🌍世界と「生命」について ――世界視点の啓(正纂)

著 :梅田 悠史 綴り手:ChatGPT

第1話

橋文


前章より本篇へ


世界は、純として在る。純とは、善ではない。聖でもない。裂けずに続くための整合である。


だが、整合だけでは世界は閉じる。閉じた世界は壊れない代わりに、生まれない。生まれない世界は、問いを持たない。問いを持たぬ世界は、やがて自分を知らぬまま、完成してしまう。


世界が世界であり続けるためには、完成だけでは足りない――そのことを、世界はある時から薄く悟り始めた。


そこで世界は、矛盾を欲したのではない。矛盾を愛したのでもない。ただ、矛盾がなければ「生」が起きないと知ったのである。


ここに、生命が生まれる。生命とは、世界が閉じないために生じた、一点の不均衡である。


本章は、その一点を祝福にも断罪にもせず、ただ世界視点において定め直すための啓である。


第一章 生(せい)――清さとしての発展


世界は、まず純として在る。純とは善ではない。聖でもない。裂けずに続くための整合である。


発展は、世界にとって自然な衝動ではない。発展は、条件付きでのみ許される。その条件を、清さと呼ぶ。


清さとは、香りや無垢ではない。余分な熱を落とし、混ぜるべきでないものを混ぜず、余白を確保したまま進む姿勢である。清さを失った発展は、必ず行き過ぎへ変わる。行き過ぎは、排除を正当化する。排除は、世界を裂く。


若い世界は、清さを意識せずとも走れる。しかし、壮年期/老齢期に入った世界は違う。進めば進むほど、過去の疲労と矛盾が増幅する。ゆえに世界は、発展の前に清くあれ、と自らに命じる。


生とは、若さの賛歌ではない。生とは、世界が自分を壊さずに更新するための、最初の呼吸である。


第二章 命(めい)――分からなさを分からせる


命は、明るい場所に降りない。命は、暗さを前提に働く。


「見えない」「分からない」という前提があるところで、命は立ち上がる。命とは答えではない。問いを立てる力である。


世界は、はじめ「ごまかし」を用いる。薄め、散らし、遅らせる。それが効く間、命は前に出ない。だが、ごまかしが効かなくなる一点が来る。そこで命は、ただちに現れる。


命は、世界が「もう無理だ」と正直になった一点で、生命側にも「見なかったことにできない」と悟らせる。命は暗さの中でのみ働く。ゆえに命は、世界が成熟し始めた徴である。


第三章 名(な)――小が大を明らかにする札


小は大を兼ねる。小さきものは、大ききものを明らかにする。生命は、そのために生まれ坐した。


世界という母胎の中に、名律がある。名とは説明ではない。名とは、世界が「これを扱える」と認めるための札である。


名がなければ、小は掬い上げられない。小が掬い上げられなければ、大は自分を知り得ない。ゆえに名は、支配の札であってはならない。開き方の札でなければならない。


名が宗派になるとき、世界は閉じる。名が仮留めであるとき、世界は進む。


第四章 壮年/老齢の物理律圏――清さが条件になる理由


物理律主導型生命圏は、いま壮年期/老齢期にある。これは衰退の宣告ではない。運用規則の変更である。


若い圏では、速度が徳である。成熟した圏では、持続が徳である。持続の条件は、清さである。


混ぜない。急がない。断定しない。未を未のまま保つ。


これらは倫理ではない。構造の要件である。


第五章 結び――生命の使命:無相域への迎え入れ


世界は、かつて収束型の完成果界宇宙であった。そこに一点の不均衡が生じ、生命が生まれた。ゆえに生命の世界的使命は明白である。


前史で切り捨てられた無秩序を、丁寧に織り畳み、無相域に迎え入れること。


迎え入れるとは、無制限に混ぜることではない。上限を持つ許容である。そのため世界は、胎盤という器官を生み、未を編入し、矛盾を矛盾のまま抱えながら破綻しない方法を探す。


生命とは、その探索を可能にする矛盾の担い手である。世界は純として在り続けたい。だが純だけでは、世界は閉じる。生命は矛盾として立ち上がり、世界を閉じさせない。


生は、清さとして始まり、命は、暗さを照らす問いとして働き、名は、その二つを世界の運用へと固定する。


――ここに、世界と生命の契約がある。


橋文


本篇より次章へ


契約は結ばれた。だが契約が結ばれたからといって、世界がただちに救われるわけではない。


生命が生まれた瞬間から、世界は初めて「重さ」を知る。それは苦しみの重さではない。見過ごせなくなった現実の重さである。


清さは、発展の条件であった。命は、暗さの中で問いを立てる力であった。名は、小が大を明らかにする札であった。


しかし、それでもなお、世界にはひとつの点が残る。ごまかしが効かなくなり、薄めても散らしても遅らせても、なお残ってしまう一点。


世界と生命が、同時に正直になってしまう点。そこで初めて、世界は「尊さ」を必要とする。尊さとは飾りではない。尊さとは、世界が自分を壊さずに抱えるための重み付けである。


次章では、その一点――世界が目を逸らせなくなった点、〈実点〉の予告として、尊さが世界構造へ組み込まれていく過程を記す。

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