この星に生まれて、私は20年になります。

咲山けんたろー

短編

 題名にもある通り、私は今年で20歳になる。


 思い返せば、ここまで来るのに、本当にあっという間だった。小学生の頃は、20歳というと、自立した凛々しい大人を想像したが、いつの間にか自分がその立場になったとは。


 人の一生は、思った以上に儚いものなのだろうと、思わざるを得ない。



 正直、まだ実感が沸かない。よく私の両親が言う『心は老けないよ。』と言っていた言葉が、今ならよく分かる。私はまだ自立していないし、心は中学生気分だ。


 まだまだ子供でいたい。大人たちにいつまでも可愛がられて、頭を撫でられながら甘えていたい。


 でも、もう、羽を伸ばさないといけないときが来たのだ。



 きっと、そう思わせてくれたのは関わった家族を始めとした、出会った人がいたからだと思う。



 当たり前だが、人間は1人では生きれない。誰かと手を繋がないと、命は簡単に消えてしまう。


 私は、ごく普通の両親の間に生まれた。有りそうでない、珍しい可愛い女の子の名前を名付けられ、当時まだ幼かった姉に迷惑をかけながら育った。


 昔からよく泣いた。意地悪をされてもなかなか言い返せず、よく家に帰っては大泣きしたのを覚えている。お腹を壊すと、母親に助けを求め、痛みが治まるまで傍にいてくれるよう頼んだ。



 小学4年生のとき、学校の行事であった『2分の1成人式』をやった。10歳になった記念で、サプライズとして、両親が私に手紙を書いてくれた。




 そこには、寡黙な父親が私が好きそうな可愛い便箋で書いてくれ、普段怒ってばかりの母親の優しい字が待っていた。


 ちなみに中身を開ける前に大泣きして、当時の友人にだいぶ心配された。




『けんたろーは、我が家のアイドルです。だから、ずっと我が家のアイドルでいてください。』



 これはあれから10年経った今でも、覚えている文章だ。



 私は人を笑わせるのが好きで、20歳になった今でも、家族や友人が爆笑してくれると幸せな気持ちになる。


 だから、今でも家族のアイドルになれているのかたまに聞きたい時もある。


 まあ、照れくさくて言えないのだが。




 毎日、嫌な顔をせずに家庭を支えるために働いている父親。




 高校生の時、私と同じように早起きしてお弁当を作ってくれた母親。



 相談事があった時、いつも親身になって話を聞いてくれた姉。



 私は、すごく家族に巡れたのだと、振り返ってそう感じる。



 次また生まれ変わっても、派手な豪邸ではなく、今の両親の間に生まれたい。




 家族だけではない。私はたくさんの友人に出会った。


 恋愛相談や進路のこと、家族には言えないような話も、たくさん交わしてきた。







 そして、今読んでいる貴方も。








 直接的に関わることはないかもしれないが、今こうして私のエッセイを読んでくれているということが、立派な交流だと思っている。








 私は、みんなのおかげで20歳になれた。









 こうして、堂々と言えることも、大人になったということの証明かもしれない。



 だから、私は自分の羽でちゃんと羽ばたくんだ。








 20歳になった私の姿で。


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この星に生まれて、私は20年になります。 咲山けんたろー @lovenovel_kenkenta

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