クズな俺、惚れた学年一の美少女を水面下で助けるつもりが惚れられてしまった
あおぞら@『無限再生』9月13日頃発売!
第1章
第1話 恋をしました。クズが。
——俺、
齢十七にして俗に言う『初恋』というヤツだ。
我ながら中々遅いと思うが、別に女の子と関わりがなかったわけじゃない。寧ろ世間一般より関わっているだろう。
何しろ俺は——イケメンだから。
この整った顔があることで、女の子に困ったことは一度もない。
だって向こうから勝手にアプローチしてくれるからね。さながら俺の顔はゴキ◯リホイホイならぬ女の子ホイホイである。……例えが酷いな。
まぁこの例えからも分かる通り、俺はクズだ。
好意を寄せてくれた女の子達のことを好きになる気はしなかったが、一度も突き放したことはない。
いやだってさ、ワンチャンありそうな態度取ったら奢ったりしてくれるんだよ? 突き放すわけないじゃん普通に。遊ぶのだってそれなりに楽しいし。
あ、でも、彼氏持ちの女の子は丁重にお断りさせてもらっている。
彼氏がいるのに『好き♡』とか言ってくるヤツに碌な女はいない。彼氏さんにバレた時がダルいのもある。
そんな女誑しのクズ野郎こと俺が……びっくりなことに本気で恋をしてしまった。
相手の名前は——
容姿を簡単に説明するなら……気が強そうで、自信ありげな顔がよく似合う美少女といったところだろうか。ただちょっと抜けてそうにも見える。
そんな彼女は心に強い意志と芯を持ち、あらゆる面で優秀で謙虚、オマケに容姿を鼻にかけない……正しく俺とは真反対の人物。
故に我が高校で知らない人などいないと言われるほどの知名度を誇り、『学年一の美少女』とも呼ばれている我が校随一の有名人だ。
だが、俺は別に彼女の容姿だけで恋をしたわけじゃない。
寧ろ数多の女の子と関係があるため目だけは肥えているクズの俺は、面食いではあるものの、顔面だけで惚れることはないと断言できる。
ならどこに惚れたのかと言えば——つい一週間ほど前にあった、クラスマッチの時の出来事がきっかけだった。
——一週間前。
「おー、みんな頑張ってんなー」
俺は屋上で一人、クラスマッチの競技の一つであるサッカーに出場した友達を眺めていた。
因みにクラスマッチとは、クラス毎でスポーツやら百人一首やらをして競う体育祭の下位互換みたいな行事だ。
でも俺は、正直体育祭より好き。準備も少なくて自由時間多いし、何より二日間やるからね。
「いやークラスマッチ、マジさいこー」
「——嘘……っ」
んー、と伸びをした俺の耳に届く驚きの声。
対する俺もまさか誰か来るとは思っていなかったため、驚いて声の方に視線を向ければ。
「……なんで、ここにいるの?」
腰まである髪を後ろで一纏めにした如月が、驚きながらもどこかがっかりした様子で屋上の扉を開いて固まっていた。俺がいて悪かったね。
「なんでってそりゃあ……一人の時間を楽しむためよ」
「クラスマッチの時に一人で居たい意味が分かんないわ」
「またまた〜。そういう如月だって、一人になりたくてわざわざ来たくせに」
なんて俺は茶化して返したが、本当は彼女が逃げて来たことくらい容易に想像できた。
如月は俺と同じく顔が良い上に、知名度に関しては彼女の方が高い。『毎日告白されている』との事実という名の噂は有名だ。
普段でさえモテモテなのだから、こういった行事にもなると、告白される数はきっととんでもないだろう。
……うん、俺でも逃げるわ。一日に十人近くに告られるとか普通にダルい。一人二人なら普通に嬉しいけど、それ以上はちょい萎えるなぁ。
想像してゲンナリする俺を見て、如月は僅かに期待の籠った声色で尋ねてくる。
「……もしかして、鈴木も同じ口?」
「ま、大体はね。でも如月ほどじゃないぞ。俺の場合は、俺が一箇所に固まったら女の子達がピリピリするんだよ。それがダルくて……ついでに友達に迷惑かけるから離れてるだけ」
この場合の友達は二人の男友達だ。
二人とも良い奴で、クズを自認する俺が、出来る限り迷惑を掛けたくないと思える数少ない相手でもある。
「ま、簡単に言えば、俺のこの美しい顔と関係を曖昧にするクズさが原因ってこった」
そう言って肩を竦める。
すると、如月が耳を疑うような言葉を発した。
「……なんというか——鈴木は優しいわね」
…………この子大丈夫か?
「……話聞いてた?」
「うん。自慢ではないけど、現代文は学年一位なの」
「俺との会話を現代文の問題だと思ってんの!? つーか現文一位普通に凄くね? 自慢してもいいだろ」
俺ならアイツらに自慢しまくってるね。なんなら勝負ふっかけて奢らせてるレベル——ってそうじゃねぇんだわ!
「えーっと、俺の話のどこを聞いたら優しいなんて言葉が出てくんの?」
「だって友達を大切にしてるじゃない。それに……」
如月はそこで区切ると——僅かに口元を緩めて言った。
「——勝手に好きになっただけの他人のことまで慮って行動したり、自分を卑下することで相手の肩を持つなんて……優しい人じゃないと出来ないもの」
自分を卑下するのはやり過ぎだと思うけど、と言葉を付け足して手すりに身体を預ける如月。
彼女の黒曜石のように神秘的な瞳は、既にグラウンドに向けられている。
だが、それでいい。それで良かった。
「…………っ」
——この熱くなった頬を見られずに済んだのだから。
こうして俺は、今まで俺に告ってきた女の子達同様、人生で初めて言われた『優しい』という言葉と向けられた彼女の優しさに——コロっと落ちてしまった。
だが、付き合おうとは思わない。
いや付き合いたい気持ちはあるにはあるのだが……彼女の相手がクズだなんてことがあってはならない。俗に言う解釈違いってやつだ。
俺のようなクズは、精々遠くから彼女の笑顔を見るのがお似合いだ。
だから俺は——彼女の笑顔を守るために水面下で動こうと思う。
——そう思っていたのだが……。
『鈴木みたいな人、初めてよ』
『ありがとう、手伝ってくれて』
『ふふっ、おかしな人ね——湊君』
結果として——
『気付いてあげられなくてごめんなさい。——私も好きよ、湊君』
——俺の思惑とは反対に進んでしまうことになるなど……この時の俺が知る由もなかった。
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新作です。
1話は大体1500文字〜2500文字になると思います。
☆とフォローよろしくお願いします。
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