01 空を飛ぶ主人公の創造

 悪夢を伴うことが大半だっだが、寝覚めの気分は決して悪くはなかった。かなりの確率で、毎夜、私は夢の中で空を飛ぶ。うまく飛べず、手足をバタバタさせるだけのときも多かったが、大空を自由自在に高速飛行できる日も少なくはなかった。


 小説執筆の決心から数日経ったある日、この夢がインスピレーションとなり、私はまず自分の分身ともいうべき妄想世界の主人公、空を飛ぶ能力を持つ青年を誕生させた。彼は一見普通の青年だが、その隠された能力は、彼の人生を通常とは一線を画すものに変える。


 これでいこう。息巻きながら、そう思った。


 私は妄想に没頭した。この主人公の創造は、まず彼の能力の詳細から始まる。彼はどのようにしてこの力を得たのか。どのようにしてその力をコントロールするのか。飛行能力は物理的な制約を超越したもので、彼自身もこの能力の正体を完全には理解していない。


 プロフィールを紡ぐ過程で、主人公のキャラクターが徐々に形を成していく。年齢や職業。彼はどのような人物なのか。過去にどのような出来事があったのか。彼の人格、彼の恐れ、彼の夢、これら全てが物語の中で重要な役割を果たすに違いない。


 空を飛ぶ際の感覚、その瞬間に彼が感じる解放感や喜び、そして空中を舞う技術を細かく描写することに集中した。夢の中での飛行感覚は、現実世界では感じることのできない自由と解放感をもたらし、物語の中でそれを表現することで、私はその感覚を再体験することができる。


 コウキ。この主人公をそう名付けた。その直後、現実世界で死にかけていた脳が、まどろみから再起する。


 彼の創造は、私の今後の創作活動の核となる。深く深く掘り下げることで、熟考を重ねに重ねることで、彼の物語に深みと、私の人生に意味をもたらすのではないだろうか。

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