降りしき鼓動 〜深雪〜

アリア

第1話 白銀の町へ

俺はバスに揺られある場所へと移動させられている。行き先は深雪タウンだ。

なぜ、そう呼ばれているのか。それはいつからかは知らないが一年中、冬だけになってしまった区域がある。そこは小さな町ほどのスペースでグルっと高い塀に囲まれているって話だ。

この区域の使い道がないから政府は刑期を終えた元囚人達をこのスペースに集めて暮らしをさせる事にした。

しばらく山道を上って行くと「これより先、立ち入り禁止」の看板が数カ所に置かれている。看板を過ぎるとゲートがあり兵士の見張りが立っている。

バスは一度止まりゲートの兵士が紙を見ながらバスに乗ってきて俺の顔を確認する。


「名前を言って」


「有野シン」


「よし」そう言って更に後ろの座席へと向かう。


「名前は?」


「お前さん、俺を知らんのかい?」


「いいから。名前を」


「中条トウだよ」


「伝説の大泥棒だな」


「おいおい。俺はな…伝説の鍵師だ」


そんなやり取りが聞こえた。俺一人かと思ったら他にもいたらしい。


バスの先頭に戻った兵士がこちらを振り向いて言う。


「このゲートを越えれば深雪タウンに入る。お前ら二人はそこで暮らす事になる。寒い地域だ。貰った荷物にコートがあるだろ?それを着て降りる準備をしておけ。もう10分もしたら着く」


そう言ってバスから降りてゲートに戻って行った。


バスが走り出すとすぐに高い塀が見えてきた。

そこにも兵士が数人立っている。

暫くすると門が開いてバスが進む。


少し広くなった場所にバスが止まりそのまま俺と中条トウは降ろされた。


そこには雪が積もった白銀の世界が広がっている。

噂は本当みたいだ。一年中、冬の町。

本来夏が終わったばかりなのに…どうなっているんだ…


「ったく。相変わらず兵士は愛想がねぇな。ほら兄ちゃんコートにぶら下がってる木札見せてみな」


中条トウに言われるままキーホルダーになってる大きめの木札を渡す。


「お、なんだ俺と同じF通りの小屋だ。連れてってやるからついてきな」


俺はリュックを背負って中条トウの後ろをついて行く。

道には「A通り」や「B通り」と木で出来た看板が立っている。その道に同じ小屋が向かい合いに全部で6つの小屋が建てられている。なかなか立派な造りだ。


「お前さんの木札にはF3って書かれているだろ?

だからF通りの3号小屋がお前さんの住む家って事だよ。その木札は小屋の鍵にもなってるし身分証にもなるからなくさないようにな」


この人はどうしてこんなに詳しいのだろうか?


中条トウと話しながら歩いているとF通りに着いた。


「俺は向かい合いの4号小屋だから何かあったら遠慮なく訪ねてきな」


そう言って小屋に入ってしまった。


ここが今日から俺の住む町。一年中、冬の町。


深雪タウン




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る