、自分の心を伝えるように
自分の切ない気持ちものせながら、ただ、
「愛を込めてね」の言葉に応えるように
つくったことだけはハッキリ覚えている。
まだ、深い恋に落ちる前の季節
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