第2話 猫とアイコン
沈黙が長く続いた後、僕は先輩の方を見た。
僕の目に映ったのは、僕の反対側を向き、耳を赤くさせた女の子だった。
その時の先輩は、どこかいつもの先輩とは違っていた。
肩が触れ合った状況のまま、
無言で気まずかった空気をなんとかしようと思い、僕は口を開いた。
「あ、あー、そういえば生徒会入るのに、紙とかってなんか書きますよね?」
先輩はまだ顔を隠しながら話した。
「そ、そうね、その紙、明日教室に行って私が届けるから、大丈夫。」
、、、
なぜか先輩の話し方は緊張している俺みたいだった。
気まずい空気の中進み続けた距離は、余った以上に進んでおり、マンションが見えてきた。
「先輩、マンションつきそうですよ」
話すことが見つからないため、目に入った物を話す。
「ほんとだ。結構早かったね。」
(あ、あれ、先輩戻ってる)
気づいたら先輩はいつも通りになっていた。
まぁこっちの方が話しやすいし、、、
けれど僕の中で、あんな先輩もいいと思ってしまった事は、誰にも言えなかった。
そして、マンションにつき、僕らは立ち止まった。
「傘、ありがとね、、」
「いえ、」
少し照れてそう言う先輩に僕はまっすぐ話せなかった。
僕らは自分の階に向かった。
向かう途中、僕は一つやりたいことがあった。
それは連絡先の交換だ。
僕と先輩はまだ、連絡先をこうこんしてないのだ。
そりゃ、一つ学年が違うから、と言う理由もあるがそれは言い訳だ。
何回も聞くタイミングはあった。
先輩に断られた時の僕の気持ちを想像してから、僕は聞くことを諦めた。
でも、今なら言える。
先輩から生徒会に誘ってもらえたことで、僕は嫌われてはいない。そう思えたからだ。
「あ、あの、先輩」
「ん?家の鍵でも忘れた?」
「いや、忘れてないんですけど、聞きたいことあって、」
「ん?」
先輩は首を傾げた。
「連絡先、聞いてもいいですか?」
「いいよー」
、、、
あ、あれ?こんなあっさり?
僕が今まで考えてた事はなんだったんだ?
そう思わせるほど、返事が早く、軽かった。
「スマホだして」
手を出してそう言った。
「はい、」
ピロン。
僕と先輩は、この瞬間、連絡先を交換した。
「ありがとうございます」
平均なフリをするのが限界。
今すぐ叫んでしまいたい気分だった。
そして、僕と先輩は別れようとした。
「あれ?晴くん?」
聞いたことのある声が聞こえた。
「母さん⁉︎」
「恵梨香さん?」
僕達を呼んだのは先輩のお母さんだった。
「何してるの?こんな寒いところで、」
心配そうに言った。
「いま、晴と連絡先交換してて、」
普通に話す。
僕はこの時思った。
僕はこんなにも浮かれているのに、先輩は平気なんだ、と。
「まだあなたたち交換してなかったの?」
僕らは小さく頷いた。
「ふぅーん、、、」
先輩のお母さんが、僕を見つめる。
似ていた。何かを企んだ先輩の顔と。
「まだ、ここで話したりする?」
恵梨香さんが先輩に言った。
「いや、もう話ついたとこ。」
「じゃあ、これで」
僕は一言いい、先輩たちを見送った。
「じゃあねー晴くん」
「学校でねー」
恵梨香さんと先輩たちはそう言い、帰って行った。
(よっしゃ!先輩の連絡ゲット!!)
そう思っていた時だった。
僕の耳にある会話が入ってしまった。
「あなた今日、折りたたみ傘持っていってよかったわね」
恵梨香さんが話す。
僕は思わず振り返った。
振り返った先には顔を赤くして、首を横に張っていた先輩がいた。
先輩は首を横に張った後、すぐ上の階に行ってしまった。
そして僕は足早に家に入り込み、考え込んだ。
(なんで?先輩傘持ってないって、)
僕は一人、顔を押さえながら考えた。
先輩に好きバレした話 @kuragetoneko
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