路上占い、あれこれ160【占い師は寄り添う】

崔 梨遙(再)

初めてスマホで書いた2075文字です

 夜のミナミで路上占いをしていた時、立花さんという50代後半&ハゲ&デブ&ロリコン&処女狂い&中途半端にお金持ちの常連客がいました。立花さんは度々中学3年生、中学1年生、更に小学6年生を連れてきては僕を驚かせてくれました。幸い、立花さんの『やりたい』という交渉を女の子達が断ってくれたので事件(犯罪)にはなりませんでした。ですが女の子達は路上占いをしている僕のまわりに集まるようになり、女の子達は仲良くなりました。そして僕が帰った後で女の子達を引き連れてカラオケに行こうとした立花さんは、警察官に職務質問をされたということでした。幸い、女の子達は無事に逃げ切れたらしいです。


『いやぁ、まいったわ』

『何がまいったんですか?』

『警察官の職務質問や! 俺、派出所まで連れていかれたんやで』

『ほうほう、それは大変でしたね。ですが夜中に女子中学生を何人も引き連れていたら職務質問されますよ。その覚悟も無かったんですか?』

『なんで女の子達と遊ぶのに、いちいち覚悟が必要やねん?』

『で、職務質問って、どんな感じなんですか?』

『連れてた女の子達について聞かれたわ』

『それで、なんて答えたんですか?』

『知らんって答えたわ。だって、名前しか知らんもん、嘘とちゃうやろ? なのに、「知らんわけないやろ?」って言われた。腹立つわぁ、俺、あの子達がどこの学校かも知らんのに』

『それで終わったんですか?』

『いやいや、携帯チェックされたで。一応、任意らしいけど、見せんかったら余計に疑われそうやからなぁ、見せるしかないやろ?』

『それで?』

『女の子の名前で登録してる分は全部確認されたわ、全部「キャバ嬢」って答えたわ。実際、みんなキャバ嬢やし。千春ちゃんだけは女子大生って答えたけど』

『良かったですね、女の子達と連絡先の交換をするほど親しくなくて』

『良くないわ! 崔さん、笑いすぎやで』

『すみません、占っていただけますか?』


 凛とした感じが好感度をアップさせてくれる、素敵な女性でした。多分、40歳くらい。着ている服も高価では無さそうでしたが清潔感と気品がありました。顔もスタイルも良く、背も高かったです。


『立花さん、占いますので少し離れてください』

『なんやねん、ええやんか。毎回毎回離れるのも面倒くさいんやで』

『ダメです! デリケートな相談内容かもしれません。占い師にも守秘義務があるんです』

『わかった、わかった』

『さて、何を占いましょう?』

『この歳で恥ずかしいのですが、恋愛を占ってもらえますか?』

『はい! 勿論、占いますよ。まずは恋愛から......はい、いいですよ。日本と違って中国ではキレイな水は貴重なのですが、その貴重な水を浴びるほど飲める、貴重なものが手に入る運気です。恋愛と結婚は似て非なるものですので、結婚は結婚で占いますね……はい、最高です。大きく蓄える、貴重なものが沢山手に入る運気です。何かご質問は?』

『あの……言いにくいのですが、お金持ちの男性とご縁はありますか?』

『はい! お金持ちの可能性が高いです! 貴重なものが沢山手に入るんですから、玉の輿に乗れる運気ですよ』

『あの……私、子供の時からずっとお金の苦労をしてきまして……やっと結婚して楽が出来ると思ったら夫がギャンブルで借金をして嫌になって離婚しまして……子供が一人いるのですが、夫と夫の親に子供はとられまして……また働こうとしたら体調を崩してしまって……もう貧乏は嫌なんです! お金持ちの男性でしたら少々のことは目を瞑ります! お金持ちがいいんです! 貧乏人に用はありません』


 そこで僕は閃きました。


『あの……あちらの男性を見て、どう思いますか?』

『50代後半&ハゲ&デブ&ロリコン&処女狂いのように見えますけど』

『よくそこまで見抜けますね。でも、あのオッサン、このミナミの一等地にビルを3つも持ってるお金持ちなんですよ。家賃収入で毎晩キャバクラに行ってます』

『そうなんですか?』

『そうなんです! いかがでしょうか?』

『札束だと思えばお付き合いできます』

『50代後半であなたより結構年上ですけど』

『OKです! 早く死んでもらって遺産をいただきます』

『ハゲですけど』

『植毛させます』

『デブですけど』

『お酒や太るものを取り上げます』

『ロリコンですけど』

『大人の女の良さを教え込みます』

『処女狂いですけど』

『正気に戻します』

『わかりました、いいんですね?』

『はい、ダメなら別れます。でも、絶対にモテないから浮気の心配は無いですね』

『了解です。立花さん!』

『なんや? 終わったんか?』

『こちらの女性が立花さんと食事中に行きたいらしいです。食事に連れていってあげてください』

『え? 俺? いや、でも』

『立花さん、こちらの女性、顔もスタイルもいいと思いませんか?』

『そりゃあ、キレイやけど、俺、若い子の方が』

『まあまあ、ゆっくり食事してください』

『立花さんとおっしゃるんですか? 私、和泉加奈子と申します、よろしくお願いします』

『立花さん、和泉さん、悩み事ができたらまた来てください』

『ええ、また来ますね』



『占い師は人に寄り添うのが仕事ですから』




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路上占い、あれこれ160【占い師は寄り添う】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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