第2話 意外なことに、クズの友達はクズじゃない。

「——っつーわけで、俺は彼女の心を疲弊させる原因を取り除こうと思う」


 放課後の我が家にて、経緯を説明し終えた俺は例の友達二人にそう告げた。

 すると、俺の話を黙って聞いてくれていた友達の一人——実はイケメン系眼鏡の真面目君こと中島結弦なかじまゆずるがパチパチと目を瞬かせた。


「……意外だね。湊君なら絶対付き合いたいとか言いそうなのに」

「如月はクズじゃないからなぁ。寧ろ俺と真反対の人間と言っても過言じゃないね」


 片や美しい顔に甘えて堕落した人間。

 片や美しい顔に甘えず努力した人間。


 ……うん、付き合うとかないわー。


「彼女と俺じゃ死んでも釣り合わねーよ」

「クズを脱却しようとは思わないの?」

「過去は消えないのです!」

「加害者側が言うの初めて聞いたよ……」


 呆れた様子でため息を吐く結弦。事実を言っただけなのに解せない。

 俺が結弦に不服を申し立てようとしていると。


「付き合う付き合わんはどうでもいいけどよ、具体的な目標ってなんなんだ?」


 THE体育会系という感じの精悍なイケメン——斎藤育太がポリポリ頭をかきながら尋ねてきた。

 この様子だと、既に俺の話に飽きてそうだ。


 もう少し興味持てよ、と思わないこともないが……育太だからと納得させて説明する。


「そうだなぁ……如月が告られないようにする、ってのが今のところの目標だ」

「無理だろ」

「無理だよ」


 一切の迷いなく即答する二人。間髪入れず、という言葉はこういった時に使うんだなと思いました。

 

「いやいやそんなばっさり切らんでよ。俺の計画ならワンチャンあると思うんだよ」

「計画ねぇ……因みにどんな計画なの?」

「良くぞ聞いてくれました! では、この俺渾身の計画をお披露目しましょう!」


 俺は演説者にでもなった気で、身振り手振りも加えて説明する。


 俺の考えた計画とは——如月とある程度の仲良くなったのち、俺が告白してフラれる——というもの。


 自慢も入るが、この顔は学校で普通にトップを取れるぐらいにカッコよく、オマケに女子からも人気が高い。

 そんな俺が如月にフラれれば……告白する無謀な奴は減るだろう。


 何せ俺がフラれたのだから、他の有象無象が告って付き合えるわけがない。



 しかし——それだけでは足りない。



 そこで必要なのが——計画の『ある程度仲良くなる』という部分だ。


 いきなり告白するより、仲良くなって告る方がオーケーをされる確率が高くなると思うのは当然のこと。

 だが、それでもフラれたとなれば……いよいよ取り付く島もなくなる。


 

 つまり——如月梓弓しゆみは誰とも付き合う気がない、と男子共に思わせることが出来るのだ。



「そうすれば如月が告白される回数はゼロとまではいかなくても……ほぼゼロになる、と思う」

「……まぁ、一理あるね。湊君が飛び抜けてイケメンなのは周知の事実だし、そんな湊君でさえフラれるなら諦めも付くって人は多そうだ」


 顎に指を当てて呟く結弦。俺をイケメンと言ってるけど、結弦も髪を整えさえすればイケメンなんだよなー。


「なぁ髪整える気——はないんだよな」

「うん。僕はこのままがいいんだ」


 強い口調で主張する結弦。

 俺的には勿体無いとは思うが、本人が嫌がる理由を知っている手前、これ以上はやめておこう。


「悪い悪い。……で、どうよ? 悪くない計画だろ?」

「まぁ一部を除けば悪くないと思うよ」


 反応は悪くない。寧ろ普段から諸手を挙げるような性格じゃない結弦にしては良い方だが……何か引っ掛かっているようだ。

 気になるし尋ねてみるとしよう。


「何が気に入らないんだ?」

「気に入らない、か……そうだね、気に入らないよ」


 そう言ってジーッと見つめてくるが、何が気に入らないのかさっぱり分からない俺は首を傾げるしかなかった。

 結弦はそんな俺を見てため息を一つ。


「はぁ……湊君らしいよ。——育太君は僕が言いたいこと、分かるよね?」

「もちろんだ!」

「マジ!? 育太が分かんの!?」


 育太が分かるのに俺が分からないのはショックなんだが!


 悔しがる俺を他所に、結弦が真剣な面持ちで口を開いた。


「僕は別に出来る出来ないはどうでもいいんだ。でもね——」


 結弦が一転して悲しげな表情を浮かべた。


 


「——湊君の計画にはね、湊君の気持ちが考慮されてないんだよ」




 それが気に入らない、と結弦が締め括ると、同意するように育太が頻りに頷いていた。


「そうだぞ湊! 俺らはな、湊が傷付くのを黙って見ていられるほど薄情じゃない!」

「そう言うことだよ」


 なんて言う二人を見て……俺はふと思った。



 ——コイツら、なんで俺なんかと友達になってんだ?



 良い奴すぎて、クズの俺には如月同様勿体なさすぎる。

 まぁそんなことを言えばフルスロットルでぶん殴られそうなので言わないが。


「……ありがとな、二人共」

「そう言っといて、どうせ計画を変えるつもりはないんだよね?」


 しっかりバレてーら。

 

「よ、よくご存知で……」

「伊達に中学から友達やってないからね」

「俺達に感謝するんだぞ湊」

「お前は絶対分かってなかったろ」

「はっはっはっ、流石だぜ湊! 伊達に中学から友達やってないってことだな!」


 なんてガハガハ笑う育太の姿に、俺と結弦は小さく笑みを零して肩を竦めるのだった。


———————————————————————————

 2話目にしてまさかのヒロイン登場なし。

 つ、次からは登場するから……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る