路上占い、あれこれ161【占い師は見届ける】

崔 梨遙(再)

立花さん、さよなら1821文字です。

 夜のミナミの路上占いの時にいた、立花さん。50代後半&ハゲ&デブ&ロリコン&処女狂い。そんな立花さんが、40歳くらいの加奈子さんと出会いました。加奈子さんは顔もスタイルもよく、お金持ちを求めていました。それで立花さんを選んだのです。立花さんは無意味にお金持ちだから。


 立花さんは加奈子さんと食事に行ってから、少しの間、僕のところに来ませんでしたが、ある週末の夜に加奈子さんとやって来ました。


『崔さん、お久しぶりです』

『あ、加奈子さん、こんばんは』

『崔さん、話があるんやけど』

『立花さん、どうしました?』

『加奈子、ちょっと離れていてくれ』

『はいはい』

『加奈子に聞かれるわけにはいかんからな』

『だから、どうしたんですか?』

『俺、加奈子と結婚することになったんや』

『そうですか、おめでとうございます』

『いやいや、俺はそれでええんかな?』

『何も問題ないと思いますが』

『だって、俺は若い子が好きで処女を求めてたんやで、それなのに40歳の加奈子でええんかな?』

『給料3カ月分の婚約指輪は?』

『3カ月分ではないけど渡した、100万以上したんやで』

『なんだ、結婚する気満々じゃないですか』

『そりゃあ、美人に結婚してくれと言われたらなぁ』

『なんだ、加奈子さんのことを美人と認めているんですね』

『まあな、美人には違いないやろ』

『じゃあ、迷う必要は無いでしょう?』

『でも、若い子が、処女が遠ざかる』

『40歳なら、まだ子供も産めますよ』

『わかってる、わかってるんやけど、俺、結婚しても若い子や処女を求めるかも』

『その時はその時ですよ、加奈子さんは素敵な女性です、立花さんは幸せになれますよ』

『もう加奈子と暮らしてるんやけど』

『あらあら、仲がいいですね』

『経理の仕事をしてもらってるねん』

『へえ、そうなんですか』

『うん、経理の女の子には退職してもらった。人件費が浮いたわ』

『加奈子さん、経理が出来るんですね』

『うん、資格も持ってるし実務経験もある』

『いいことずくめじゃないですか』

『そやねん、そやねんけど……なんかスッキリせえへんねん。俺の若い子への想いがくすぶったまま無くならないんや』

『子供が産まれたらスッキリしますよ』

『そうなんかな?』

『立花さん、加奈子さんと結婚して幸せになりましょう、どうしても若い子がいいなら、浮気するという手もありますよ』

『そうか、そうやな、若い子が欲しくなったら、その時に考えたらええよな?』

『そういうことです。加奈子さんのお話も聞きたいので、加奈子さんをこちらへ。今度は立花さんが離れてください』

『崔さん、ありがとうね。私、もう太蔵さんと暮らしてるんですけど、服でもなんでも買ってくれるのよ。私の今日の服、全部ブランド物なの』

『良かったですね、余談ですが立花さんって太蔵っていう名前なんですね』

『そう。あの人、若い子に未練があるんでしょう?』

『あ、気付いてるんですか?』

『もちろん! でも、太蔵さん、口ではそう言うけど、結局何も出来ないのよ』

『そうなんですか?』

『あの人、もう私から離れられないから』

『すごい自信ですね』

『だって、あの人、女性経験がほとんど無いのよ、初めてのエッチの時は笑っちゃった。あの人は夜の私にはまってるから、大丈夫』

『立花さん、加奈子さんの手の平の上で転がされてるんですね』

『そういうこと! あの人の操り方がわかったから私はもう大丈夫! ああ、お金持ちっていいわね、私、今の生活が気に入ってるの』

『それは良かったです。入籍したら子供は?』

『出産は大変だし、あんな人間の子を産むのは嫌だけど、1人くらいは産まないとダメでしょうね』

『幸せなんですよね?』

『うん、あの人には浮気はさせない、浮気させない自信がある。それでも浮気したら、離婚したら慰謝料と養育費をガッポリもらうだけ。それもいいかなぁ、なんて思ってるんだけど。ベッドの中でのあいつは奴隷だから、しばらくは大丈夫よ』

『自信満々ですね』

『伊達に苦労してませんからね。私のことは心配しなくて大丈夫』

『わかりました、安心しました』

『でも、もし何かあったら、その時はまた私に寄り添ってくださいね』

『わかりました、占い師は寄り添うのが仕事ですから』

『じゃあね』

『立花さん、加奈子さん、お幸せに』



 2人は繁華街の人波に消えて行った。もう、立花さんに寄り添う必要は無いだろう。大きな肩の荷が降りたような気がした。スッキリした。立花さんは幸せになるだろう。加奈子さんの手の平の上で。




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路上占い、あれこれ161【占い師は見届ける】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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