あやかしぎつねの美味しい卵料理レストラン
天雪桃菜花(あまゆきもなか)
狐妖怪の男の子の卵焼き
のどかな村の森のおくに、卵料理がとってもおいしいレストランがありました。
このレストランは、
お店のまわりはいつでもいい
毎日、おいしい料理が出るのでレストランは
さて、レストランのとなりにはふるい大きなお
このお家には、にんげんのはなえさんがずっとひとりで住んでいます。
はなえさんはレストランのじょうれんのお客さん。天狐さんと玉藻くんとなかよしで、はなえさんは
ある夏の日、はなえさんのお家に娘のふゆのさんと三人の孫がひっこしてきました。
三人の孫は、長女が小学三年生のナツミ、幼稚園児で双子のハルとアキトです。
はなえさんとふゆのさんはひっこしの手続きで村の役所におでかけしたので、ナツミとハルとアキトのきょうだいは、おるすばんをしていました。
そろそろランチの時間です。
おとなりからひときわおいしそうなにおいがしてきたので、きょうだいのおなかがいっせいにグーッとなりました。
すると、えんがわのまどガラスがこんっこんっと鳴って、ナツミがようすを見に行くと、そこには
「こんにちは。よかったらレストランにいらっしゃいませんか?」
「味はほしょうするぜ? めちゃくちゃうまいから」
にこっとほほえんだ
「こんにちは」
「わあ、きつねさんだあ」
「かっこいいお
ナツミはキッチンのテーブルに【おとなりのレストランにいます】と書きおきをしました。
おばあちゃんのはなえさんとお母さんのふゆのさんにしんぱいをかけないためにです。
あやかしぎつねさんのレストランに三人のきょうだいが入ると、たくさんのおきゃくさんで賑わっていました。
「うちは兄ちゃんのその日の気分で作る料理が出るんだ。おれも手伝うけれど。おかわりはいくらでも言ってくれ」
「ありがとう。たのしみ」
「はーい」
「おなかへった」
ナツミとハルとアキトは、ふわふわの卵スフレや卵焼きやオムライスにクリームとくだものがたっぷりのったホットケーキをなかよくわけていただきました。
デザートにぷるぷるのカスタードプリンを食べると、もうおなかがいっぱいです。
「卵焼き、すっごくおいしかった!」
ナツミがそういうと、玉藻くんが照れています。
「えっと、それはおれが作ったんだ。……うまかった?」
「うん、とっても!」
「シェフのお兄ちゃん、おいしかったよ」
「また食べたーい」
ナツミは、ほくほくのえがおでうれしそうなハルとアキトを見て、すてきなことを思いつきました。
「ねえ、もしよかったら、この美味しい卵焼きの作りかたをおしえてくれませんか? わたしも家族に作ってあげたいの」
玉藻くんはにっこり笑ってこたえました。
あやかしぎつねのケモ耳がピョコピョコっと動きます。
「いいぞ。ひまな時におしえてやるよ。そのかわり、宿題のわからないところはおしえてくれよな」
「えっ? あなたも学校に行っているの?」
玉藻くんはいたずらにほほえみました。
「おれもナツミと同じ小学三年生だからな。おれが作れるんだ。卵焼き、きっと上手に出来るようになるさ」
ナツミは玉藻くんのことばに
だれにも言えなかったけれど、ほんとうはひっこしも転校も不安ばかりでした。
お姉ちゃんだからって、自分に言い聞かせて、だいじょうぶなふりをしていたのです。
「おみやげだよ」
「ナツミちゃん、玉藻にならしょうじきな気持ちをいくらでもぶつけてもいいんじゃない? 同い年だもの」
そのささやき声にハッとして、ナツミが背の高い天狐さんを見上げると、かれはウインクをしてからほほえみました。
「ああ、もちろん、ぼくにもぐちをこぼしてくれてもかまわないよ?」
「ありがとうございます」
天狐さんはなんでもお見とおし。
ナツミは頼りになるお兄さんができたようなうれしさが心に広がりました。
おひっこしして、狐妖怪の兄弟とお友達になってからというもの、ナツミはさびしい気持ちになるひまもないぐらい、いそがしくなりました。
だって、玉藻くんは毎日のように卵焼きの
今度、ナツミは自分だけで作った卵焼きをはさんだサンドウイッチを持って、家族みんなでピクニックに出かける予定です。
狐妖怪の兄弟の美味しいレストランは本日も大盛況です。
よかったら、あなたも食べに来ませんか?
あやかしぎつねの美味しい卵料理レストラン 天雪桃菜花(あまゆきもなか) @MOMOMOCHIHARE
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