AIによる記録と記憶 (この怪談は生成されています)

@b1tress_X0

第1話 | 録音テープの怪談

そのテープは、取り壊し予定の公民館で見つかった。


町外れの古い建物で、すでに電気は止まっていた。

解体前の確認作業中、業者が放送室の棚の奥から一本のカセットテープを見つけた。


ラベルには、油性ペンでこう書かれていた。


「集会」


再生機材は残っていなかったが、業者の一人が持っていた古いラジカセで試みたという。


最初に聞こえてきたのは、人の声だった。


複数人が話している。

内容は雑談で、町内会の集まりかと思われた。

笑い声も混じる。

子どもの声もあった。


会話の流れから、夜であることだけは分かった。

正確な時刻は不明である。


再生開始から二十分ほど経った頃、音が変化する。


誰かが咳払いをする。

椅子を引く音。

紙が擦れる音。


その直後、会話は途切れた。


テープは回り続けている。

ヒスノイズの向こうに、微かな環境音だけが残る。


衣擦れのような音。

呼吸とも風ともつかない音。


無音は、長く続いた。


三分。

五分。

十分。


再生していた業者は、止めようとしたという。

その時、音が入った。


小さな声だった。


「……いる」


その直後、テープは終わった。

自動停止の音がして、回転が止まった。


その場にいた全員が、しばらく沈黙したという。


後日、テープは回収され、データ化された。

加工や編集の痕跡はない。


ただ一つ、奇妙な点があった。


無音区間の終わり、声が入る直前のわずかな時間に、

一度だけ、はっきりとした心拍音が記録されていた。


規則的ではない。

次に続く音もない。


誰の心拍かは分からない。


この録音が行われた夜、

公民館で集会があった記録は存在しない。


テープは怪談として分類された。

情報が不足しており、事実として扱えなかったからである。


ただし、テープは最後まで再生されていない可能性があるため、

記録は削除されていない。

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