第2話

「頂戴」

三回目の催促。魔王はどんな力を持っているかわからない。

ここは素直に従った方がいいのだろうか。

でも、ここであげれば味を占めてまたやって来るかもしれない。

いいや。この人が本当に魔王なのかだけ確かめよう。

「あっ、あのー、あなたが、村の人たちから料理を取ってる、魔王、ですか?」

魔王?は小さくうなずき言った。

「うん。あたしが魔王だよ 急にどうしたの?」

大人っぽい見た目とは裏腹に声が意外に可愛らしい。

「あっ、えーと! わ、悪気はあるんですか?」

すると魔王は首をかしげて言った。

「いや? 村のやつが王様に貢物をするのは普通じゃないの?」

あー、まじか。悪気無い感じね。おっけー。

「あ、あなたのせいでみんな困ってるんですよ!いつかみんな飢え死にしちゃいます! そんな時あなたは誰に料理作ってもらうんですか!」

魔王はちょっとびっくりして、理解したように言った。

「……あ、じゃあお前に作ってもらえばいいんだ!」

は?いやいやいや魔王に料理作るなんて無理だよ!?

「いやいやいや、それは、ちょっと…。」

魔王は少し不満げな顔して反論した。

「そしたらこの村の人たち全員飢え死にさせちゃうもんねー!」

マジかこいつ。めっちゃ勝ち誇ってる顔してるぞ。人質ってワケか。

「わ、わかったよ。 でも、村の人たちから取るのはやめてくださいね!?」

すると魔王は完全理解したみたいな顔で言ってきた。

「おけまる 今日からお前あたしのご飯作ってね」

ていうか俺の料理味見すらしてないのにそれってどうなのーーーー?

「味見はした」

まじかよこの魔王心読めてんじゃん

って、ん? あ、から揚げ取られた。まじか。

「じゃねん あたしは魔界でやることがあるからさ。」

えぇ、これでいいの……?


魔界


「戻ったよー」

魔王は魔界の仲間に帰ってきたことを告げている。

「あぁ、オリーブちゃん!どうだった?」

どうやらから揚げを催促してきた魔王はオリーブという名前らしい。

「あ!ヒマワリちゃん!すごくおいしかった!」

にこにこで答えるオリーブ、だが…

「なに?どういうこと?」

どうやら言ってはいけない言葉を口走ったようだ。

「オリーブちゃん? 人間の食べ物を口にしたのね?」

ヒマワリは両手から電気を少し発生させ、オリーブの足元めがけて落とした。

「ごっ、ごめんね!?ヒマワリちゃん! もう食べないよ! ごめんって!」

どうやらオリーブはヒマワリに逆らえないらしい。

「わかった。それでいいんだよ。私たち魔王が人間の食べ物を口にするなんて、みっともないからね」

「あと、とかは言語道断だからね?」

ヒマワリはオリーブと同じく心を読むことができるため、オリーブの心を読み、それについての忠告として言ったのだろう。

しかしこの一言でオリーブはかなり傷ついた。

だが魔王の中で最高権力者のヒマワリに逆らえば何があるかわからない。

オリーブはただ小さく頷くことしかできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る