二度転生 〜願いと想いが、約束へと至る物語〜

Riu/リウ

第1章 転生〜親友との別れ

プロローグ

プロローグ


 …信頼してた者に裏切られた時、人は深く絶望する。

 一国の主であった今世の俺を殺害したのは、騎士団で一番腕の立つ者だった。

 とても信頼していた分、裏切られたと分かった時の絶望感は、初めて味わうものだった。

 


 薄れゆく意識の中、俺の心には裏切られたことによる深い絶望と、前世で交わした約束を果たせなかった後悔の念が渦巻いていた。


 将来の夢、親友と交わした約束。


 "転生"という、またと無いチャンスを与えられたのに、無駄にしてしまった。



 ……悔しい。

 親友との約束も、王としての使命も、俺は何一つ果たせなかった。



 *


 

 俺は、無限にも思えるような今際の際、前世の事を思い出していた。

 もしかしたら、これが走馬灯ってヤツなのかも知れない。



 前世の少年時代に、不思議な夢を見た。

 今でも鮮明に覚えてる。

 


 その夢にでてきた自分は災厄を断ち斬る勇者だった。

 子供なら誰しもが憧れる強い存在に、その時の俺も憧れたんだ。

 

 

 何とも不思議な夢だった。ふと、いつかこんな日が来るのだろうか、と思った。

 その理想を実現したい、この身で体験したい。


 そう思った瞬間、目がはっきりと覚めた。

 俺の夢が定まった瞬間だった。

 

 

 来る日も来る日も、たった一人孤独に剣を振り続け、齢が十四になった頃、志を共にする親友ができた。

驚くほど共通点があり、とても気が合い出会ってすぐに打ち解けた。

 

 俺達は共に技術を高め合うだけではなく、お互いの夢を語り合ったりした。

 毎日一人で剣を振り続けていた俺にとって、誰かと剣術を磨き合う日々は、毎日が新鮮で楽しかった。


 時が経ち、俺と親友はお互いの夢を叶える為、十八歳の時に別れて旅に出た。

 お互いの夢を叶える為の旅だ。



 別れの際、俺達は約束を交わした。

 "お互いの夢を叶えたら、どっちが強いか決着をつける"と。

 次会うのは、互いに夢を叶えた時だって。

 

 そう…約束したのに……。

 

 



 身を焼くような灼熱を感じた時、左胸に冷たい凶器が刺さっていた。

 後に凍てつく様な悪寒が身を襲い、ここで意識が朦朧とし始めた。

 深紅の血が体外へと流れ出る。

 

 ああ、そろそろだ。 前世の死に際もこんな感じだった。

 既に周りの音など聴こえないし、視界もたった今、闇に染まった。

 全身の力が抜け、徐々に感覚が無くなってゆく。

 俺は後悔と無念、自分の無力さを呪いながら、ゆっくりと目を閉じた。



 

 *

 

 


 ……まだ、意識がある。

 意識を手放そうとしても依然、ハッキリとしたままだ。


 

 …俺は一度与えられたチャンスを無駄にしたんだ。

 分かってる、そんな事くらい。

 俺よりも憐れむべき人達は……この世界に大勢居るはずだ。



 

 ………でも。

  もし、もう一度、もう一度だけ、チャンスを貰えるなら。

 次こそは、誰かに決められた生き方じゃなく、誰かの為でもない…。

 自分だけの! 自分の願いの為だけの!!

 


 …人生を!……生きたい!!



 強く、確固たる意識を持って、自分の想いを願ったその時。

 眼前にほんの小さな小さな、一筋の光が差した。


 その一筋の光は、温かい安らぎを与えてくれる、どこか懐かしい輝き。

 その光はやがて束となり、包み込むように煌めいた。



 この光の行く先が、死者の国でも、無の世界だったとしても…。

 

 

 俺は受け入れよう。

 この光に、全てを委ねる。

 

 

 

 幾千万の光が抱擁した。

 そこで俺の意識は、大海の様な眩い光に呑まれた。

 

 ――その直後、失ったはずの感覚が戻ってくるのを感じた。

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