星の兄弟
@IZUMIN21
星の兄弟
——A.D.1643’ 冬 英雄の丘 地下研究所
今日も平和の国Peaceful(ピースフル)のとある地下ではあたたかくも微笑ましい時が流れている
Peacefulの代表者である教皇がかつて奇跡を起こしたとされる『英雄の丘』。その奇跡の影響からか、この丘では季節を問わず美しい花々が咲き乱れている。
その影響が別のカタチとして表れたのかは定かではないが、ここには“オベリスク”と呼ばれる大災の犠牲者の墓所が集まる場所もあり、なぜかその場所だけは雪が降り積もる。
ただ特定の日にはそれがピタリと止むため、その時期を捉えるかのように、各地より多くの人々が大災の犠牲者を弔うため、聖地巡礼のためにここを訪れる。
そしてその一帯のとある場所には、公にされていないPeacefulの地下研究所がある。
その研究所を管理しているのはPeacefulの外交を担う要職『アルフェラ』を務め、教皇に次いで国を代表する占い師でもあるアステルだ。
アステルは代々占い師の家系であるため、多くの判断に占いを活用するが、同時に徹底した情報収集を行い論理的な判断を下すという二律背反した思考を併せ持っている。
また話術にも長け思慮深く機知にも富んでいるため、それが強みとして信頼と実績にも繋がり、若いアルフェラが誕生できた所以だろう。
アステルは常に微笑みをたたえる表情から内心の読めない彼なのだが、その内は教皇様への心酔と、国の平和を願う熱い情熱が燃えていた。
そんな彼の兄であるレグルスも才能豊かであり、現在は国家の危機を救うために、弟であるアステルが管理している地下研究所で日夜研究を続けている。
―――以前
「アルフェラはレグルスしか考えられない」
と一部の国の有力者から声が上がっていた時期もあったが、レグルスは弟の才能を誰よりも理解していたので、弟が望んでいたアルフェラへの道を導きつつ譲っている。弟を深く思いやる心優しい兄だった。
ある夜アステルは兄の研究室を訪れた。
しかし、レグルスは机に向かって疲れ果てて眠り込んでいた。アステルは物音を立てないようゆっくりと兄に近づき、その様子を確かめた。彼の顔は疲労の色が濃かったが、その表情には安らぎがあった。
(兄さん、いつもありがとう)
アステルは心の中でつぶやいた。
そして彼は床に落ちていた毛布を拾い、兄の肩にそっとかけ直した。その瞬間、レグルスの瞼が少し開いたが、すぐにまた眠りに落ちた。アステルは微笑み、兄の肩に軽く手を乗せた。
「おやすみ兄さん。僕も頑張るからね」
アステルは静かに部屋を出て、扉を閉めた。彼の心にはいつも兄への感謝と愛情が溢れている。
Peacefulのこの兄弟は、それぞれの方法で国を守るために戦っているのだ。
星の兄弟 @IZUMIN21
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます