風の隙間に溶けた涙

ホショミ

第1話 悲しみが消えますように






ずいぶんと、いじめられていた。

今でも忘れない「虐待」の日々。


毒言葉を吐かれる毎日のなかで

自分の魂の生きるチカラだけを信じた。




大人になって、

人に合わせる人間になった。

それは自分の意思なんだけど、

いつも毎瞬

なにか違和感をおぼえていた。



「本当に言いたいこと」

が、言えない。

それどころか

その気持ちを悪い感情だと決めつけた。



良い人を演じているのかさえ分からない。

他者に理解者として寄り添う。

それは本音なのに何故か苦しい。

その理由がやっと、分かった。



大切な自分自身を

ずっと

守れなかったんだ。

自分よ。

ごめんね。




風が吹く季節には

かじかんだ手の指先の

涙が溶けてゆく

その記憶を

消せないでいる



宝物になんて

できない

だって「虐待」の証だから。





それでもね。

風は新しい季節を運んでくれる。

新しい

優しい涙を教えてくれる。




虐待に遭った人

いじめられた人

苦しみの背中を丸めて生きている人


すべての

悲しみが

終わりますように。



すべての

悲しみに

温かい涙が

風に伝いますように。



そう祈るから

そう願うから

大切なあの本が

「光」

を教えてくれた。



いま歌うように

風にのせる


ぼくの

彼の

彼女の

記憶の痛みが

大自然の中に

ゆるやかに溶けてゆくように。と

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風の隙間に溶けた涙 ホショミ @kumayu23

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