『Belief ーー ビリーフ 信念 ーー』

クールペンギン

プロローグ。

 精霊、悪霊、無縁仏など……。


 世界には、善悪関係なく、霊的な存在もいる……。


 その悪霊などの力を使う“死霊使い”や…


 その存在達と、日々たたかう“退魔師”の姿もあった……ーー


 ザン。


「ぐっ」

 夜。

 家の近所にある公園内で、あやかの手に持つ“霊剣あらたか”が、今し方あやかを襲ってきた悪霊の体を、下から上へと斬りつけた……。

 あやかに何度目かの斬られた悪霊は、深手を負って、その場に倒れていった…。

「フッフッフッフ退魔師よ、キサマは変わったヤツだな…。他の退魔師ならば…我ら悪霊を、すぐに滅するというのにだ……」

「……」

 あやかは黙って、悪霊のようすをうかがっていた……。

「そのキサマの手にある、霊力でつくった霊剣あらたかをもってすれば…このたたかいで、ここまで弱らす事ができたこの我を……滅する事も、容易いだろうに……。キサマの剣からは、我をいたぶって楽しむような素振りはみえないし……何故手加減をするのだ? 退魔師よ……」

 悪霊のその問いに、あやかは不満気に言った。

「わたしは退魔師じゃない」

 それから、あやかは、それでも今し方自分が倒した相手を警戒しながらも…自分の手に持っている霊剣あらたかを見ながら静かに言った…。

「この霊剣あらたかだって、いくつもあって…修行をしたら誰にだって、つくりだす事ができるもの……。うちの家系がそうだからってだけで…わたしを退魔師だって勘違いをして…あなた達のような存在が、わたしの命を狙ってきたりして……」

 あやかは視線を、目の前に倒れている悪霊へと向けた。

「…あなたこそ…もう喋るのが、やっとじゃないの……」

 あやかは、ふ、と息をはき、

「実際のところ…あなたがわたしを退魔師だと勘違いをして襲って来なければ……こうしてたたかう事も、なかったでしょうに……」

 肩をすくめて言った……。

 そんなあやかに、悪霊は言った…。

「そこまでの力を持っていながら…何を言うか……。退魔師など、形式など関係ない。我は…悪霊だからと我らの事を滅していく退魔師の事が許せないのだ……」

 悪霊があやかを睨んで言った…。

「我はまだ…我らに敵対してくる、キサマらをこの世から葬り去る事を、諦めては…おらぬのだぞ……」

「……」

「それでも我に…とどめをささぬと言うのか……?」

 あやかは軽く笑った……。

 そして…


 フ。


(!? ヤツが…持っていた霊剣あらたかを…消した……)

 ジリ…と悪霊は思いながら、動けるときをうかがっていた……。

 あやかは言った…。

「どんなひとの命に対しても…ひとを活かす……。その行いは…少なくとも悪い行いとは、わたしは思わない……」


 カチ、ボゥ…ジュ……


 あやかは、自分が着ている上着のポケットから、葉巻きとライターを取りだして吸った……。

 フーーー。


 カキン。


「たとえその相手が、わたしの命を狙ってくる相手だったとしてもよ……」

 あやかは悪霊にほほえんだ。

「わたしがあなたの事を受け入れるかどうかは、話はべつにしても……わたしはあなたを否定したりはしたくないから……」

 あやかは、夜空を見て言った……。

「後悔は、しないわ……」


 このカリは…必ず返す……。


 悪霊は、空高く、とうそうしていった……。


 そんなとき、あやかのもとへ、風にのって、どこからか声が聞こえた……。


 あの悪霊の事…本当に逃がしてよかったのか……?


「え……」

(風の声……)


『Belief ーー ビリーフ 信念 ーー』

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