三女神の狂愛~当たり前に寝取られる同人漫画の世界で生きる僕の記録~

けんとーし

第1話

カクヨムコンテスト参加を目指して書き始めます。

10万文字も書けるか???


――――――


僕の名前は斉藤翔太。

先日、小学一年生になったばかりのピチピチのボーイだ。

一般家庭の生まれで、両親は共働き。

容姿は平凡で、どこにでもいそうな普通の子供と言っていい。

そんな僕には一点だけ普通じゃないところがある。

それは僕が前世の記憶をおぼろげに持っているということだ。

いわゆる転生者。

まあ、だからと言ってラノベであるような転生特典みたいなものがあるわけでもないし、特に気にしていなかった。

今日この時までは…。


『超合体!アルティメットモード!』


「合体シーンは何度見ても痺れるね。そう思わない?」

「そうだね」

「いつか技術が進歩すれば、本物が見れたりするのかな?見てみたいね」

「うん、見てみたい」


僕は今、自宅のリビングでロボットアニメを見ている。

ロボットアニメ好きは前世からの趣味だ。

そして、僕の隣には女の子がいて、僕が話しかけるたびに相槌をしてくれる。

女の子は同じマンションの同じ階に住むお隣さん。

彼女の両親も共働きで、帰ってくるのが遅い。なので、いつも僕たちは互いの家を行き来して親が帰ってくるまで一緒に過ごしている。

仲のいい幼馴染だ。

あと、これは非常に重要なことだが、この女の子はとってもカワイイ。

成長すれば絶対に美人になると断言できる。


本来であれば、この子と僕は釣り合わない。

同じ写真に映る顔を見比べれば、それは嫌でも分からされる。

だが、しかし。

今から親密な関係を築いておきさえすれば、大人になったらイイ仲になって、そのままゴールインみたいな?ワンチャンあるよね?

だって、前世でもなんでこんなヤツに美人な奥さんがいるんだって、ことがあったし、僕もきっといけるはず!


あ、そうそう、女の子の名前がまだった。

彼女の名前は――


「明日香!?」

「ん?」

「朝倉明日香!?」

「そうだけど。翔太どうしたの?」


突然叫んだ僕に対して、明日香が不思議そうにコテンと首をかしげる。

僕はあいにくそれに構っていられなかった。

なぜなら、思い出してしまったから。

この世界が前世で読んだことのある同人漫画の世界だということを。


『当たり前に寝取られる僕(幼馴染編)』


R18指定のエロあり。

内容はタイトルから分かる通り寝取られもの。


主人公の斉藤翔太には朝倉明日香という幼馴染がいた。同じマンションに住むお隣さんで、互いの家を行き来する程、仲が良く、将来は結婚しようねなんて約束もしたりした。

中学になると、二人は疎遠になった。なぜなら、翔太は公立中学に行ったが、才色兼備の明日香は私立中学に行ったからだ。通学時間が合わず、明日香は学業に忙しいのか、交流する機会もなくなっていった。

そして月日が流れ、翔太は公立高校に進学した。明日香の方も私立ではなく、翔太と同じ公立に進学した。翔太は幼馴染とまた同じ学校に通えると喜んだ。だが、久しぶりに顔を合わせた明日香はそっけなく、一緒に通学しようと誘っても拒否された。学校ですぐに美少女と人気になった明日香を目で追いかける毎日。

そんなある日の休日。街中で、翔太は明日香が見知らぬ男と楽しげに腕を組んでいるのを目撃してしまう。思わず声をかけた翔太に対して、明日香は男は彼氏で付き合っていると言う。男はブランド物を身に着けたイケメンだった。

その日の夜、翔太が家でショックを受けていると、スマホに着信がある。明日香からで、動画が添付されていた。動画を再生すると、明日香があられもない格好でエッチな行為をしていて、何度も嬌声を上げていた。相手は昼間に会った男だろう。


『昔は~、翔太のことが好きでした~♡でも、今は~、一般家庭の出身で、顔も成績も50点の翔太よりも~♡資産家で、顔も成績も100点のイケメンのことが~♡大大大好きなのぉ~♡』


「…翔太、ねえ、翔太」

「はっ」


僕は腕を引っ張られてフラッシュバックから現実世界へと戻った。

隣には子供の明日香がいた。漫画に出てくる高校時代の明日香の面影がある。彼女があの朝倉明日香だと確信した。


「翔太?顔が青いよ。気分わるい?」

「ううん、大丈夫」


僕はぶんぶんと頭を振って、ラストシーンでアヘ顔ダブルピースをキメる明日香を脳内から追い出した。

まだ心配そうにこちらを見る幼馴染にもう一度大丈夫と言う。


「それより、そろそろお腹空かない?」

「すいた」

「夕飯にしよっか」

「うん」


僕は明日香をつれて冷蔵庫の前に行く。

いくつかの冷凍食品と、それとご飯のレトルトをレンジで温める。

前世の記憶を持つ僕は一応、自炊もできるが、親に許可されていなかった。まあ、それも当然だろう。小学一年生にひとりで火を使わせるわけがない。火事になったら大変だ。そういうわけで、僕たちの夕飯はだいたいにおいて冷凍食品だった。


いただきますして食べ始める。

僕は目の前でハグハグと食べる幼馴染の顔をじっと見る。

そうか…この子は将来、お金持ちのイケメンにあへあへされるのか…。

同意なしの無理やりとかだったら、僕はこの子を守るために頑張るんだろうけど。

そんな風じゃなかったしなぁ…。

あの漫画で主人公は「当たり前」に寝取られるのだから。


「翔太、またため息。さっきから、ずっと」

「あ、ごめんね。食事中なのに」

「んーん、べつに」

「…あのさ、明日香はさ、お金持ちのイケメンが好きだよね?」

「うん?」

「大きくなったらお金持ちのイケメンと結婚したいって思うよね?」

「わたしは翔太と結婚するよ?」

「あはは…そっか、ありがとう」

「うん!」


ニッコリ笑顔の明日香と乾いた笑顔の僕。

幼馴染と結婚の約束なんて、そんなイベント、前世では二次元か妄想の中でしか起きなかったな。

僕は今まさにそれを体験している。

あの同人漫画の主人公みたいに。

きっと未来はシナリオ通りに進んでいくのだろう。

僕はもう一度だけ深いため息をつくと、これから先、明日香とイイ仲にるのを諦めた。

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