夢掌編 『顔面』
間二郎(あいだじろう)
顔面
床の四角いパネルひとつひとつが人間の顔だ。知っている人間ばかりで、皆生きている。顔が口々に物を言い、その声の群れは空間を埋め尽くし、圧迫感を覚える。
一歩踏む、一歩踏む、一歩踏むたび足裏には確かにそれが生き物である感触が伝わり、悶絶する声が判然と鼓膜に届く。
どうしても踏みたくない顔と、そうではない顔を無意識に選別していることに気付き——最愛の人である恋人の顔を力一杯に踏んづけて私はようやく正気に戻った。
夢掌編 『顔面』 間二郎(あいだじろう) @aidajiro_
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