第3話 移住
「君たち親子を、安住の地に連れてってやろう」
そう宣言した新島は、ドラゴンをわたしと一緒に連れてきた。
新島が暮らす、山に囲まれた集落に。
というか、わたしは親ではないのだが。
そんなわたしの主張は空しくスルーされ……。
わたしは今、囲炉裏の火にあたっているのだ。
昼間に産まれたドラゴンは、囲炉裏端で、ぬいぐるみを抱いて眠っている。
かなりタフなメンタルだ。
昔貰ったハシビロコウのぬいぐるみが気に入ったようで、まとわりつくようにしている。
ここに来るまで、特に何かに怖がる様子はなく、暴れる気配もなかった。
ただわたしにぴったりとくっついて、ぬいぐるみを抱きしめていた。
ここは新島の家の隣にある古民家。
隣といっても、歩いて三十秒くらいの距離がある。
都市部なら、お隣さん家なんて三秒だ。
所有者はこちらも隣に住むタカさんという人で、わたしはここを借りて暮らすことになった。
さっき挨拶に伺ったが、ワイルドなイケオジという感じだ。
やれやれ、と、ため息をつく。
新島と絡んでいると、昔から良くも悪くも時折こういう予想外のことが起きるのだ。
幸い、わたしはパソコンがあれば仕事ができる個人事業主。
住む場所にはこだわりがなかったから、まぁ、別にいいといえばいいのだけれど。
それにしても、囲炉裏を見るのは初めてだ。
静かに火の爆ぜる音が、妙に心地よい。
こんなに落ち着く音がこの世にあるとは知らなかった。
囲炉裏の火を見ていると、いろんなことがどうでもよく思えてくる。
いや、どうでもいいというより、そのまま流れに身を任せてもいいのではないかという、諦めというよりは、おおらかな気持ち。
そうだよな。
新島もいるし、きっと何とかなるだろう。
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