第1章 ミレンデル村編 第三話「本と魔法」

『私』がここ、ミレンデル村に生まれて、3年が経った。

そして魔法があることを知って2年が経った。


1歳になる数日前、魔法があることを理解した。

死ぬほどワクワクした。

なんとなく気付いてはいた。

ここは剣と魔法のある異世界だと。

父さんやお姉ちゃんが庭で奇怪なことをしていた。

手にも何もなかった。

それによく考えれば、ガスなんて無さそうな科学力なのに、母さんたちはちゃんと火をキッチンで使って、料理してた。

IHなんてあるわけない。

電気無さそうだし。

いや、IHなら火は出ないか。


魔法について知った日、俺は髪が金髪になり、後ろにメラメラとしたオーラを出すところだった。

○空やベ○ータみたいに。

まぁ髪は元から金髪だったけど。

そして、ある目標、いや『夢』ができた。


使えるようになること。


そう、魔法を使うという夢が。

ちゃんと達成した。

最初の夢が叶った。

そう、これでええんや。

こうやってちっちゃくてもいい。

小さい夢でもええんや。

たとえアリんこサイズでも。

叶えよう。

そして次を作ろう。

俺が、私が死ぬ時まで。


――


家に置いてあった本を読み漁った。

もっとも初めは母さんや執事のルスヴァフさんに読み聞かせてもらう感じだったけど。

文字が読めないからな。

キランッなんつって。

この体はホンマに覚えがええ。

高階浩也の比ではない。

俺も元々覚えは良かったけど、生まれた時点で自我があるにしても、齢半年で日常会話を理解したり、1歳ちょっとで文字も読めるようになるなんて。

俺ってば天才。

知識チートも夢じゃないな。

(キラッという音)

元からこの世界でも社会常識以外の知識はあるわけだし。

社会常識がないのは致命的だが、覚えればええ。

一応、京大生やし。

いや、無理か。

ただ受験勉強しただけやし。

銃火器の作り方とかそんな大層なもんわかんねえ。

まぁ火炎放射器はなかったっぽいが…。

あとはなんだ?

現代のもので役立つものかあ。

分かるのなんて何を言いたいんか分からん数学とか、絶対に使えないであろう英語とかそれぐらいか…。

学歴って結局、就職ぐらいしか効力がないんやな。

化学は試験薬とかないと物質が見分けれんしな。

物理は・・・いつでも使えるけど、いつでもいらないな。

地歴はそんな分からんしなぁ。

やっぱり学歴ってなんの意味もねえな。

というより、学校の勉強って意味ねえな。


ーー


多くの本があった。

面白いバトル小説とか〇〇さんの冒険譚とか色々あったがそれはいい。

文字を覚えるのに役立ったぐらいやな。

いっぱい読み聞かせられたからなんとなく話を覚えてしまった。

最近は飽き飽きしている。

本は他にはないのだろうか。


『世界旅』

世界地図らしきものもあった。

ちなみにここはオルグニア大陸のポルトゥレ連邦北西部にあるポルトゥレ連邦という国の村らしい。

ちょっと前に会話に挑戦がてら母さんに聞いてみた。

そしたらある程度喋れたらしく、教えてくれた。

地図上ではオルグニア大陸は西部にある大陸で、中央に巨大な山脈がある。

日本での世界地図で言うと、スペインやフランスのあたりやな、多分、知らんけど。

小麦や野菜などが有名らしい。

酪農もやっているとか。


この本には地理や動植物の分布などが書いてあった。

そういえば高校の地理の教科書こんな感じだったけな。

懐かしい。


――


俺の目を最も輝かせたのは

『魔級、魔段』

基礎の魔法についてよく書いてある本。

ほんとは魔法教本みたいなのがあれば楽だったかがないものはない。

まぁ基本情報は手に入れられたから良しとしよう。

これには多くの魔法が載っていた。

本にはこう書いてあった。


1.魔法は大きく二つある。

召喚魔法、補助魔法

召喚魔法には木 炎 水 土の四つ

補助魔法には音 解毒の二つ

音には楽器を使うやつと歌があるらしい。


2.階級は下から

―級、―段、―将、―帥、―王、―帝、―神

の7段階

ーには属性が入る。


3.級以下の魔法もあり、生活魔法と呼ばれる。

ほとんどの人が使える。


4.基本的に階級が上がるのはどれほど応用ができるかということ

炎級なら火の玉など形を決めたものを発射する魔法。

炎段なら継続して火を出し続ける魔法。

炎将なら継続して出しつつ、さらに変化を加える魔法。

と言うような感じだ。


つまり父さんは少なくとも炎段はある。

ちなみに一発でも出せたら級にはなれるらしい。

だから、姉さんはもう炎級だ。

火の玉は火の玉でも、大きくすればそれだけで階級が上がるらしい。

意外と簡単そうだな。

ただテンプレのはずの回復魔法は無さそうだ。

簡単に傷が治ったり、切れた腕が再生したりしないのか。

それは残念だ。

もしかしたら音魔法というやつがそうなのかもしれんが…。

書いてないものはわからない。

とりあえず置いておこう。


――


本には魔法を使うには魔力的なものが必要だと書いてあった。

それは魔法を使うたび増えていくらしい。

つまり努力すればするほど伸びるってことか。

じゃあ努力しよう。

本当の意味での努力を。

『夢』を叶えるために。


地球では、よく

「高階、ちゃんと努力してるな。」

とか、

「浩也は努力の天才だ。」

とか、言われた。

でも、俺が努力を本当にしたのは高校2.、3年だけだ。

俺は本当に努力するのが嫌いだった。

勉強は努力なんてせずにほとんどできた。

授業さえ受ければそれで理解できた。

それに、運動も水泳以外なら平均ぐらいは最初からできた。

まぁ中学のサッカー部では試合にはほとんど出れなかったけど。

たった15人のチームだったのに。

努力したのなんてあっただろうか。

なかったかもしれない。

サッカーぐらいは努力した方が良かったかも…。

今更だな。


とりあえず簡単そうなやつからやってみるか。

姉さんの様子を見るにそんな簡単じゃないかもしれんけど。

火はダメだな。

木製の家だし、燃えたら困る。

となると水か、木かな。

家の中が泥だらけ、砂だらけになるのも困るからな。

音魔法と解毒魔法に関しては分からん。

本に載ってはなかった。


後片付けが楽そうな木にしよう。

本に目をやる。

ペラペラとめくり、木の魔法を探す。

木級ってやつが一番簡単なはずだ。

やってみよう。


『トゥウィックシュート』

木の枝を召喚し、発射する魔法。

詠唱:「汝の求るところに蒼翠の末端を与へよ。トゥウィックシュート」


とある。

説明を見る感じ木の枝を召喚するものらしい。

発射する的なことも書いてある。

とりあえずやってみよお、おおおおー。

やってみよー、やってみよー、やってみよー、やってみよー、ててぇん。♪

詠唱ってのを読めばええんやろうか。

俺は本を広げつつ、壁に手を向ける。


「汝の求るところに蒼翠の末端を与へよ。トゥウィックシュート!」


掌から何かが出ていくような感覚がある。

魔力というやつか。

それに続いて、木の枝が形成されていく。

俺の思ったままの木の枝が掌の前で完成される。

完成したと同時に下へと落ちた。

パキッという音と共に折れた枝がそこにあった。

枝葉末節なんて言葉はあるが今は枝のほうが木全体なんかよりよっぽど大切やな。

木を見て枝を見ずってか。

おもんな、俺。


俺がおもんないことは置いといて、枝を作ることはできた。

けど、本に書いてあったように発射はできなかった。

なんでやろ。

理由なんてわからない。

この本にはヘルプセンターはないし、質問板もない。

試行錯誤するしかない。

でもまだ、何かを質問できるほどちゃんとは喋れないしなぁ。

めんど…いやこれじゃ前と変わらない。

努力だ。努力。

試行錯誤=努力だ。

努力して生きるって決めたんやから。

努力しよう。

基礎こそ努力で身につけないとあかんねや。


何度か試してみるか。

枝を発射するイメージをして、集中する。

魔法をもう一度唱える。


「汝の求るところに生命の一端を与へよ。トゥウィックシュート(木枝)!」


さっきと同じように何かが掌から出ていく。

木の枝が産生される。

さらに飛ばすイメージを厚くする。

全身の力を掌に集中させる。

なんかいける気がする。


「はあああ、発射!」


俺の声に呼応するように枝は、飛んだ。

そして、壁に当たり、折れた。

パキッといい音がする。

さっきとは何か違うような。

そんな感じがする…。

ダメだ、疲労感が半端ねえ。

でもこれだけは言いたい。


「なんも言えねぇ。」


俺はそう呟くと、その場にへたり込んだ。

あのル○ィのように。


――


いつ間にか寝ていたらしい。

目が覚めた。

見慣れない天井でもないし、病院でももちろんない。

ただ、全身の疲労感はある。

病院に行ったほうがいいかもしれないな。

嘘だけど。

体を鍛えたほうがいいかもな。

早すぎるか。

まだ3歳だしな。

筋肉つけると背が伸びないって言うし。

やめておこう。

スポーツぐらいするか?

3歳からならプロも夢じゃないな。

この世界にそういうものがあるのかすら知らんけど。

ないんやったら、眉目秀麗、質実剛健、古今無双そんな言葉が最適な人になってやる。

女だから良妻賢母になってもいいな。

嘘だよ。

もちろんこんな高望みはしない。

ってさっきから偽辞が多いな。

でも本当に真面目に生きてみよう。

俺が俺自身が本心で真面目に生きていると思えるほどに。


よし、今日も特訓を始めるか。

魔力もなかなか増えてきた。

初めの方は数回魔法を使ったら、気絶してたな。

なんだか懐かしい。

たった2年前なのにな。

いや、3年ぐらいしかまだ生きてないんだが。

どれぐらい増えたのだろうか。

気絶することも最近はない。

今までは家の中でできる木級をやってきた。

水や炎や岩はやったことがないんだが、どうなんだろうか。

そろそろやってみるか。

この玄寥な草原が揺れる間に。

冬になってからだと大変そうだからな。

よく考えればここの気候は東部北海道に似てる。

冬は真っ白の絨毯が、夏は新緑の絨毯が広がっている。

秋には紅葉も広がる。

そして、梅雨はない。

なんて最高な気候なんだ。

って寄り道をしてしまった。

始めよう。


今日はなんとなく記念日ということにして、新しい魔法を使ってみよう。

あの本には魔段までが載っている。

使ってみよう。


木段

・デクスターシェル(木壁)

鳥の巣のような木の枝を組み合わせた盾を作る。

・ウィップバイン(蔓鞭)

蔓を生み出し、攻撃する。


なんだか普通に木段も使えてしまった。

ただ、いつもみたいに無詠唱では無理やった。

俺は枝作りをする時いつも黙ってやっている。

なぜかは知らんがいつの間にか出来るようになった。

普通、無詠唱って上級スキルやろ。

こんな簡単にできてええんか?

まぁ楽でええが…。


それにしても簡単に使えてしまった。

木段の魔法は消費魔力が多い気がするけど、でもそれだけだ。

実はあんまり強くないのか?

魔段ぐらいまでは使えて普通とか?

父さんは炎段はあるしな。

でもお姉ちゃんは炎級になってから全然上がる気配がないぞ?

まぁ、正確には測れないけど。

特に基準とかないしな。

それこそ姉さんがやってたファイヤーボール(炎球)も太陽サイズにすれば、炎神だろう。

そんなもの作り出したら、その人も焼き焦げるやろうけど。

もう2年が経ったのに上がってないのは、才能の問題か?

俺ってば天才。

なんつって。


次は水をやってみよう。

楽しいことはやっぱり続くよな。

ええ感じや。


水級

・ウォーターエリア(水溜)

場を水浸しにする。

・アクアショット(水球)

水の玉を作り発射する。


水段

・ウォーターガード(水守)

目の前に水を展開し、攻撃の勢いを吸収する。

・アイスランス(氷槍)

槍状の氷を作り攻撃する。


適当にやってみた。


うん、俺はアホだ。

なんで木魔法をずっと使ってたのかをもう忘れたらしい。

部屋がビッチョビチョになってもうた。

どうしたものか。

よし、逃げよう。

逃げるは恥だが役に立つらしいからな。


俺は歩いてリビングに向かう。

魔力も無くなってきたからちょうどいいか。

ちょっとやりすぎたぐらいだ。

まぁそれは嘘だが、ある程度使ったのでいいだろう。

これからは月に数日使える魔法を増やす練習をしよう。

湖を見つけた母さんの驚愕交怒の表情を横目に俺はあることを考えていた。


次の夢はどうしようか。

魔法は使えるようになったと言っていいやろう。

うーむ・・・。

まぁええか。

いつか見つかるやろ。

とりあえずまだ「魔法を使うこと」を目標としておこう。

いや、ダメだ。

これじゃ今までとなんら変わらない。

せめて「上手に使うこと」にしておこう。

明日は外に出てやってみよう。

父さんとかにバレるかもしれないけどしょうがない。

怒られはしないだろう。

ゆうても3歳だからな。

いや、3歳は外に出ちゃダメか?

いや、知らんな。

明日は外でやるんだ。

とゆうか褒められるかもな。

みんな、過保護だし。

母さん、可愛いし。

ってなんの話だよ。

まぁ、いきなり魔法使い始めたら、瞠目するだろう。

とりあえず、炎と岩をやりたいな。


ーー


「いただきます。」


今日の夕飯はまさかのカレーだ。

うん、うまい。

そして、甘い。

辛党の俺にとっては甘過ぎるな。

体は変わっても味覚は変わらんのか。

まぁでも甘口は置いといても、流石に俺がルーで作ったカレーの方がうまいな。

食品会社すげー。

さすが食大国、日本。

科学技術の差もあるだろうけど食品会社様様だな。


「わたくし妊娠致しました。」

「そうなのか!」

「おめでとうございます、ダズタン様、アンヘラ様。」

「やったー。男の子かな?女の子かな?わたしは女の子がいいな。」

「どうだろうねえ。」

「俺、ゔんん。私は弟がええな。」

「わかりませんね、どちらでも喜ばしいことには違いないですね。」

「そうですわね。」

「俺は男がいいな。跡取り息子だな。」


そんな会話をしながら、俺たち家族は飯を食った。

俺が生まれて3年、姉さんが確か今5歳。

やるな、この夫婦。

まぁ毎日のようにヤってるわりには少ないぐらいか。

もっと生まれててもおかしくはないもんな。

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