偽恋人の幼馴染と破局したい!

嘘泣き

第1話

授業が始まるまでの朝の時間、教室で生徒達が友達と楽しそうな会話をする中、一人席に座って本を読む青年が居る。

青年の名前は、須磨 海人すま かいと

友人0 恋愛経験なし 勉強そこそこ

運動そこそこ これといった趣味は無い。

自称陰キャの高校2年生である。



 「おまえらー、席に着けー」



先生が教室に入ってきたタイミングで、海人は本を閉じる。

先生の話を軽く聞きながら、海人の1日が始まる。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



昼休みになると、海人は図書委員の仕事のため、図書室へと足を運ぶ。

そしてこの時間が、海人にとって一番の楽しみである。

図書室の扉の前で、海人は一度深呼吸をして高鳴る心臓を落ち着かせる。

いつもより少し早い鼓動をさせながら、図書室の扉を開ける。

海人の鼻に、甘い花のような香りがふわりと広がる。



 「あ!こんにちは、須磨君」


 「…こんにちは、城崎さん」



花瓶を持ちながら海人に挨拶をしたメガネをかけた少女、彼女の名前は城崎 和泉きさき いずみ

海人と同じ図書委員であり、海人が好意を寄せている女の子だ。



 「ちょうど、花瓶の水を取り替えたところなんです」


 

和泉は花瓶を少し持ち上げて、笑顔で言う。


 

 「ごめん!俺も図書委員なのに…」


 「大丈夫です!私が好きでやっている事ですから!」



和泉は花瓶を置き、2つ用意されている受付の席に座る。

和泉の横に海人も座り、各々が好きな本を読む。

元々使用率の悪い図書室、2人がページをめくる音だけが響く。

海人はチラリと隣を見る。

真剣な表情で本を見つめる和泉の横顔。

海人が好きな表情だ。

視線を感じたのか、和泉も海人の方を向き、2人の目が合う。



 「……何か、付いてますか?」


 「い、いや!?な、何もないよ……」



お互い気恥ずかしくなり、サッと目をそらす。

海人がもう一度横目に見る。



 「……可愛い」


 「へ!?」


 「あ!いや、その……それ!その栞がさ!可愛いなって!」


 「そ、そうですよね!可愛いですよね!この栞!」



少し頬を赤く染め、恥ずかしそうにしている和泉の姿があり、海人は思わず本音が漏れる。

焦って変な誤魔化しをしてしまった。



 (バカか俺は!ビビりすぎだろ!)



心の中で悔いながらも、安堵の気持ちがあるのも事実だった。



 (……このままで、本当にいいのか?)



心の中で海人は自問自答する。

このまま気持ちを伝えなくていいのかと。

和泉を好きになってもうすぐ一年

伝えられなかった事に安堵しているようでいいのか。



 (いや、ダメだ)



2人だけの空間、漏れ出た本音が海人の背中を押す。



 「……あのさ、城崎さん」


 「な、何でしょう……?」


 「……実は、俺は─」



海人が言葉にしようとしたその時、バンッと扉が勢いよく開く。

2人の視界の端に、赤く綺麗な髪が靡く。



 「かーいと!お昼一緒に食べよー!」


 「……慶」



図書室に入ってきた少女は天王寺 てんのうじ けい

海人の幼馴染であり、校内の誰もが憧れる陽キャ女子である。



 「何?何かまずかった?」



慶の登場により、決まっていた海人の覚悟が身を潜める。



 「……今は、委員会の仕事中だ」


 「えー!いいじゃん!そのくらい。どうせ誰も来ないし」


 「あのな、だからって─」


 「言ってきなよ!須磨君!」



2人の会話に和泉がそんな風に割って入る。



 「委員会の仕事は、私がやっておくから」


 「いや、でも─」


 「大丈夫!天王寺さんの言うように、人はほとんど来ないし、それに…さんは大事しないと…ね?」



和泉の言葉に、海人の胸が締め付けられる。


天王寺 慶

海人の幼馴染であり、校内誰もが憧れる陽キャ女子

そして、海人の恋人である。

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