終わってる恋をするなんて終わってる!

不憫な紫

第1話 ゲーム世界に転生するなんて終わってる!

「シュガねぇ!今日も絵本を読み聞かせしてくれる?」


無邪気に語りかけてくるオレンジの髪をした幼子、その手には絵本を持ち抱えてこちらに差し出してくる。


「昨日もその前も同じ本を読み聞かせしただろう、たまには休ませていてくれ。」


「おねがい~……!」


 ねだるように言う幼子に私は仕方ないなと返す。

この子と過ごす順風満帆な日々は私にとって何物にも変えられないたった一つの『宝物』だ。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 夢とは不思議だ、悪夢も不気味な夢も見たくて見れるものではない。

自分の思考の世界だというのに望む夢を見れる訳でもない。

だが、それも酷い現実よりは何倍もマシだ。


「は……なんだここは?」


 ひんやりとした手触りと絶え間ない身体の違和感、明らかに違う胸の大きさ。

 周りを見れば見たことのない白を基調とした清潔感のあるベットの上で寝ていたようだ。

だがここは私の知っている寝室ではない、全く違う部屋。


「これは鏡か、この姿は……」


 ベットの横に設置されていた鏡に写るのはいつもの私ではなかった。

ロングの紫髪でオレンジの瞳のキリッとした女の顔と、そして巨乳で肌荒れのない身体だった。


「……シュガー…全裸で寝るタイプだったか……」


 たまに見る意識がはっきりとした夢の類いだろう、起きたら忘れる、寝よう。

そう思ってまた寝直そうとするのだが。


「『宇宙星争』……」


 そのゲームが頭から離れてくれなかった。

『宇宙星争』それは蓬莱者という主人公が行く星の問題を解決していくというキャラゲーだ。

★5と★4のキャラを強化し相手と戦うゲームではあるが、残酷な世界感と闇のあるキャラ設定そして非常にストーリーの完成度が高く、忙しい時間の合間にプレイをしていた。

その世界を夢に見てしまったということか……絶対まともなことにはならないな。


「寝たら起きるだろう。」


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起きなかった

ていうか寝てる間に記憶更新されてるのか、シュガーの記憶っぽいのある。


「いや……私はシュガーじゃない……

この記憶は偽物だ。」


 『★4 シュガー』第二章にて実装された女性キャラ。

誰に対しても基本塩対応で人を罵倒しながら話すが、信念は厚く自分の信じるものを信じている。しかし、自分を人より劣っていると思い込む秀才。

というキャラだったと……思う。


……だがこの記憶はなんだ!?


『私は恋をしてい……るのか……?

はは、結ばれる訳がないと言うのに愚かなものだな……』

『彼は蓬莱者にお熱なようだ…まぁ嫌われたいる私のようなものと居ても息が詰まるからな……』

『……こんな恋心を持つくらいなら、会わない方が楽だったな……』

『わたしは……わたしは……かれに……なんてこと……もういやだ……もう……

すまなかった…クローバー。』


何故こんな記憶がある!?

そもそもシュガーは相方である『クローバー』に恋をしていたのか!?

そんな描写一切無かったぞ!!

そもそもこのゲームに恋愛描写など一切無かったはずだ!!


……一旦落ち着こう、『★5 クローバー』

 元奴隷出身であり自ら成り上がったオレンジ髪の紫の目を持つ青年。

家族の復讐の為に生き、全てを破壊したい欲望を隠し持つ。

 しかし死した母の言葉を思い出し立ち直り、復讐を捨て生きるようになった。

その中で協力関係にあったのがシュガーだ。


 ふむ……終わってるな。

ゲーム序盤であるとしたらクローバーは復讐に生きているし、二章のストーリー終盤だったとしたら蓬莱者に夢中、そして記憶で蓬莱者との絡みがあることから二章が終わってるのは明白だ。


「まて……もしや私はこのままこの世界に居なくていけないのか?」


 私には関係ないと言いきりたいのだが、残念ながら私には今、シュガーの記憶がある。

クローバーに恋い焦がれていた理由も、失恋に悶えた記憶も与えられることのない愛を欲したことも全部覚えている。

間違いない、私は今クローバーに恋をしている。


……幸いシュガーには山程金はある……

そして私はシュガーの信念などどうでもいい。

所詮推しでもなければ嫌いでもない、ただのそういうキャラ。

だが頭と金は利用させていただこう。

この世界に倫理観などほぼないようなものたのだから。

シュガーがクローバーに恋し、哀憐に犯されて居たんだとしたら。


それを埋める『代わり』を用意すればいい。

人を守りたいと思う感情など、ただの母性と庇護欲の押し付けなのだから。

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