最後に置いた場所

@y7novel

第1話

この世では、十八歳になると能力が一つ与えられる。

神様がいるなら、もう少し平等にしてくれと思う。

俺に与えられたのは、「物を最後に“意図して置いた場所”だけが分かる」という能力だった。

忘れ物や失せ物には使えない。盗まれたもの、事故もダメ。この世で役に立たない能力ランキングの上の方に入りそうな能力だ。

だが、この能力のおかげで市役所の能力者相談窓口で働けている。とはいっても実際のところ体のいい雑用だが。

隣の席では、「触れているところが磁石になる」能力を持った職員が、冷蔵庫に紙を貼りながら「これで電話番号が貼れますので」と真顔で説明していた。

「すみません、能力者相談窓口ですか」

そこには若い女性がいた。肩まで伸びた髪は少し乱れている。

「はい。そうですが、なんのご用件でしょうか?」

「行方不明の兄の所持品を探してほしいんです。警察は事件・事故両面で調査中なんです。」

「それは…大変ですね。僕の能力は『物を最後に“意図して置いた場所”だけ分かる』なので、微力ながらお手伝いできると思いますが何かお兄様のものをお持ちではございませんか?」

すると、女性は男物の財布と何やらステッカーがケースに貼られているスマホを取り出した。

「……触りますね」

ハンドパワーなんてことができたらいいが、あいにく俺のは地味オブ地味能力。

「意図して置いたわけではなさそうですね。落としたようです」

明らかに落胆した表情を浮かべる女性。

「後日何か別のものをもってきてくれませんか?」

トボトボと帰っていく後ろ姿にやるせなさを覚えるが、だって俺はヒーローでない。貧乏くじを引いたのだから。

「砂鉄を取りたいから、杖の先を磁石にしてくれないかね?」

この能力者相談窓口はこんな相談で溢れている。


後日

再び以前相談しにきた女性が現れた。今日は以前と違い、髪はセットされている。

「これは兄の鍵です。兄の部屋から持ってきました」

「持ってきてくださり、ありがとうございます。触れますね」

ピーン。俺の中だけに聞こえる音。俺の能力が発動する音だ。

見えたのは自宅の机でも、川でもなく、安いコインロッカー。ロッカー番号は35番。

「見えました。ロッカーなんですけど、地図で探してみましょう。ここら辺だとそうですね」

市役所の地図とGoogleマップを使い調べると、目的の場所がわかった。

「ありがとうございます。行ってみますね!」

今回女性の帰る姿は活力の兆しが見えて、俺もほっとする。

お兄さんは、衝動的にそこへ行ったわけでも、逃げるつもりだったわけでもない。

俺は少し晴れた気分になった。缶コーヒーを飲むと甘くてむせた。


また、後日。

再び例の兄を探す彼女が現れた。

「ロッカーには何も入ってませんでした。少しだけ安心しました。」

「安心できたならよかったです」

ゆっくりと軽快に女性が去っていく。

この能力は、探すためのものじゃない。間違いを消すためのものだ。

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