青春時代

 

第1話

男1「最期に一つ聞いていいか? お前、なんで俺の計画に乗ったんだ? 最初は俺のこと引き止めてただろ?」


男2「どうしてだと思う?」


男1「やっぱり人を殺してみたいと思ったからか?」


男2「違う。君が僕にとってのたった一人の友達だからだよ」


男1「同じグループでつるんでる奴なら他にもいるだろ? そいつらは友達じゃないのか?」


男2「友達じゃない」


男1「事件を起こした後に言うのもアレだけど、友達なら普通は友達が悪いことをしてたら止めるものじゃないのか?」


男2「警察に通報したら、もう僕のこと友達として見てくれないでしょ?」


男1「……」


男2「それに君は事件を起こした後に自殺するつもりなんでしょ? 友達が事件の加害者として死んだあとも責められているのを見るのは耐えられないもん」


男1「友達にしては重たすぎる感情だな」


男2「保険かけてただけだよ。本当は君のこと親友だと思ってる。でも君は僕のことただの友達としか思ってないでしょ?」


男1「……ただの友達と事件起こして自殺するバカがどこにいるんだよ?」


男2「嘘つき。君は誰にでもいい顔するよね」


男1「はたから見たら俺ら親友だよ。この事件の報道を見た世間の人間からしたらね」


男2「大衆が思い描く物語の中でだけ親友であることに意味なんてないよ」


男1「でもお前は、俺がお前のこと親友だと思ってるって言っても本気にしないだろ?」


男2「え? そうなの?」


男1「そうだよ。そもそも俺は、お前のことしか誘ってなかったし。それに、なんで俺がこんな事件起こしたかわかるか?」


男2「なんで?」


男1「高校を卒業して今の関係が崩れるのが怖いから。それならこのまま終わらせたかったんだ」


男2「スタンド・バイ・ミーでも見たの? 仮に、僕たちが普通に高校を卒業したとしてもあんな風に疎遠にはならないよ」


男1「でも絶対じゃないだろ? 今はそう思っていたとしても時が経つに連れて、俺たちは噛み合わなくなる。それに俺は耐えられなかったんだ。……ごめんな、こんなことに巻き込んで」


男2「いいよ別に。よく考えたら、目の前の君と喋りながら思い出の中の君の方が良かったなと思うのはなんか嫌だし。今死ねば美しい青春時代の思い出に浸らなくてすむしね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青春時代   @hanashiro_himeka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ