瓶詰めの物語

となかい

瓶詰めの物語




はじめの瓶に、青を詰める。



中心に据えたのは、逆さに吊るしたアイリス。



息を止めてピンセットで摘み上げるその花は、凋落した信念。



── 傲慢を語るリンドウ


── 嫉妬を孕んだヒヤシンス


── 怠惰に色褪せたスイレン



氷槍が穿つ空虚を埋めていく。



けれど、この瓶は一向に形を成さない。


罪の欠片たちは作業台の上でバラバラに散らばり、私の時間を侵食し続けている。


まだ、この瓶の蓋を閉めることはできそうにない。



── だから、これらは一度隅に追いやって。



もう一つ、瓶を用意した。






こちらの瓶には、「春」を詰める。



まずは、この赤いポピーを。


溢れ出した情熱の色を ──



……いや、これじゃない。



愛の正体を探す彼女に贈りたい物語は、長い人生の合間にふと息を吐くような、そんな穏やかな時間。



ピンセットを持ち替え、柔らかな日だまりのようなミモザを添える。


仕上げに、ささやかな幸福を願うスミレを咲かせて。



── 瓶の中に閉じ込めた穏やかな愛の形。



『この春はあなたと』



どうぞ、蓋を開けてみてください。







☆こちらのリンクからどうぞ☆


この春はあなたと - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/822139841960473121


【あとがき】

最初に作ろうと思っていた悪役の話が思ったようにできなくて。気持ちを切り替えて春の話を作りました。という短編です。


※AI利用部分については細心の注意を払っていますが、もし既視感のある表現や問題のある箇所があれば、すぐに対応(修正・削除)いたしますので、お手数ですがご指摘ください。

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瓶詰めの物語 となかい @reindeer_c03

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