『俺達のグレートなキャンプ217 唐突に!フェルマーの最終定理の勉強会』
海山純平
第217話 唐突に!フェルマーの最終定理の勉強会
俺達のグレートなキャンプ217 唐突に!フェルマーの最終定理の勉強会
秋晴れの土曜日。長野県某所の山間キャンプ場に、一台の軽ワゴンが勢いよく滑り込んできた。
「到着ー!今回もグレートなキャンプの始まりだぜー!」
運転席から飛び降りた石川が、両手を天高く突き上げて叫ぶ。その顔は朝日を浴びて輝き、目はキラキラと少年のように輝いている。
「おお!空気が美味い!」
助手席から降りてきた千葉も、大きく伸びをしながら深呼吸。リュックを背負い直し、ニコニコと周囲を見回す。その笑顔は「今日もきっと楽しいことが待っている!」と全身で語っ季節は冬1:27俺達のグレートなキャンプ217 唐突に!フェルマーの最終定理の勉強会
真冬の土曜日。長野県某所の山間キャンプ場に、一台の軽ワゴンが白い息を吐きながら滑り込んできた。車体には雪が薄っすらと積もり、タイヤが凍った地面を踏みしめる音がキュッキュッと響く。
「到着ー!今回もグレートなキャンプの始まりだぜー!」
運転席から飛び降りた石川が、両手を天高く突き上げて叫ぶ。吐く息が真っ白になり、頬は既に赤く染まっている。ダウンジャケットを着込んだその姿は、まるで雪山に挑む冒険家のようだ。目はキラキラと少年のように輝いている。
「おお!空気が美味い!ってか、めっちゃ寒い!」
助手席から降りてきた千葉も、大きく伸びをしながら深呼吸。手袋をした手をパンパンと叩き合わせ、白い息を何度も吐く。ニット帽を深く被り直し、それでもニコニコと周囲を見回す。その笑顔は「今日もきっと楽しいことが待っている!」と全身で語っている。鼻の頭が早くも赤くなっている。
「はぁ...また冬キャンプね...」
後部座席からゆっくりと降りてきた富山が、ため息混じりに呟く。厚手のコートに耳当て、マフラーをぐるぐる巻きにした完全防寒スタイル。眉間には既に小さなシワが寄っており、不安げな表情で石川の背中を見つめる。その視線は「また何か変なこと考えてるんじゃないでしょうね」と雄弁に物語っている。
キャンプ場には既に数組のキャンパーがいた。冬キャンプを愛する猛者たちだ。各サイトからは焚き火の煙が立ち上り、暖を取る人々の姿が見える。雪がうっすらと積もった地面に、足跡がぽつぽつと点在している。
「よし!まずは設営だ!いつものスピード設営でいくぞ!」
石川が荷物を次々と降ろし始める。テント、タープ、寝袋、調理器具、そして...。
「おい石川、今日は何持ってきたんだ?」
千葉が興味津々で覗き込む。
「ふふふ...今日のグレートな暇つぶしはな...」
石川がニヤリと笑い、車の奥から取り出したのは...大量のホワイトボード、マーカー、そして分厚い数学書の山!
「じゃーん!『フェルマーの最終定理』完全理解勉強会だ!」
「「え!?」」
千葉と富山の声がハモる。千葉は目を丸くして驚き、富山は目を見開いて凍りついている。
「な、なんでまた急に...フェルマーの最終定理...?」
富山が震える声で聞く。その顔は寒さだけでなく、戸惑いでも青ざめている。
「いやーな!昨日YouTubeでさ、数学の動画見てたら面白くてさ!フェルマーの最終定理って、350年以上も未解決だったんだぜ!?で、アンドリュー・ワイルズって数学者が1995年に証明したんだけど、その証明が超絶難解でさ!」
石川が興奮気味に語る。その目は数学への純粋な好奇心で輝いている。手振りは大げさで、まるでプレゼンテーションをしているかのよう。
「で、せっかくだから、俺たちもキャンプしながら理解しようぜって!」
「いや、理解できるわけないでしょ!?」
富山が即座にツッコむ。その声は凍てつく空気を切り裂くように響く。
「俺たち文系だよ!?高校数学だって怪しいのに!」
「大丈夫大丈夫!千葉は興味あるだろ?」
石川が千葉に振る。
千葉は一瞬考える素振りを見せて...。
「おお!面白そうじゃん!フェルマーの最終定理!聞いたことある!x^n + y^n = z^n ってやつだろ!?」
満面の笑みで答える。その目は純粋な好奇心に満ちている。両手を握りしめ、体を前のめりにして石川を見つめる。
「そうそう!n≧3のとき、この方程式を満たす自然数の組はないってやつ!シンプルだけど証明が超難しいんだよ!」
石川と千葉が意気投合して盛り上がる。二人は拳を突き合わせ、ハイタッチ。その姿はまるで少年のように無邪気だ。
「はぁ...もういいわ...」
富山が諦めたように頭を抱える。マフラーに顔を埋め、小さく「寒いのに...普通に焚き火したいだけなのに...」と呟く。
設営が始まった。石川と千葉は慣れた手つきでテントを広げていく。ペグを打つ音が規則的に響き、タープがみるみる形になっていく。富山もため息をつきながら手伝う。手袋をした手でロープを結び、時折「こんなに寒いのに数学なんて...」とぼやく。
その様子を、隣のサイトの中年夫婦が不思議そうに見ている。
「あの、すみません」
夫婦の旦那さんが声をかけてきた。50代くらいの温厚そうな男性だ。ニット帽を被り、分厚いフリースを着込んでいる。
「そちら、今日は何か特別なイベントでもされるんですか?ホワイトボードとか...」
「ああ!」
石川が満面の笑みで振り返る。
「今日はですね!フェルマーの最終定理の勉強会をするんですよ!キャンプしながら!」
夫婦がポカンとする。口を開けたまま固まり、視線が石川と千葉とホワイトボードの山を行き来する。
「ふぇ...フェルマーの...?」
「最終定理です!x^n + y^n = z^n は、nが3以上のとき自然数解を持たないっていう!」
千葉も嬉しそうに補足する。その表情は「すごいでしょ!」と言いたげだ。
「は、はぁ...そうですか...」
夫婦は困惑した表情で自分たちのサイトに戻っていく。二人で小声で「数学...?キャンプで...?」と話している様子が見える。
「ほら、変な目で見られたじゃない!」
富山が小声で注意する。頬を膨らませ、眉を吊り上げている。
「いいじゃん!グレートなキャンプは人を巻き込むもんだ!」
石川がケロッとした顔で答える。そして設営を続ける。
30分後、テントとタープの設営が完了。タープの下にホワイトボードを3枚並べ、折りたたみテーブルに数学書を広げる。焚き火台もセットし、薪に火をつける。パチパチと薪が爆ぜる音が心地よく響く。
「さぶ...さぶいよ石川...」
千葉が焚き火に手をかざしながら震える。鼻水を啜り、体を小刻みに揺らす。
「まあまあ!焚き火もあるし!それに数学で頭を使えば体も温まるって!」
「そんなわけあるか!」
富山がツッコむ。コーヒーを淹れながら、ため息を何度もつく。
「じゃあ始めるぞ!まず、フェルマーの最終定理とは何か!」
石川がホワイトボードの前に立つ。マーカーを手に取り、大きく文字を書き始める。その姿勢は堂々としており、まるで大学の講義のようだ。
『フェルマーの最終定理』
『x^n + y^n = z^n (n≧3)は自然数解を持たない』
「これが問題だ!1637年にピエール・ド・フェルマーが提唱して、1995年にアンドリュー・ワイルズが証明するまで、358年かかった超難問だ!」
「おお!358年!」
千葉が感嘆の声を上げる。焚き火で温まりながら、真剣な表情でホワイトボードを見つめる。
「で、何がすごいかっていうと、n=2のときは解があるんだよ!ピタゴラスの定理だ!」
石川がさらに書く。
『3^2 + 4^2 = 5^2』
『9 + 16 = 25』
「これはある!でも、n=3になった途端、解が一個もなくなる!」
「へー!不思議だな!」
千葉が身を乗り出す。目がキラキラと輝き、両手でテーブルを叩く。
「不思議じゃないわよ!ていうか、これをどう理解するのよ!」
富山がコーヒーを啜りながら文句を言う。しかしその目は、少しだけホワイトボードに向いている。
「まず、n=3の場合を考えてみよう!x^3 + y^3 = z^3を満たす自然数はあるか!」
石川が熱く語る。その声は冬の空気を震わせる。
「試しに小さい数で試してみようぜ!」
千葉がスマホの電卓アプリを開く。
「1^3 + 2^3 = 1 + 8 = 9...3^3は27だから違う...」
「2^3 + 3^3 = 8 + 27 = 35...これも...」
二人が真剣に計算し始める。息を白くしながら、スマホを覗き込む姿は、まるで宝探しをする子供のようだ。
すると、隣のサイトから先ほどの旦那さんが近づいてくる。
「あの...気になっちゃって...」
「おお!どうぞどうぞ!」
石川が手招きする。
「フェルマーの最終定理って、実際どういう証明なんですか?」
旦那さんが興味津々で聞く。手にはコーヒーカップを持ち、湯気が立ち上っている。
「それがですね!証明が超複雑で!楕円曲線とモジュラー形式っていう、全然関係なさそうな分野をつなげるんですよ!」
石川が目を輝かせて説明する。
「谷山・志村予想っていうのがあってですね...」
そこから石川の怒涛の解説が始まる。ホワイトボードに次々と専門用語が書かれていく。「楕円曲線」「モジュラー形式」「ガロア表現」...。
「ちょ、ちょっと待って石川」
千葉が手を挙げる。
「楕円曲線って何?」
「ああ!説明しよう!」
石川が新しいホワイトボードに向かう。
『楕円曲線: y^2 = x^3 + ax + b の形の方程式』
「この曲線がですね、実は数論的にめちゃくちゃ重要で...」
「わ、わからん...」
千葉が頭を抱える。しかし目は真剣だ。諦めずに理解しようとする姿勢が窺える。
「私も全然わからないわ...」
富山も頭を抱える。しかし、その手はコーヒーカップを握ったまま、視線はホワイトボードに釘付けだ。
「面白いですね...」
隣のサイトの旦那さんが呟く。その目は知的好奇心に満ちている。
すると、反対側のサイトからも声がかかる。
「あの、すみません!何やってるんですか!?」
20代くらいの男性二人組だ。一人は眼鏡をかけた真面目そうな青年、もう一人は活発そうなスポーツマンタイプ。二人とも厚手のダウンを着込んでいる。
「フェルマーの最終定理の勉強会です!」
石川が誇らしげに答える。胸を張り、親指を立てる。
「マジですか!?俺、大学で数学専攻だったんですよ!」
眼鏡の青年が目を輝かせる。
「おお!じゃあ教えてくださいよ!」
石川が喜ぶ。
こうして、勉強会は予想外の盛り上がりを見せ始めた。
眼鏡の青年—名前は佐藤という—がホワイトボードの前に立つ。
「じゃあ、もうちょっと基礎から説明しますね」
佐藤が丁寧に解説を始める。その語り口は優しく、わかりやすい。手の動きも滑らかだ。
「まず、フェルマーの最終定理がなぜ難しいかっていうと、『ない』ことを証明しなきゃいけないからなんです」
「ああ!」
千葉が膝を叩く。
「あることを証明するのは一個見つければいいけど、ないことを証明するのは全部調べなきゃいけないのか!」
「そうです!無限にある自然数の組み合わせ全てで、解がないって示さなきゃいけない!」
佐藤の説明に、周りの人々が「おお...」と唸る。
気づけば、キャンプ場の他のキャンパーたちも集まってきていた。10人ほどが焚き火の周りに集まり、ホワイトボードを見つめている。皆、温かい飲み物を手に、白い息を吐きながら真剣に聞いている。
「で、ワイルズの証明はですね、フェルマーの最終定理を直接証明するんじゃなくて、谷山・志村予想っていうのを証明したんです」
「それって、回り道ってこと?」
富山が聞く。その表情は真剣で、メモまで取り始めている。
「いい質問です!そうなんです!でもこの回り道が実は最短ルートだったんです!」
佐藤が嬉しそうに説明する。
「楕円曲線とモジュラー形式が実は同じものだって示せれば、フェルマーの最終定理も証明できるっていう...」
「すげぇ...数学ってすごいな...」
佐藤の友人が呟く。その目は尊敬の念に満ちている。
すると、管理棟の方から管理人のおじさんが近づいてくる。60代くらいの穏やかそうな男性だ。
「おや、何やら賑やかですね」
「あ、管理人さん!すみません、うるさくて!」
富山が慌てて謝る。
「いやいや、面白そうじゃないですか。フェルマーの最終定理ですか」
管理人も興味津々だ。
「実は私、昔高校で数学教師やってたんですよ」
「マジですか!」
石川の目が輝く。
「じゃあ、ちょっと補足させてもらっていいですか?」
管理人がホワイトボードの前に立つ。
こうして、キャンプ場は即興の野外数学教室と化した。
管理人の解説は、教師経験者らしく非常にわかりやすかった。数学の美しさ、フェルマーという人物の面白さ、358年という歳月の重み...。
「フェルマーはね、余白が足りなくて証明を書けなかったって言い残したんです」
「え!?」
千葉が驚く。
「そうなんだよ!」
石川が興奮気味に続ける。
「本の余白に『私はこの命題の真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる』って書いたんだ!」
「かっけぇ...」
佐藤の友人が呟く。
「でも実際は、フェルマー自身も完全な証明は持ってなかったって言われてるんですよね」
佐藤が補足する。
「そうだね。もし持っていたとしても、現代数学の道具がないと証明できないはずだから」
管理人が頷く。
すると、新たに若い女性二人組が近づいてくる。
「あの...何の集まりですか?」
「フェルマーの最終定理の勉強会です!」
石川が元気よく答える。
「え...キャンプ場で...?」
女性たちがポカンとする。しかしその表情は興味津々だ。
「面白そう!私たちも参加していいですか?」
「もちろん!」
こうして勉強会はさらに拡大していく。
気づけば午後3時。キャンプ場の広場に20人以上が集まっていた。ホワイトボードは5枚に増え、焚き火も3箇所に増設。皆がコーヒーや温かい飲み物を手に、数学談義に花を咲かせている。
「じゃあ、楕円曲線の性質について...」
佐藤が解説を続ける。
「おお、そういうことか!」
千葉が理解した表情を見せる。その顔は興奮で紅潮している。
「意外と面白いかも...」
富山も夢中でメモを取っている。最初の不安げな表情は消え、真剣な学生のような顔つきだ。
すると、一人の初老の男性が前に出てくる。
「すみません、ちょっといいですか?」
「はい!」
「私、実は大学で数論を研究してたんです。もう引退しましたが」
「えええ!?」
皆が驚く。
「せっかくなので、谷山・志村予想の意味について、もう少し詳しく説明しましょうか」
「お願いします!」
石川が目を輝かせる。
元研究者の解説は、専門的でありながら情熱に満ちていた。数学の深遠な美しさ、予想を証明することの困難さ、そして証明が成し遂げられた時の数学界の興奮...。
「ワイルズがこれを証明した時、数学界は歓喜したんです。300年以上の謎が解けたんですから」
「すごい...」
皆が息を呑む。冬の冷たい空気の中、熱気が渦巻いている。
「でもね、最初に発表した証明には実は欠陥があったんです」
「え!?」
「そうなんです。1993年に発表したんですが、査読の過程でミスが見つかった。ワイルズは1年以上かけて、元教え子と一緒に修正したんです」
「諦めなかったんだ...」
千葉が感動した表情を見せる。
「そう。そして1995年、完全な証明を完成させた。その執念、情熱が素晴らしいんです」
元研究者の言葉に、皆が静かに聞き入る。焚き火のパチパチという音だけが響く。
気づけば夕方5時。日が傾き始め、気温はさらに下がってきた。しかし誰も立ち去ろうとしない。
「あ、そうだ!」
石川が何かを思い出した表情を見せる。
「せっかくだから、みんなで晩飯作りながら続けませんか!?」
「いいですね!」
佐藤が賛成する。
「じゃあうちのサイトの鍋、持ってきますよ!」
隣のサイトの旦那さんが立ち上がる。
「うちはカレー作りますよ!」
別のキャンパーも立ち上がる。
こうして、勉強会は即興の野外大宴会へと発展していった。
各サイトから食材と調理器具が集められ、巨大な鍋でシチューが作られる。カレーも三種類、焼き肉、焼き芋、温かいスープ...。焚き火の数は5つに増え、キャンプ場は暖かな光に包まれる。
「フェルマーが生きてたら、こんな光景見てどう思うかな」
千葉が星空を見上げながら呟く。
「きっと喜ぶさ。自分の問題が、こんなに人々を夢中にさせるんだから」
石川が答える。その顔は満足げだ。
「まさか数学でこんなに盛り上がるとは思わなかったわ...」
富山が呆れたように笑う。しかしその表情は穏やかで、楽しそうだ。
「これぞグレートなキャンプだろ!」
石川が胸を張る。
食事をしながらも、数学談義は続く。フェルマーの最終定理から発展して、リーマン予想、P≠NP問題、ゴールドバッハ予想...様々な未解決問題について語り合う。
「数学って、本当に美しいですね」
若い女性の一人が呟く。
「そうなんだよ!シンプルな式に、こんなに深い世界が隠されてるんだ!」
石川が熱く語る。
午後8時。宴会は最高潮に達していた。
「じゃあ最後に、みんなでワイルズに乾杯しよう!」
石川が提案する。
「おお!」
皆がコップを掲げる。ホットココア、コーヒー、温かい日本酒...様々な飲み物が夜空に向かって掲げられる。
「アンドリュー・ワイルズに!そして数学の美しさに!乾杯!」
「「「乾杯!」」」
20人以上の声が冬の夜空に響き渡る。その声は星々に届きそうなほど力強い。
乾杯の後、管理人が前に出てくる。
「あのですね、皆さん。今日のこと、とても素晴らしいと思うんです」
「ありがとうございます!」
石川が答える。
「実は...今日の様子を動画に撮ってたんですが...」
管理人がスマホを取り出す。
「キャンプ場のSNSで紹介してもいいですか?『数学勉強会ができるキャンプ場』として」
「もちろんです!」
皆が賛成する。
「それでですね...」
管理人が少し照れくさそうに続ける。
「もし可能なら...定期的にこういう勉強会、開催してもらえませんか?」
「え!?」
石川が驚く。
「実は他のキャンプ場の管理人仲間とグループLINEがあってですね、今日のこと話したら、『うちでもやってほしい』って...」
管理人がスマホの画面を見せる。そこには10件以上のメッセージが並んでいる。
『面白そう!うちのキャンプ場でも!』
『数学だけじゃなく、物理とか歴史とかも!』
『冬キャンプの新しい楽しみ方だ!』
「マジか...」
石川が呆然とする。
「これは...グレートなキャンプを超えて...」
千葉も驚いている。
「全国展開じゃない...」
富山が頭を抱える。
すると、元研究者の男性が立ち上がる。
「それなら、私も協力しますよ。せっかく引退して時間もありますし」
「私も手伝います!」
佐藤も手を挙げる。
「うちの大学の数学科の先生たち、きっと喜びますよ!」
次々と協力を申し出る声が上がる。
「じゃあ...やるか!」
石川が立ち上がる。その目は冒険心に満ちている。
「『全国キャンプ場数学勉強会ツアー』!どうだ!?」
「おお!」
千葉が拳を突き上げる。
「もう止めないわ...好きにしなさい...」
富山が諦めたように笑う。しかしその目は優しい。
こうして、石川達の『グレートなキャンプ』は、予想外の展開を迎えた。
その後、SNSで拡散された動画は大きな反響を呼んだ。『冬キャンプで数学!?新しい学びのスタイル!』として各種メディアに取り上げられ、全国のキャンプ場から講演依頼が殺到。
石川達は月に一度、様々なキャンプ場を巡って数学勉強会を開催することになった。テーマはフェルマーの最終定理だけでなく、四色定理、ポアンカレ予想、暗号理論...様々な数学の話題へと広がっていった。
参加者は毎回50人を超え、中には家族連れや学生グループも。数学者や元教師たちもボランティアで講師として参加し、キャンプ場は学びと交流の場となった。
そして今日も、どこかのキャンプ場で...。
「よし!今日のテーマは『ゲーデルの不完全性定理』だ!」
石川が元気よく叫ぶ。
「おお!面白そう!」
千葉が目を輝かせる。
「また難しいやつね...」
富山がため息をつく。しかし、その手にはすでに分厚いノートが握られている。
焚き火の周りに集まる人々。ホワイトボードに書かれる数式。熱い議論。そして笑顔。
これが、石川達の『グレートなキャンプ』。
奇抜で、突飛で、でも確実に人々の心を動かす、特別なキャンプ。
冬の夜空に、数式と笑い声が響き渡る。
星々がそれを見守る中、新たな学びの冒険が、今日も続いていく—。
「じゃあみんな!数学と焚き火とキャンプに、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
キャンプ場に響く、温かな声。
これが217回目の、そしてこれからも続く、俺達のグレートなキャンプなのだった。
『俺達のグレートなキャンプ217 唐突に!フェルマーの最終定理の勉強会』 海山純平 @umiyama117
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