『鈴鈴戦争』~The Spy I Loved~
花咲たいざ
第1話 男らしくなりたい僕が入学した高校は、戦場でした
『男らしくなりたい!』
鏡に映る、線の細い自分に向かって叫ぶ。
彼女を見返したいって気持ちはない――とも言えなくもないけど、これこそが高校生活における僕、
母は女の子が欲しかったらしく、娘が生まれたら名付ける予定だった名もそのままに、僕を舞央と命名した。
子供のころから、よく女の子っぽい格好もさせられたりした。
その母は日本舞踊の名取師範をやっていて、幼いころから母に師事してきた僕にとっても、日本舞踊は唯一の特技だ。
僕は男であるわけなので、日本舞踊を踊るときは
単に、日本舞踊という女々しい習い事をしていたことを誰にも知られたくなかったからだ。
それ自体は別に問題はなかったが、これにはちょっとした弊害があった。
日本舞踊における女形は、それこそ普通の女性よりもずっと女らしい所作を必要とする。
日々、厳しい指導を受けているうちに僕の普段の所作も女らしいもの――悪く言えば女々しいものになってしまっていたのだ。
女顔であり、尚且つ所作までも女の子っぽい僕は痴漢をされたこともある。あの痴漢の目を思い出すと、今でも全身に鳥肌が立つ。
そのため、周囲の人は僕のことを「格好いい」でなく「可愛い」と形容する。正真正銘の男である僕には辛い日々だった。
そして、その辛い日々の集大成ともいえる出来事があった。
「舞央って、男らしくないさぁ」
中学時代、思いを寄せていた同級生の女子にそんなことを言われた。
いや、まあ女々しいという自覚は確かにあったよ。だけど、そんなことを言われた僕がどんな気持ちになるのか、分からないものかな。
そのことにショックを受けたと同時に、かつてないほどの危機感を覚えた。
ゆえに、僕はこの『鈴木高等学校』――通称
その理由は――
ズバリ、男らしくなるためだ!
この学校は純粋に『日本男児』を育成することに関しては、評価が高い。学力も県内でも五本の指に入る進学校だ。
ここならば卒業するころにはきっと、女々しい自分からも卒業できることを期待した。
――僕をどこに出しても恥ずかしくないような日本男児にしてくれる!
そう妄信していた。
しかし、この学校は普通じゃなかった。
たしかに隣接している鈴木女子学院――通称
『男女の清らかな交流を通じて、健全な精神を育む』とか何とか。
嘘つけ。
『戦争』を美化した言い方すんな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます