02 妄想を現代ファンタジーへ

 彼の台詞が、とめどなく溢れ出てくる。一度スイッチが入ったら、止められないのだろう。まさに制御不能だった。脳内を埋め尽くす彼の語りで、夜に一睡もできないことが幾度もあった。


 コウキの内なる言葉は、私が現実世界で叩きつけたい言葉だ。ならば、この物語は、コウキのモノローグをメインとしていくのが最適なのではないか。


 ただし、一人称は苦手だ。今まで読んできた小説のほとんどが、三人称一視点の文体だったからだ。だから、お手本とさせて頂く有名作家の文体のように、三人称一視点でモノローグを進行することにした。


 私の分身であるコウキが活躍する世界を構築する。小説指南書では、主人公に困難を与え追い詰めろ、とあるが、そんな虐待紛いの行為、私にできるかどうか自信はない。


 彼はいわゆる超能力者だ。だからといって、超能力者や魔術師が当たり前のようにはびこる世界観にはしたくない。彼を唯一無二の存在にしたいのだ。


 この物語の舞台は、私の住む現代日本に酷似している。ただし、異能力者が紛れ、誰にも気づかれずに社会に溶け込んでいる世界だ。超能力者、魔術師、怪異、悪魔、魔物、と呼び名は様々だが、その総称を、アンノウンとしよう。それが、ひっそりと影で暗躍している現代日本に舞台は決定だ。


 コウキの日常生活や人間関係、そして彼が直面する苦悩や困難も重要な要素である。彼は飛行能力によって特別な存在となるが、それは必ずしも良いことばかりではない。その能力が日常生活や人間関係にどのような影響を与えるのか。詳細に描写することで、物語にリアリティを持たせることができる。


 私はコウキの内面に潜り込み、さらに深く掘り下げる。空を飛ぶことによって感じる喜び、また時には、その力によって生じる葛藤。彼は、自らの能力をどのように受け入れ、使いこなし、そしてその力を持つことの意味をどのように理解するのか。


 物語は、コウキが自分自身と向き合い、自らの能力を肯定する過程を描く。空を飛ぶことは、ただの移動手段ではない。彼にとって、私にとっても、かけがえのないものなのだ。


 これから綴られる文字の羅列は、ただの妄想から現代ファンタジーという新たな世界を創り出す、未知なる領域への招待状となるだろう。


 高まる創作意欲。乏しい語彙力ではあるが、それでも臆せず、机のノートパソコンを開き、キーボードを叩く。


 起承転結。三幕構成。一通り目は通した。だが一旦、小説指南書は封印とする。


 面白くなければ、読者は本を閉じてしまう。そんな教訓は、いまの私に必要ない。

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