偶然の人生逆転~冤罪を着せられてサークルを追放されたけど、一発当てて優雅な大学生活を過ごします~
気まぐれ
全3話中 第1話
「酔った女の子を襲うなんて、最低ね。別れるわ、さようなら」
「ちょっと待って、僕にそんな覚えは……」
「シラを切るなんて、信じられない。
去っていく長い黒髪の彼女。
大学に入って何度も告白してようやく付き合えた彼女に、ビンタされた右頬がジンジンと痛い。
◇◇◇
大学ではテニサーに入っているんだけど、他校との親睦のための合宿に参加した。
昼間はテニスをしたあと、その夜の親睦会で僕は先輩の
チャラ男っぽい金髪だけど、サークルで僕と彼女をつないでくれた恩人でもある。
『ほら、飲めよ~。せっかくの親睦会だ、空気読めって』
と言われ断ることもできず、あまり酒が強くない僕はストゼロをしこたま飲まされ、そのまま意識を飛ばした。
『う……ここは……頭いってぇ……』
気が付けば合宿所の部屋だ。
誰かが運んでくれてたのだろうか。
『う、うん……。きゃああああ、何なの、あなた⁉』
女の子の甲高い声が頭に響く。
もっと静かにしゃべってほしい。
『えっ……。君こそ、いったい? これはどうなってんの? ……っつ、頭いてぇ……』
ベッドの横には、女の子。
確か、合宿でペアを組んで練習したような気がする。
そこで足音がして部屋に誰か入ってきた。
『おーおー、これは玲、やっちまったな~! 彼女がいるのに別の女を酔わせてヤッてたのかー?』
入ってきたのは、ニヤニヤした顔の大雅さん。
『そ、そんなわけないでしょ、大雅さん! 僕だって意味わかんないんだし……』
『だがなぁ、玲。その状況で言い逃れすんのは無理があんだろ。彼女の
僕の彼女、清楚可憐な
そんな彼女がいるのに、他の人に手を出すはずがない。
だけど、今の僕は何も着ていない。
そして、横にいる女の子はどう見ても裸だ。
お互いベッドのシーツで体を隠しているけれども。
『これは、何かの間違いです! 大雅さん、助けてください!』
『はあ? お前覚えてねえのかよ、酔ったお前はあちこち他校の女の子に絡みまくってその子に無理やり飲ませてたんだぜ』
『そんなバカな……』
◇◇◇
まだ合宿の途中だったのに、ぼーっとする頭のまま無理やり帰らされた。
明くる日、大学に来てみると僕のやらかしが既に広まっていて、舞に見事振られたわけだ。
「おい、あいつが合宿で女を襲ったって奴らしいぜ」
「最低ね、あんな清楚な彼女がいるのに、何が不満だったのかな?」
「あいつのせいでまたテニサーはヤリサーって言われるぜ」
周りの目線がとても冷たい。
大学の講義では、不自然に僕の周辺だけ誰も座らない。
僕が何をしたっていうんだ。
全然身に覚えがないのに、無実という証明もできない。
一コマ目が終わって、教室を移動しようとしたとき、廊下で大雅さんに会った。
「おい、玲。来てやったぞ」
「大雅さん、どうしたんですか。僕の無実がわかったんですか?」
「おまえ、サークルから追放な」
「そんな!」
「いや、当然だろ。なんで追放されないと思ったんだ? 俺が向こうの女の子と話してなだめてやったから、お前は出るところへ出なくて済んでるんだぜ、感謝しろよ」
「はい……」
チャラ男先輩こと大雅さんはいいとこあるんだな。
が、これでサークル出禁か……。
舞と付き合いたくて入ったサークルだからもう意味はないし、行っても気まずいだろうから妥当な気もするんだけど、モヤモヤする。
◇◇◇
「すいませーん、とっくに注文してるんですけど、まーだ時間かかりそうですかねー?」
「申し訳ありません、ただいまお持ちいたしますので」
僕がバイトしてる居酒屋、青木屋。
いつもどおり夜からシフトに入ったけど、テーブルへの配膳が遅いと文句が来る。
「ちょっと、頼んだものと違うのがきてるんだけど!」
「すみません、確認して持ってきます」
注文の取り間違いや配り間違えも起きる。
それもこれも、サークルからの追放宣言のせいでバイトに集中できないからだ。
「
「すみません、店長」
「まったく……。大学で疲れてるかもしれないけど、こっちは金払って雇ってるんだよ、しっかりしてくれないと!」
「気をつけます……」
バイト先の店長にまで怒られる始末だ。
もうなんなんだよ、いったい。
◇◇◇
次の日、眠たい目をこすりながら大学の講義に出る。
もちろん、僕の周りだけ不自然に席が空いたままだ。
もう、やだ。
一日の講義が終わった後、一人暮らしの僕は夕食を作る気にもならないので適当なファミレスに入った。
「いらっしゃいませ~」
金髪のセミロングの女の子が注文を取りに来た。
「なんか元気ないですね、お客様」
「え、あ、いや……別に……。そんな元気なさそうに見えますか?」
「ええ、すぐわかるくらいに。あの、あと30分したら私シフトが終わるんです。そしたらどこか行きませんか?」
「うん、いいよ」
そして、食事をとってファミレスを出たらその女の子が待っていた。
「どこか喫茶店にでも入りませんか?」
近くの喫茶店に二人で入る。
「話、聞きますよ」
とその子が言うので、合宿での出来事や彼女に振られたことを話した。
「辛かったんですね。……また何かあったらお話聞きますから、連絡先……交換しませんか?」
僕は言われるまま連絡先を交換し、そこで解散となった。
◇◇◇
自分の部屋に帰ってきて、何もする気が起きないからスマホでネットサーフィンする。
『Vtuber事務所、所属のアイドル不倫発覚か? 株価が大幅下落!』
というヘッドラインが目に入った。
その下のコメント投稿欄には、アイドルへの罵倒がたくさん並んでいるが、目を引いたのは『株価下がってんなら買い時じゃねwwww』という書き込みだった。
そういや、舞といっしょに旅行へ行くつもりで貯めた金があったな……。
どうせ無駄になった金なんだ、憂さ晴らしに買ってみるか。
不倫発覚ってのも僕の状況となんか似てる気もするし。
あれ、株ってどうやって買うの?
◇◇◇
いろいろ調べると、どうやら証券口座というのを開かなきゃいけないらしく、二日後には手続きを終えて口座ができた。
銀行口座とどう違うのかいまいち分かんないけど、入金してそのVtuber事務所の株を買えるだけ買った。
なお、口座開設の間までにさらに値が下がっていたのでたくさん買えたからちょっとお得感がある。
次の更新予定
偶然の人生逆転~冤罪を着せられてサークルを追放されたけど、一発当てて優雅な大学生活を過ごします~ 気まぐれ @kimagureru
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