境界学園と月影の獣人

@mkenta1017

第1話 境界線の出会い

王立境界学園には、暗黙のルールがある。


――獣人には近づくな。


入学初日、セリナはその「例外」を目にした。


中庭に集まる新入生たちの視線が、一点に集まっている。

そこに立っていたのは、一人の少年だった。


銀灰色の髪。

制服の下から覗く、隠しきれない狼の耳。


「……獣人?」


誰かが小さく呟く。


少年は気にした様子もなく、ただ静かに立っていた。

けれど、その背中は――どこか孤独だった。


(怖い人、なのかな……)


そう思おうとして、セリナは首を振る。


なぜか分からない。

彼からは「危険」よりも、

強く、悲しい静けさを感じた。


そのとき、視線が合った。


黄金色の瞳。

一瞬だけ、彼の目が揺れる。


――見てはいけないものを見た気がした。


「……」


少年はすぐに視線を逸らし、人混みの外へ歩き去る。


胸が、ちくりと痛んだ。


「セリナ、行こう」


友人に腕を引かれ、我に返る。

けれどその日から、彼女の心には一つの疑問が残った。


――なぜ、彼はあんな目をしていたの?


境界線のこちら側と、向こう側。

まだ触れ合っていないのに、

運命だけが、静かに動き始めていた。

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