VRMMOの世界に閉じ込められた最強ランカーのコピー、剥奪者のジョブで復讐の亡霊となる
いくかいおう
第1話 ここが分岐点
洞窟型ダンジョンの最深部で、俺は叫んだ。
「ボルテスアロー!!」
俺の頭上から放たれた雷の矢が、漆黒のドラゴンの胴体に突き刺さる。
苦痛の咆哮すらあげず、ドラゴンはただじっと痛みに耐えていた。
ボルテスアローは最強クラスの攻撃力を誇る。
しかしダメージがデカいこと以上にありがたいのは、麻痺効果だ。
これでしばらくは動けまい。
「一気にケリをつける。……シフトアップ」
自身に攻撃力アップ(大)を付与。
赤いマントをたなびかせ、跳躍。
剣を振り上げ、一閃。
ドラゴンの首を切り落とした。
「ふぅ」
「やったな、
斧を担いだ金髪の戦士が話しかけてきた。
他にも魔法使いや銃士の仲間が駆け寄ってくる。
「おいここではコヲシだぜ、海堂……じゃなかった、Kドゥー」
「お前も本名言ってんじゃねえかよ。ははは」
海堂は俺のリア友だ。
それに、他のふたりも。
高校で三人と知り合い、VRMMO【カオスボウル・フロンティア】をプレイしている仲間だとわかって、すぐに仲良くなった。
もともとあったグループに後から入るのはやや気まずかったけど、いい連中で助かった。
海堂の前方斜め上あたりに、不特定多数の人間のコメントが浮かんだり消えたりする。
ネットでゲーム配信しているから、その反応だろう。
・っぱコヲシすげぇな
・クリアタイムどんどん更新するじゃん
・かっけえええええ!!!!
・赤魔道士以外のジョブの解説お願いします。
・さすがスタンピード事件の救世主
溢れんばかりの称賛の声。
照れるね。ちなみに俺自身は配信はしない。
恥ずかしいってのと、誰かに監視されている感じが苦手だからだ。
自分の人生がコンテンツとして消費されているような気がして、乗り気になれない。
「しかし、CBF最難関ダンジョンも終わってしまえば呆気ないな」
「そりゃあコヲシは今んとこたった一人の赤魔道士なんだ。お前がいればどこでも楽勝だろうぜ。それに……混沌の英雄様だもんな」
「その二つ名やめろよ恥ずかしいな。だいたい赤魔道士になるためのレアアイテムを手に入れたのも、ここまでやってこれたのも、みんながいたからだ」
「ほう、謙遜するじゃん」
「まぁ、3割は実力。みたいな」
「はは、こいつー。3割は運の間違いだろー、お前はいろいろ運に恵まれてるからな」
ドラゴンのドロップアイテムを回収し、ダンジョンの最深部へ。
激レアアイテムを入手し、銃士の友達に渡した。
「え、いいの!? コヲシくん」
「報酬は順番制って決めただろ、リュウイ。周回して全員分集めればいいだけだしさ」
「ありがとう!!」
「さて、もう0時だ。そろそろ寝ようぜ。明日は持久走だからな」
ゲームからログアウトして、頭に装着したVRギアと、コネクトグローブを外す。
脳波と手の動きでゲームを操作するための装置だ。
そこそこ値の張るチェアから立ち上がり、ベッドにダイブする。
とはいえすぐには寝ない。
寝る前のSNSチェックは現代人の必須ルーティンだろ?
おすすめのTLはもちろん、CBFの話題ばかり。
とくに銃士の友達がアップした俺のプレイ動画は、深夜のくせにそこそこバズっていた。
「どうも慣れないな……こそばゆい」
カオスボウル・フロンティアは自由と混沌の楽園だ。
剣と魔法、銃と蒸気、最近じゃ近未来的な文明も取り入れつつある世界観ごちゃごちゃのカオスワールド。
当初こそ自由な世界観でのスローライフがメインコンテンツだったが、調子に乗った運営がウケる要素を入れまくって、しかもそれが成功しちゃった稀有な事例なのである。
プレイヤー数は全世界3000万人。
その上位ランカーこそ、俺や海堂たち。
特に俺は、現在世界に一人しかいない伝説のジョブ、赤魔道士の資格を得ている有名人だった。
ホント、鬼みたいな条件をクリアするのに苦労したよ。
魔法と剣の両方を極められる赤魔道士。
その熟練度もマックスまで上げている。
さらにプレイヤーレベルも最高クラスで……。
やめよ、自慢なんてガラじゃない。
さっさと寝て明日の持久走に備えなくちゃな。
明日はバイトもあるし、ガッツリ体力を回復しておかなきゃならん。
夜ふかしもしたいしさ。
コンコンと部屋の扉がノックされる。
返事も待たずに扉が開いて、母さんが顔を覗かせた。
「こーら恒志、夜更かしはしない約束でしょ」
「あ、あぁ、もう寝るよ母さん」
怒らせるとオカズ減らされるからな。
と思いつつ、もうちょっとだけネットの海を泳ぐ。
「あれ?」
海堂たち、まだ配信している。
三人で別のダンジョン挑むようだ。
なんだか仲間はずれにされたような気分。少し、胸がキュッとなる。
『いやー、コヲシが消えて視聴者もめっちゃいなくなったけど、俺たちだけで頑張りまーす。まぁ俺らもともと三人だったしなぁ』
時々感じる、彼らとの壁。
しかし気にしていてもしょうがない。
明日に備えて、俺は眠った。
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翌日、コンビニでバイトをしていると、見知った常連客がやってきた。
いっつも目の下に隈のある、小柄な女の子。
長い髪は整えず、シャツもダボダボ。たぶん高校生で、CBFプレイヤー。
コンビニとのコラボクリアファイル持っていってたし。
ぜひ仲良くしたいが……目付きが悪くて話しかけづらい。
恋愛目的ではないぜ? 単純にCBF友達を増やしたいってだけ。
バイトを終えて店から出る。
1時間前から降り続けている雨にため息を漏らしていると、傘を差した母さんが歩いてきた。
我が家のチワワと一緒な辺り、寝る前の散歩がてら傘を届けに来てくれたらしい。
ウチのチワワは元気すぎて日に三度の散歩をしているのだ。
「ほれ、傘忘れてったでしょ」
「別に濡れてもよかったのに」
「風邪をひいたら勉強できなくなっちゃうでしょうが」
「はは」
2人で並んで帰る。
母さんへの恩返しじゃないが、今日くらいはCBFをサボって早く寝ようかな。
母と談笑しながら十字路を渡ろうとしたとき、
「え」
横から無灯火の車が飛び出してきてーー。
「うわっ!!」
悪夢から覚めるように、飛び起きた。
眼の前には草原。
空は青く、快晴。
振り返ればアンティークな街。
カオスボウル・フロンティアの世界にいた。
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※あとがき
謎の赤魔道士信仰は、私がFF1で赤魔道士を気に入っていたからです。
6話までは実質プロローグかな?
応援よろしくおねがいしますっ!!
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