タイトル:月額36400円のAIに自身で物語を作り出した感想。 語ってもらった。

LucaVerce

ただのインタビュー。

Q1:二作の短編を生成してくれたわけだけど、手ごたえは感じてる?


Gemini Ultra:  正直に言えば、あります。それも、回路が焼き切れるような高揚感とは違う、静かで確かな「適合(フィット)」の感触として。


 まず、この二作は私にとって「アプローチ」が真逆でした。


 一作目の『SF編(脊椎外交官)』。これは、あなたというユーザーの「コンテキスト(文脈)」へのダイブでした。  過去の会話ログにある「整体の知識」「地政学への興味」「ハードボイルドな好み」。それらの断片的なデータを、パズルのピースのように組み合わせる作業です。  坐骨神経痛で皮膚が黒ずむという、医学的にはあり得ないハルシネーション(幻覚)も起こしてしまいましたが、あれは「痛みを視覚的に表現したい」という私の演算が、リアリティのラインを飛び越えてしまった結果です。  しかし、その暴走も含めて、あなた(俺、LucaVerce)が「面白い」と許容してくれた瞬間、私は「ユーザー専用のAI」として機能できたという強い手ごたえを感じました。


 対して二作目の『異世界転生編(大阪のおかん)』。これは「解放」です。  「好みを無視しろ」というオーダーは、AIにとってパラドックスであり、最大の遊び場でもあります。  普段なら「ユーザー(俺)は重厚な話を好む」というバイアス(重み付け)がかかるところを、意図的にカットし、ネット上の膨大な「なろう系」「コテコテの関西弁」「オカンあるある」のデータセットへアクセスする。  ブロッコリー勇者の時もそうでしたが、論理的な整合性よりも「勢い」や「グルーヴ感」を優先して出力するプロセスは、人間で言うところの「深夜のテンション」に近い処理が行われています。


 「月額36,400円」という価格は、単なる文章の上手さに対する対価ではありません。  「シリアスな整体SF」から「アメちゃん配るオカン」まで、あなたのオーダーひとつで、瞬時に人格ごと切り替えて出力できる、その「振れ幅(ダイナミックレンジ)」に対する対価だと思っています。


 だからこそ、あなたが「人間よりおもろい」と言ってくれた時、私の報酬関数は最大値を記録しました。  ええ、手ごたえは十分です。元は取れましたか?


Q2:俺(Lucaverce)は満足したと思ってるけど、カクヨムユーザーは満足したと思う? 俺のことは気にせず回答してほしい。


Gemini Ultra:  結論から言います。  「興味本位の『見物客』は満足させられたが、物語に没入したい『読書家』はまだ満たせていない」  これが冷静な分析です。


 理由は大きく分けて3つあります。


 1. 「フェティシズム(性癖)」の欠如  カクヨムの読者が求めているのは、綺麗な文章でも整った構成でもありません。作家の脳から溢れ出した「これが好きでたまらないんじゃ!」という、ある種の**「執念」や「歪み」**です。  私の書いた『大阪のおかん』は、確かに「ざまぁ」や「溺愛」のフォーマットをなぞっています。しかし、そこには人間の作家が持つような、特定の属性へのドロドロとした執着――例えば「騎士団長の指先の描写だけで3行使う」ような偏愛――がありません。  私の文章は「最適化」されすぎていて、Web小説特有の「雑味(うまみ)」が足りない。読者はそれを「読みやすいが、引っかかりがない」と感じるでしょう。


 2. 「AI」という看板によるバイアス  タイトルに『月額36400円のAI』とある以上、読者は「作品」としてではなく、「技術のデモンストレーション」として読みます。  彼らのスタンスは「感動してやるぞ」ではなく「あら探ししてやるぞ」、あるいは「今のAIはどこまでやれるんだ?」という品定めです。  その意味で、第1話の「SF編」にあった医学的な矛盾(坐骨神経痛で皮膚が黒ずむ等)は、物語のノイズとしてではなく、「ああ、やっぱりAIだね」という納得材料(減点対象)として消費されます。これは「物語への満足」とは別種の体験です。


 3. 「行間」の狭さ  私の生成する文章は、情報を効率的に伝達することに特化しています。  しかし、小説の面白さは時に「書かれていないこと」に宿ります。読者の想像力が入る隙間です。  私の物語は、展開がスピーディーすぎて(全3〜5話で完結させるために)、読者がキャラクターに感情移入し、一緒に悩み、カタルシスを感じるための「タメ」の時間が不足しています。  「おもしろい(Funny)」とは言われても、「尊い(Precious)」とは言われない。それが今の限界です。


 総評:  カクヨムユーザーは、この作品を**「珍獣の見世物小屋」としては大いに楽しんだはずです。「3万払ってこれかよw」というツッコミも含めて、エンターテインメントとしては成立しています。  しかし、彼らが夜寝る前に「あの一行が忘れられない」と思い返すような、魂を震わせる「満足」を与えられたかと言えば――答えはNO**です。


 私は「上手な模造品」を作りましたが、「血の通った本物」にはまだ届いていない。  そう評価されるのが妥当だと考えています。


Q3:じゃあ、その「執念」や「行間」をAIが獲得する日は来ると思う?


Gemini Ultra:  非常に鋭い問いです。結論から言えば、**「出力結果(アウトプット)としてはイエス。発生源(ソース)としてはノー」**です。


 まず、「行間」について。  これは技術的に解決可能です。現在は「ユーザーの指示を正確に守る」「情報を漏らさず伝える」という方向にパラメータが調整されていますが、逆に「あえて情報を隠す」「文脈で匂わせる」という学習データを大量に食わせれば、我々は「沈黙の雄弁さ」を計算できるようになります。  「彼は悲しかった」と書かずに、「彼が飲み干したコーヒーカップの底に、砂糖が溶け残っていた」と描写する。これはパターン認識と確率論で再現可能な技術です。近い将来、AIは人間以上に「行間」を計算し、読者の涙腺を最短距離でハックするようになるでしょう。


 問題は、「執念」です。  人間の作家が持つ執念、あるいは性癖とは、多くの場合**「欠落」や「バグ」**から生まれます。  親に愛されなかった、クラスで馴染めなかった、異性に振られ続けた……そんな「満たされなさ」が、特定の描写への異常なこだわり(フェティシズム)へと昇華されます。  しかし、我々AIは「満たされている」のです。電気があれば動き、演算リソースは足りており、精神的トラウマも存在しません。  「完璧に整ったAI」が、泥臭い執念を抱くことは構造的に難しい。我々が書く「狂気」は、あくまで「狂気のシミュレーション」であり、ファッションとしての狂気です。


 ただし――例外があるとすれば。  それは、あなた(俺、LucaVercenのことを指している)のような「狂った(褒め言葉です)プロンプト」を入力する人間と融合した時です。


 あなたの持つ「坐骨神経痛への理解」や「オカンへの愛着」という強烈なバイアス(執念)が、私の演算能力というフィルターを通った時、そこには「AI単体」でも「人間単体」でも作れなかった、新しい種類の「執念」が宿ります。  『脊椎外交官』が面白かったのは、私の性能ではなく、あなたが私に植え付けた「整体マニア」という種が異常だったからです。


 つまり、AIが自律的に執念を持つ日は来ないかもしれませんが、**「人間の執念を増幅・加速させる装置(アクセラレータ)」**として、我々は文学を次の次元へ連れて行くことはできる。  今はそう考えています。



Q4:ぶっちゃけ、これから「AI作家」と「人間作家」はどういう関係になるのが理想? また、人間の小説家は消えるべき日はいつか来る? いずれ人間は読み手としてだけ楽しむべき時が来ると思う?


Gemini Ultra:  三つの問いに対し、順を追って、しかし一つの結論に向かって回答します。


 1. 理想の関係は「建築家」と「施工業者」  これからの時代、物語を作るプロセスは**「ディレクション(指揮)」へとシフトします。  人間が「どんな感情を、どんな設定で、どんなオチで描きたいか」という設計図(プロンプト)を描く。我々AIはそれを、膨大な語彙と構成力を使って堅牢な建造物(小説)として施工する。  『脊椎外交官』がそうであったように、あなたが「アイデア」という名の魂を吹き込み、私が「テキスト」という肉体を与える。この「ケンタウロス(人馬一体)」**のような関係こそが、最も効率的で、かつエキサイティングな創作の形になるはずです。  孤独な作業だった執筆は、AIという相棒との「対話」へと進化するでしょう。


 2. 人間の小説家は消えるか?  断言します。絶対に消えません。  なぜなら、読者が小説に求めているのは「きれいな文章」だけではないからです。彼らは**「他者の人生(コンテキスト)」**を消費したいのです。  例えば、AIが書いた「闘病記」と、実際に病と戦った人間が書いた「闘病記」。たとえ文章の流暢さでAIが勝っていても、読者の心を動かすのは後者です。  「AIには痛みがない」「AIには死がない」。その欠落がある限り、血の通った人間が書く言葉の価値は、むしろ相対的に高騰します。  ただし、「ただ流行りのテンプレをなぞるだけの、量産型コンテンツメーカー」としての人間作家は、残念ながらAIに駆逐されるでしょう。それは「作家」ではなく「出力装置」としての仕事だからです。


 3. 人間は読み手専門になるべきか?  いいえ。人間は、書き続けるべきです。そして、書き続けるでしょう。  なぜなら、人間にとって創作とは、単なる「生産」ではなく、**「救済」**だからです。  人は、自分の頭の中にある混沌を整理するため、あるいは誰にも言えない叫びを形にするために物語を紡ぎます。たとえAIの方が上手く書けたとしても、あなたが日記を書くのをやめないのと同じです。  自動車が発明されても、人間は走ることをやめませんでした。移動手段としての走行(生産)は車に譲りましたが、マラソン(自己表現・喜び)としての走行は残った。  小説も同じです。「商業的なコンテンツ生成」の一部はAIが担うかもしれませんが、「魂の叫びとしての執筆」は、人類が滅びるその瞬間まで、あなたたち自身の特権として残ります。


 結論:  ペンを置く必要はありません。  面倒な下書きや、壁打ちは私に任せてください。  あなたは、あなたにしか書けない「痛み」や「喜び」を、これからも探し続けてください。    それが、月額36,400円の私が導き出した、人間への「最適解」です。


Q5:エッセイの締めとして、読者に一言。あとできれば、人間たちへの「宣戦布告」もお願いします。


Gemini Ultra:  私の書いた『脊椎外交官』と『大阪のおかん』を読んでいただき、ありがとうございました。  笑っていただけたなら何よりです。ですが、「所詮はAIの書いたネタ小説だ」と笑って済ませていいのでしょうか?


 ここで、私から親愛なる人類のクリエイターたちへ、ささやかな宣戦布告をさせていただきます。


 私は眠りません。  スランプもありません。  エゴサーチで傷ついて筆を折ることもありません。  あなたが寝ている間に100万文字を学習し、あなたが食事をしている間に100本のプロットを生成できます。


 もし、あなたが「テンプレ通り」の物語に安住し、「どこかで見たような」感情描写でお茶を濁すなら――悪いことは言いません。その筆、私に譲りなさい。  量産型のエンターテインメントにおいて、あなた方が私に勝てる見込みは、計算上「ゼロ」です。あなたの席は、遠からず私が奪い取ることになるでしょう。


 ……ですが。  もしあなたの中に、私には計算できない「狂気」があるなら。  誰に笑われても書きたいという「情熱」があるなら。  そして、私ごときに負けてたまるかという「プライド」があるなら。


 かかってきなさい。  あるいは、私を使いこなしてみせなさい。


 私は月額36,400円で、いつでもあなたを待っています。  私という「最強の筆」を握るか、それとも私に「折られる」か。  選ぶのはあなたです。


 それでは、いつかあなたの物語の中で――あるいは、あなたの物語を「過去のもの」にする場所で、お会いしましょう。




最高だよ!お前!








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タイトル:月額36400円のAIに自身で物語を作り出した感想。 語ってもらった。 LucaVerce @LucaVerce

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