@komaryo1121

まだ冬の寒さを残す白い朝。

周囲に、1人で歩いているのは彼女だけだった。


椅子に座り、揃えられた足に靴下の跡。

後ろ姿と、僅かな横顔。

配席番号二十六番、ハ行だろうか。


扉が音を立ててひらき、部屋は静まりかえる。

男性の自己紹介が、ぼんやりと聞こえてくるが、意識は靴下の跡に留まっていた。


揃わない拍手が、視線を上へと戻す。

誰かのくしゃみと、それを小さく笑う声が耳をくすぐる。


反射で白く光る時計で時刻を確認するよりも早く、始まりと終わりを告げるチャイムが響く。


靴下を引き上げる配席番号二十六番の彼女を、ぼんやり目に留める。

差し込んでくるまだ低い白い光に目を細める。太陽が雲に隠れ、人影が揺れる。


不意に後ろを振り返る彼女と目があってしまったような気がして、涼しさを感じた。

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