未知なる脅威

神無月ナナメ

※長編の冒頭になる小説のリメイク版です。

 死を迎えようとする瞬間は走馬灯のように人生を振り返ると聴く。

昔から噂話で伝えられた経験談にせよ言葉の本質は一体なんだろう。


 もちろん世迷言や妄想でなければ臨死体験を記した可能性もある。

輪廻転生を経た記憶みたいに書き残された書物がなきにしも非ずだ。



 パノラマ体験? 電磁気説? 量子力学脳理論? 心理学的逃避?

 

 脳科学や宗教論からスピリチュアル現象に至るまで考察は幅広い。

オカルト的トンデモ論は置いて医学なら心脳機能的な解釈もできる。


 それが真か否かリアル体験した誰かがいるはずもなく微妙だけど。

人生の最後に追体験で回想する走馬灯は何のためにある現象なんだ。


 危機的状況で逃げるプランを経験則から編みだそうとするためか?

もしかしての話だが現時点に於ける状況と酷似した可能まで微レ存。



 結果的に初手大失策で誰かを救い英雄になりたかった訳でもない。

地方都市ターミナル駅が徒歩圏内のアパートに帰宅する途上だった。


 終電が迫る休日出勤帰り道でコンビニ目指して普段通り右折する。

道中で心惹かれる居酒屋ネオンや牛丼チェーンをスルーして早足だ。


 駅直上モール街は駐車出入庫の明かりが灯されず人波も途切れる。

コンビニの先は暗がりで女の子が男二人に絡まれる場面と遭遇した。


 お互いたたらを踏んで呆然としながらも無言で四人お見合い状態。



 いつになく冷静でファミコンRPGっぽい選択肢が脳内に現れる。

ヤンキーと遭遇から選択肢は三つ【たたかう】【にげる】【どうぐ】


 チャッチャチャッチャッチャチャチャチャチャッチャチャッチャ。

なぜか古いデジタル音源のBGMまで流れ始めて選択肢を迫られる。


 さて残念ながら最初から使えない【まほう】選択肢は表示がない。

三十歳をすぎて童貞なら魔法使いになれるアレは一種の都市伝説だ。


 人生にリセットボタンはないから復活の呪文っぽくやり直せない。


 これがラノベ主人公なら古武道の後継者とか剣の達人なんだけど。

やり直せないから結局のところ【やる】か【やらない】かの二択だ。



 それでも【にげる】選択は年長者であり男としても選びたくない。

【どうぐ】服装は仕事帰りの綿シャツに極細パンツで黒スニーカー。


 肩掛けした黒革バッグに当たり前だけど鈍器や刃物は入れてない。

スマホやタブレットと書類の重さを利用して投げるならギリ可能だ。


 残る選択肢が【たたかう】一つで縋るような目線を向けた女の子。

小顔の薄茶ソバージュに清楚なワンピース姿で十代の雰囲気がある。


 呆然として見つめるナンパ男二人も同様に驚く状況で間違いない。

チャラいナンパ男の傍ら際立つヤンキー仕様車は黒いアルファード。


 金髪ロン毛が刺繍入り白ジャージで黒ツナギは剃りこみアフロ髪。


 月夜に光る長いナイフを握った手のひらをそれぞれが振りかざす。

普通なら筋トレすらやらないインドア型で攻撃など避けようもない。


 ふと意識を向けた少女の視線に交錯するとその口唇は弧を描いた。



 通常なら迫る刃物の恐ろしさから間違いなく焦りを覚える状況で。

なぜか奇妙なことに一歩も動きだせないままで体感時間が静止する。


 男たちが刃物を振りあげる姿を認識してどちらにも踏みだせない。



 その瞬間に頭痛が起こりイリュージョンみたいに過去を振り返る。

どこか違って前より見えるし考えなくても動けることまで自覚した。


 なぜそんな考えに捉われたか意識が芽生えるのかわからないまま。

認識ごと差し変えられて心に靄がある曖昧な夢みたいな感覚だった。


 月明かりに輝く白刃のきらめきを避けようとして体は勝手に動く。

走り寄る金髪の足先を踏むのに併せてアフロに肩バッグでタックル。


 その勢い余った状態で倒れた金髪の背後から頭蓋骨を踏みつけた。

ミシりと嫌な低音が周囲に響き渡ると金髪は声もだせずに悶絶する。


 驚きで背後を振り向くと恐怖の表情を浮かべながら悶えるアフロ。

嬉々とした表情を双眸に宿しながら一心に見つめる美少女が見えた。



 アフロが起きあがり絶叫すると低姿勢でナイフを握って突進する。

格闘技やスポーツ経験が乏しくても成すべき行動として頭に浮かぶ。


 力任せの勢いだけで迫るアフロに恐怖感は微塵たりとも感じない。

やや前傾姿勢で右手のひらに持ち替えたナイフを振りかざすアフロ。


 動きをコマ送りで認識して迫るナイフに被せた左腕で叩き落とす。

溜めた右膝で脇腹を蹴り抜くとアフロ頭も金髪と同様に踏みつけた。


 男たちが意識を失うタイミングで女の子に背中から抱きつかれる。

安心感で泣き喚く女の子を慰めながら伏せる男たちに意識を向けた。


 やりすぎた感はあるが相手が生きている限りは正当防衛の範囲内。

闇夜に漂う血臭を感じて自分の行動に愕然としながら意識を失った。



終わり




追記:本編後日談(仮)



 気づけば数日経過した病院でマスコミから寵児に祀りあげられる。

男たちは国籍不詳で地元在住の素人サラリーマンが撃退した結果だ。


 謎の男たちは意識が戻らず病院のベッド上でいきなり姿が消える。

結果的にスポーツ選手じゃないし素手の会社員なことも幸いだった。


 密入国者を庇う風潮もなく正当性で過剰防衛の判断は下されない。

一般的評価で英雄扱いされた日を境に人生180度変化して終わる。


 リーマン主人公が助けた美少女ヒロインも国籍不詳のオチがつく。


 ここまで物語として起承転結に至らない序章部分で美談の幕引き。

これから恋が始まり家族になり子供も生まれ人類滅亡一直線ルート?


※昔の短編を読みやすく改稿したリメイク版で未完です申し訳ない。

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