たまご三兄妹「誰が一番美味しいのか」会議

いぬは

― 卵 ―

「今日はこの中で一番美味しい“卵”を決めるぞ!」

「ゆで卵兄さん、いきなりなんなのよ」

「半熟卵は気にならないか? 俺たちの中で一番美味しいのが誰なのかを!」

「それは……気になるけど」


「ねえねえ、それって僕も参加するの?」

「もちろんだ、末っ子の生卵」

「僕、まだ生まれたばかりだよ?」

「関係ない」

「急にハードル高くない?」


「じゃあ、まずは長男である俺、ゆで卵のアピールを始めるぞ」

「え〜、ズルイ!」

「順番はジャンケンで決めようよ」

「うるさい! 長男の特権だ! それに、俺たちに指ななんて無いだろ!」

「はいはい、年功序列ねんこうじょれつね……」

「もう、わかったよ」


「ではまず、ゆで卵の良さはマヨネーズとの相性が最高だ!」

「またマヨネーズ?」

「定番は強い。それだけで信頼がある」

「半熟卵だってマヨネーズで食べる人はいるわよ。まぁ、生卵にはいないけどね」

「ちょっと、何だよ。僕だっているかもしれないよ?」

「ないな」

「そうね」

「ひどい!」


「あと、殻をむきやすいのも利点だ」

「地味ね!」

「実用性は重要だ」

「美味しさとは関係ないと思うんだけど……」


「じゃあ次は私、半熟卵の番ね」

「お手並み拝見といこうか」

「頑張って、姉さん」


「まず、私は黄身がトロっとしてあでやかで、一番人気の茹で方なのよ!」

「一番人気って本当なの?」

「ええ、SNSで調べたから間違いないわ」

「なに! SNSだと!」

「つまり、一番人気が一番美味しいに決まってるのよ!」

「どっちつかずの中途半端じゃねえか」

「なによ! そっちなんて黄身がパサパサなくせに!」

「なにぃ!」

「ちょ、ちょっと二人とも、喧嘩はやめてよ!」


「じゃ、じゃあ次は僕の番だね」

「調理もされてない末っ子には負ける気がしないわ」

「そうだな」

「……もう、とりあえず聞いてよ」


「ぼ、僕は何にでも合うんだ!」

抽象的ちゅうしょうてきだな」

具体例ぐたいれいをどうぞ」

「ご飯ものならTKGたまごかけごはんや牛丼。カレーにも合うよ!」

「強いな……」

「反則じゃない?」

「あと、すき焼きやうどんにも合うかな」


「……」

「……」


「それに、揚げ物の衣やハンバーグのつなぎ、そしてスイーツには欠かせない材料なんだよ!」

「甘いのもいけるのか」

「万能すぎない?」


「ズルいわ……」

「ああ、ズルいな」


「あなた、すぐにお湯の中に入りなさい!」

「ちょ、ちょっとやめてよ姉さん!」


「おい、待て。人間が来たぞ」

「しかたないわね、一時休戦よ」

「もう、負けそうだからってひどいよ」



 *



「ねぇ、ママ。今日のごはんは何?」

「ボクくんの好きなカレーよ」

「やったー!」

「好物のエビフライに、タルタルソースもトッピングするわね」

「母さん、俺は半熟卵も乗せてくれよ」

「わかったわ」

「楽しみだね、パパ!」

「ああ、母さんの料理は絶品だからな」



 *



「何よ……結局、全員じゃない」

「そうだな」

「じゃあ、みんな美味しいってことだね」

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