零時野球リーグ Season3

ソラ

第1話「キャンプの二刀流メニュー」

 黄昏セイルズのキャンプ初日、外野一周のランニング列のいちばん後ろから二番目に、浅間の背中があった。

 僕は三塁側スタンドの端っこで、その列をノートに写している。


 メニュー表には「走塁・敏捷性テスト・遠投」と並び、その下に赤ペンで雑に書き足された一行があった。

「打撃メニュー(浅間)」。


 ドラフトでは「右投右打・投手」と紹介されたはずのやつが、なぜか打撃メニューにもねじ込まれている。

 星影ナインで四番を打っていた顔を思い出して、僕は余白に「二刀流候補」と小さく書いた。


 午前はブルペン、午後は打撃ケージ。

 ヘッドコーチの一声で、浅間の一日はあっさり二つに割られた。


「しんどかったら言えよ。ただ、しんどいって言うやつに二刀流は任せにくいけどな」


 その冗談に、ベンチ前が少しだけ笑う。

 浅間は「終わってから考えます」とだけ答えた。


 プロのキャンプも、二刀流のメニューも、まだ一日目。

 スコアブックの外側で始まったばかりの線が、どこまで伸びるのかは、誰にも分からなかった。

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