第8話
巨大な高炉から立ち上る煙と、なめし革の独特な香りに包まれた街、フェルゼン・ハフト。
一行はまず冒険者ギルドへと向かい、昨夜手に入れたフリューゲル・ハストの嘴と爪、そして道中で仕留めた魔物の素材を差し出しました。
「……こりゃ驚いた、本物のフリューゲル・ハストの嘴だ。しかもこの保存状態……金貨2枚と銀貨20枚でどうだい?」
鑑定士の言葉に、バハルとアルベローゼが歓声を上げました。
潤った懐を手に、一行は装備を新調するために鍛冶通りへと繰り出します。
「おっちゃん! この街で一番頑丈な盾と、重い一撃に耐えられる斧をくれ!」
バハルは、シュライムに溶かされた古い盾を惜しげもなく捨て、ドワーフの細工が施された重厚な鋼鉄の盾と、黒鉄の戦斧を選びました。
「私はこれ! しなやかで折れにくい、黒樫の長弓!」
アルベローゼは、街自慢のなめし革を贅沢に使った弦を弾き、その音色に満足げに笑いました。
一方、ライナスとエリカは魔導具の店へと向かいます。
「エリカさん、これを見てください。耐火性と魔力伝導率に優れた『飛竜革(ドラッヘ・レーダー)のローブ』です。あなたの強力な炎の魔法を、より安定させてくれるでしょう」
エリカは、深紅の縁取りがされた新しいローブを羽織りました。
昨夜の殺意への恐怖が消えたわけではありませんが、新しい装備の重みが、守られているという安堵を少しだけ与えてくれました。
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