チラシの裏(仮タイトル)

@soyogukaze

1話 出会い

「駿くん、ギター続けてね」

 さくらは涙ぐみながら言っていた

「うん。いつか一緒に皆でバンドしよ」

 淋しそうな顔をしながら答える僕

「おう。待ってるからな」

 そして、約束したゼと言った感じのイケメンの湊斗(みなと)

 


「クソッ」

 小学校を卒業したタイミングで東京から青森の弘前に引っ越す事になり、楽器教室で仲が良かった二人と別れた時の事が頭に浮かんでしまった。


「オイ馬鹿、俺まだ読んで無いんだぞ」

「あっ、わりぃ」

「何見てそんなに興奮してたんだよ」

「別に」

「別にって、もしかしてこれか?」

 高校で隣の席になったのを切欠に知り合った岡本 翔太(しょうた)が僕がイラッときて思わず握り潰したページを手で必死に伸ばし、そこに書いてあった記事に目をやっていた


「クローバーか、初ライブでスカウトされて即メジャーデビューってヤバイよなコイツ等。俺も東京に居たら今頃メジャーバンドでドラム叩いてるはずなんだけど、ここじゃなぁ」

 悔しそうに窓の外に広がる高いビルの無い田舎の街並みを見て絶望する翔太

「東京に居ても、そんなに簡単にメジャーデビューなんて出来ないよ」

「ここのドラムより俺の方が上手いぞ?」

「ふーん」

 高校生とは言えメジャーデビューしてるバンドのドラムより上手いって、こいつどんだけドラムが叩けるんだよ


「にしても、なんでこんなバンドが人気なんだよ」

 普通に演奏も歌も上手だし、旬の作詞家に作曲家を事務所が用意してラジオ、雑誌、ネットにテレビで盛り上げてるんだから、これで人気が出ない方が可笑しいだろ?

「翔太はオッパイしか興味が無いからな」

「オッパイは正義だからな!」

「それ可愛いは正義とかじゃね?」

「ロリコンのお前らとは違うんだよ」

「馬鹿、こいつはシスコンだけど俺は綺麗なお姉さんが好きだからロリじゃねーぞ」

 翔太は地元の人なので、他にも友達が何人もいた。いや、僕も中学は高校から一番近い学校だったのだけど、中学時代は田舎に来た事が嫌で友達とかは作らずに、東京に戻ってあいつらとバンドを組んだ時に、あいつらより下手なっていたら嫌だと思って3年間ギターの練習に逃げていた。



「はいはい、席へつけぇ~ホームルームを始めるぞぉ」

「うぃ~」


「で、今日はクラスの役を決める。学級委員に成りたい奴はいるかぁ~内申点上がるぞぉ~」

「内申点上がるってよ、お前しろよ」

「嫌だよ、お前がしろよ」

「なんだ居ないのか、これは時間かかるパターンか、よしお前らがそう来るなら俺にも考えがある」

 担任はそう言うと、机の上にあった紙に何かを書き出した。偏差値が低い普通科だけあって皆そこまで進学に必死では無いらしく、委員とかの面倒事は避けたい人が多いようだ。


「よしっ、出席番号1番から順に名前書いて行け」

「えぇー、先生俺達に選択権は無いんですか?」

「無いっ!」

「横暴だ。権力の乱用だー」

「はいはい。最近は働き方改革とやらで残業が出来ないからな、お前らが自主的に力行するのを待ってやれる時間は無いからな。さっさと決めるぞぉ」

「なんだよ」

「うげぇ」

 無駄な時間を使わずにすぐにクジでとか・・・。ダラダラ決まらないより良い気もするけどさ、籤運そんなに良く無いんだよな


「それじゃ発表するぞぉー、クラス委員長は岡本 翔太(しょうた)」

「えっ、先生俺?ほんと?」

「ほんとだ、お前だ」

「嘘だろ?勘弁してくれよー」

「よっ、オッパイ委員長」

「あっ、お前は副委員長だぞ?」

「先生冗談でしょ?」

「ほら、見て見ろ」

「嘘だろ?そんな事があるはずが」

「はいはい、次は~」

 保健だの美化だの文化祭や体育祭などなど次々と役員が発表され、面倒そうな役の時は愚痴も大きな声となっていた。


「で、最後に早速来週にある1年の球技大会の委員が」

 ここまで逃げ切れたんだし、このまま終わってくれ。

「住吉 凛桜(りお)と、雪谷(ゆきがや) 駿(しゅん)だ。二人は明日昼休憩に視聴覚室で球技大会委員の集まりがあるから行くように」

「はーい」

 くっそー最後の最後で、しかも早速明日からかよ。引っ越して来てしばらくの間位はそれなりにSNSでやり取りをして繋がっていたが、徐々に回数は減り。デビューした事は




「終わった終わったぁ~」

「まっ、俺らが本気を出せば優勝なんてチョロいわな」

 球技大会の優勝を喜ぶ翔太

「優勝って、この学校各学年4クラスしか無いし」

「優勝は優勝だろ?小さな幸せで喜べなくなると、不幸な人生を送る事になるぞ」

「知るか」

 僕は2勝しただけで優勝も何も無い気がしていた。と言うか、球技大会で勝ったからと言って嬉しいか?


「優勝したんだし祝勝会しようぜ」

「オー」

「うんうん」

 翔太の一言で何故か纏まるクラスの連中。田舎だからなのか?

「って事で、球技大会委員のお二人さん、幹事よろしくな」

「えっ、ちょ翔太お前」

「この後、カラオケでいいよな?」

「OK」

「OKって・・・」

 こっちはやっと終わったと思ってのに


「雪谷くん、どうするのよ?」

 もう一人の球技大会委員のツンドラ美人の住吉さんにそう言われても

「この空気でやらないとは言えないし、適当にするしか」

「そっ、じゃよろしくね」

「えっ・・・」

 丸投げかよ。美人じゃ無かったら、いや野郎だったら殴ってるぞ、こんちくしょー


「じゃ行く人は手を挙げて」

「はーい」

「はいはーい」

「1,2,3・・・」

 面倒臭いなぁとは思いながらも、すでにクラスの半分近く?が行く気になっているので、今から知るかよと言って空気を悪くする訳にもいかず




「俺の歌を聴きやがれー」

 なれた手つきで曲を入れ早くもマイクを手にして燥いでる翔太

「よっ、待ってましたー」

 翔太の知り合いの男達が盛り上がってるけど、1曲目から十八番とかか?何かお決まりの曲でもあるのかな?


「オッパイ オッパイ オッ オッ オッ オッパイ!」

「オッパイ!!イェイ、オッパイ!!」

 1曲目から何て歌を歌ってるんだコイツ等はってか、なんだよこの曲


「雪谷、幹事よね?次歌って空気変えてよね」

「えっ、僕が?」

「頼んだわよ」

 翔太とその知り合いが、オッパイオッパイと盛り上がってるせいで、翔太の事を知らない女子達が冷ややかな目で僕の所に、文句あるなら翔太に言えよ。って、場が白けるから無理か


「僕、歌は下手なんだけど」

「別にカラオケなんだし楽しくしよ。で、何にする?」

 うっ、いつの間にか両側を固められてる。


「じゃあ、bitterのwaterで」

「あっ知ってる。小学校の時にお姉ちゃんが良く聞いてたよそれ」

「えっ何それ?」

「なんだっけ?何かのアニメの曲だよね?」

「うん。君の嘘の挿入歌」

「ふーん」

 ギターだったら色々な曲が弾けるけど、歌は苦手だから色々と良い曲は頭に浮かんで来ても歌った事がある。歌えるとなると、これしかパっとは出て来なかった。別にアニメが好きな訳でも見てた訳でも無いけど、さくらが何処かで知って皆で耳コピして引っ越しをする前に良く演奏してた曲だ


 ~♪

 パチパチパチ


 歌い終わると適当な拍手がされた。歌が上手い訳でも無いから途中からは、次に歌う曲や歌う順番を決めているのが見えてた。まぁ、そっちの方がじっくり聞かれるより全然いいけど


「ふー」

「駿、さっきの曲のギターソロかっこいいじゃん」

「翔太ギターとか分かるの?」

「俺の兄貴がバンドしてたからな」

「ふーん、翔太ギター弾くの?」

「俺はドラムだよ。ギターとかあんなチマチマしたのは無理だ。ドラムなら兄貴のバンドの代役で何度かライブにも出た事あるぜ」

「なんだ。ギターじゃないのか」

「俺がギター弾けてたら何かあるのか?」

「ギターの話が出来る奴だったら良かったのになって思っただけ」

「駿はギター弾けるのか?」

「まぁ、少しは」

「じゃさ、俺とお前でバンド組もうぜ。足りない奴は募集してさ」

「今バンド組む気分じゃ無いから」

「なんだ、ギター実は弾けないんだろ?」

「・・・。チャルメラくらいしか弾けねーから、バンドの話は無しな」

「そか、高校生なんだし、青春しようぜ青春」

 青春とか良くそんな恥ずかしい事を、でもバンドかぁ。あいつ等一緒にしようって言ってたのに、クソッ。3年もたてば仕方ないか、にしてもメジャーかよ、こっちはバンドすら組めて無いのにってか、こんな田舎じゃまともなメンバー集まらないだろうし、早く東京に帰りたいなぁ、ダリィなぁほんと


「ねぇ、住吉さんも幹事なんだし歌いなよ」

「人前で歌うの苦手なの」

「いいじゃんクラスメイトばかりなんだし、皆そんなに上手じゃ無いし気楽に行こうよ。ねっ」

「じゃあ」

 住吉さんもあいつらの餌食になったか、まぁ僕も歌わされたし頑張れーっと


 ~♪


 そして、彼女が歌い出した瞬間部屋の中の空気が変わった。さくらも歌は上手だと思ってたけど、何なんだこの子は単純な歌の上手さなら、さくらの方が上だろうけど場を支配するカリスマ性を持っている。僕は一瞬で住吉凛桜(りお)の歌声の虜にされた。

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