世界ランク12位のわたし、、、なんで脅されてるの?!
@KOKOQ
第1話「……遅れてすみません」
世界中には、点在する「ダンジョン」が存在している。
それらは突如として現れ、人類の生活圏と重なり合うように根を張った。
結果として、この世界には――普通の社会の“上”に、冒険者たちが活躍するもう一つの社会が重なっている。
魔法使い、剣士、格闘家、槍使い、弓使いetc.........
かつては物語の中だけの存在だった職業は、今や日常の延長として当たり前に受け入れられている。
小学生の「なりたい職業ランキング」で冒険者が一位を取り続けるのも、もはや珍しくない。雑誌の一枚絵を飾るのはかっこよさやセクシーなど以外にもダンジョンの魅力を
伝える雑誌が棚に並ぶのも珍しくない。
冒険者の攻略映像や日常を切り取った配信は絶大な人気を誇り、命の危険と隣り合わせであるにもかかわらず、中層まで到達できれば年収一〇〇〇万を超える――そんな夢のある職業でもあった。
冒険者は、その実力によって支給されたデバイスによって順位がを知ることができ
その総人口は、世界でおよそ一億人のプレイヤーが日々モンスターを殺し生計を立てている。
そんな途方もない母数の中から、S級の上澄み。わずか100人のプレイヤーを『魔境』そう呼ぶ。その100人に招待されるある特別な場所がある。
――天空の
雲の上に浮かぶその城には、最先端の魔法施設、希少アイテム、世界中の情報が集まる図書館など、冒険者にとって夢のような環境が整っている。
ランキング上位者には専用のパスが与えられ、それを持つ者はいつでも自由に出入りできる。
アランティアは拠点であり、強者のみが使える至高の地。それが天空の
『ピピピピっっっ!!........ピピピピっっっ!1.......ピピピピっっっ!1......ピピピピっっっ!11』
「えっと、今の時間は……って、ヤバイ!!」
宙に浮かぶ山吹色の星型に視線を落とした瞬間、思わず声が裏返る。
長い針はちょうど十五、短い針は八を指していた。
「ここに長居しすぎた……!」
アランティアのふわふわソファでだらけていたツケが、今まさに回ってきた形だ。
「たしか、ワープ先は……私の家、だよね」
半ば反射的に詠唱する。
「【Teleport】」
視界が一瞬、白い光に包まれ、足元の感覚が消える。
次の瞬間には、見慣れた自室の床がそこにあった。
「……よし。このままだと普通に遅刻だよね」
制服に手早く袖を通しながら、ため息が漏れる。
「二年生最初の日で遅刻は……さすがに印象悪いよね」
自分に言い聞かせるように呟き、玄関のドアを勢いよく開ける。
靴を履き直すのももどかしく、地面を蹴るようにして走り出した。
「はぁ……はぁ……っ!」
校門をくぐった時点で、肺が悲鳴を上げていた。
肩が上下に揺れ、呼吸のたびに空気を無理やり吸い込む。
「……結局、遅れた……」
下駄箱に貼られたクラス表で自分の教室を確認し、そのまま廊下を進む。
一組、二組、三組――三つの教室が横並びに続く中、
廊下に立っているのは、なぜか私ひとりだけだった。
静まり返った空間。
自分の足音だけがやけに大きく響く。
教室の扉の前に立つと、小さな窓越しに中の様子が見えた。
新しい担任らしい先生が、黒板と生徒の顔を交互に見ながら話している。
その声だけが、扉を通してはっきりと聞こえてきた。
「……どーしよ、もう」
今さら戻るわけにもいかない。
覚悟を決めて扉を開ける――その未来を想像した瞬間。
教室の中、窓際の席。
清楚なロングヘアの女子が、こちらに気づいて口元を押さえ、くすっと小さく笑った。
……あ、見られてる。
一気に顔が熱くなるのを感じながら、私は深呼吸をひとつした。
扉に手をかけた瞬間、教室の中の空気が一段、はっきりと伝わってきた。
話し声、椅子のきしむ音、興味本位の目線――それらが、不自然なほど一斉に止まる。
……あ、これ完全に注目されてるやつだ。
意を決して扉を開けると、教室中の視線が一斉にこちらを向いた。
ざわり、と小さな波が立つ。
「……遅れてすみません」
声が思ったよりも教室に響いて、自分で少し驚く。
黒板の前に立っていた先生が、こちらを見て一瞬だけ目を丸くしたあと、すぐににこっと笑った。
「はいはい、大丈夫ですよ。新学期ですしね」
軽い口調でそう言うと、名簿に目を落とす。
「えーっと……あかつきさん、ですね?」
「はい」
みんなの視線が私に集まっているのがわかる
「席は、窓側の一番後ろが空いてます。どうぞ」
思ったよりずっと優しい対応に、内心ほっとしながら会釈をして教室の中へ入る。
視線が背中に突き刺さる感じがして、歩幅が少しだけぎこちなくなる。
――あ、あそこだ。
窓際、後ろから二番目の席。
そこに座っていたのは、さっき扉越しに目が合った、清楚なロングヘアの女の子だった。
ドアのところで見たときはわからなかったが今読んでいる本のページを抑えて少し体を傾けていた。
私が席に近づくと、彼女は少し身を引いて、くすっと小さく笑う。
「……ギリギリ、でしたね」
小声でそう言われて、思わず苦笑いが漏れる。
「完全にアウトでした」
彼女なりの気遣いなのか面白さを狙ったものなのかとっさに出た言葉がこれでよかったのか戸惑いつつも、彼女はその回答に何か言いたげな様子だった。
椅子に座ると、まだ少し息が整っていないのが自分でもわかる。
胸が上下して、心臓の音がやけに大きい。
「朝、弱いんですか?」
「……ちょっと、寝坊しちゃって」
「へぇ」
彼女は面白そうに目を細める。
(なんだろうこの人ちょっと怖い)
「私、白峰(しらみね)。よろしくね」
「あ、あかつきエリカです。よろしく」
軽く会釈を交わす。
それだけのやり取りなのに、妙に気楽だった。
先生が黒板に向き直り、改めて自己紹介を始める。
新しい担任、新しいクラス、新しい一年――
教室はすぐに、いつもの「学校の空気」に戻っていった。
私は机の上に手を置いて、そっと息を整える。
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