ビッチでエッチなアルテ先輩の誘惑

万和彁了

第1話 新歓で出会った運命の人

 新歓って思ってたのと違う。


「おれってすごいっしょ!まじでガクチカ究めてんだぜ!ぎゃはは!」


「それは、すごいですね」


 大学の先輩が俺の幼馴染の結城日和ひよりが若干引きながら聞いている。面白くないんだよね、さっきからずっと。


「日和ちゃんマジで可愛いよね!どう?ミスコンとか出ない?俺ミスコン委員会にこねあるよ?紹介してあげようか?」


 先輩がそんなことを言っているけど、日和は愛想笑いで誤魔化していた。


「連絡先教えてよ。すぐにミスコン繋ぐからさ!」


「ええっとその……」


「なんか面白い話してるね?なになに?」


 そこへ明るい金髪にガタイのいい先輩がやってきた。その人は俺の隣に座って話に混ざってきた。


「あ、桐生……よぉ」


「ミスコン推薦すんだろ?面白そうじゃん。その話まじ?ん?」


 どこか気まずい雰囲気が出た。なんかこの桐生って先輩、いかつい。


「あーいや。まあ。そのな。ちょっとな」


「ふーん?まあかわいい子は他にもいるからさ」


「ああ、そうだな!じゃあまたな!」


 そして日和の前にいた先輩は席をたった。別の島に流れていった。そして桐生先輩は肩を竦める。


「わるいね。俺は桐生悠真ゆうま。よろしくね新入生さん」


 二かっと笑顔で言われる。だけどなんか雰囲気がチャラいので怖い。


「今のってどういうことですか?」


 日和が桐生先輩に尋ねる。


「はは。まあよくあることさ。二人の名前は?教えてくれよ」


「俺は湊谷久遠くおんです。こっちは」


「直接聞きたいかな」


 紹介しようとしたらすっと制されてしまった。


「わたしは結城日和です」


「よろしくね久遠くん、日和ちゃん。あはは!まあ楽しもうぜ!二人は一人暮らし?同じとこから来たんでしょ?幼馴染ってやつだろ?」


 その後桐生先輩はなんかいろんなことをしゃべりだした。海外旅行が好きらしくなんか色々と外国の話をした。日和は楽しそうに聞いていた。


「あ、すみません。ちょっとおトイレ」


 日和が席を外す。桐生先輩と二人で残された。


「久遠くんさぁ。あの子好きっしょ?」


「え。その。幼馴染なんで」


「え?隠しちゃう?そういうの大学以降だとださいよ。もっと好意はアピールしないとね」


 だからさっきからこの人は日和にずっと話していたんだろうなって思った。チャラそうな雰囲気は伊達じゃないんだ。


「君がそうやってあの子への好意隠しちゃうなら俺があの子に行っちゃおうかなぁ。あははは!」


 なんか俺の背中を軽くたたきだす。ちょっと不快だった。俺と日和の関係に口を他人に挟まれるなんて癪だった。


「あの子も君も恋愛経験ないっしょ?女の子って触れて感じるまで本物じゃないんだよ。だから好きになったらすぐに行動しろって、あはは!」


「はあ。そうですか」


「うんうん。ところで久遠君はなんか得意なことある?」


「プログラミングとIoTなら」


「なんかわかんねぇけどすごそう!今度教えてくれよ!あはは!」


 なんか馬鹿にされたような気がする。


「すみません。俺もトイレ」


「おう。行ってこい!すっきりしろよ!あはは!」


 なんか苦手だなぁ。そしてトイレに行って、戻ってくる途中で派手に男女でゲームで盛り上がっているグループの横を通った。その中に珍しい髪の女の人がいた。灰色がかった明るい茶髪。金色の瞳。すごく美しい顔立ちだった。体の凹凸が激しく出ているニットのタイトミニワンピースを着ていて、お座敷に女の子座りしていた。


「「「「たけのこにょっきき!」」」」


 なんか男女グループが見つめ合い、その次の瞬間その灰色の髪の女の人が重ねていた手を挙げた。


「いちにょっき!やった!一番!ううぇーい!!」


 ううぇーいっていう人本当にいるんだ。そしてその人は立ち上がって勝利アピールする。周りに笑顔を振りまいて、ふっとこっちを見た。目が合った。しばらく俺の顔をじっと見ていたけど、俺に向かってにウインクして視線を外して座りなおした。またゲームに戻っていった。ドキッとするくらい蠱惑的な美人だった。大学ってすごい。まあ縁はないだろう。リア充っぽいし。俺は席に戻る。そこには同じ新入生の男子たちがいた。


「おう、湊谷。おつー」


「おつかれ。はあ新歓ってすごいな」


「たしかにな。でも大人って感じでいいよな!さっきさ!俺凄く綺麗な先輩に肩にタッチされてさ!すごいなんかエモかった!」


 すごく綺麗な人。さっきの人かな。


「灰色系の髪の?」


「そうそうあの人!あるて先輩っていうんだって。名前も可愛いの反則すぎだろぉ!まじであんな人と付き合いてぇ」


 まあ美人だしな。それはわからないでもないけど。


「でもあの人すごく遊んでるらしいよ。あたし別の新歓でもあの人が男の人と話してるの見たし!」


 同じ新入生の女子がそう言った。


「あ、俺もあの人大学でラグビー部のエースと一緒に歩いてるの見た」


「お前も?俺広告研究会の御曹司さんと学食で食べてるの見たいけど?」


「まじで?俺はモデルやってる先輩と一緒に図書館でレポート描いてるの見たけど?」


 おいおいひでぇな。遊びすぎでしょ。まあモテるんだろうな。大学に入るとそういう男を渡り歩くような女の人が出てくるって聞いてたけどほんとだったんだな。


「ところで日和は?」


 日和がいないのが少し不安になった。さっきも絡まれてたし、どこへ行ったんだろう。


「ん?知らない。さっきまで男の人たちと喋ってたけど?」


 俺は店の中を探す。するとさっきの灰色の髪の先輩とすれ違った。


「あ!さっきの新入生君じゃん!ねぇねぇ君もウチのゲームに混ざる?楽しいよ?ふふ」


 なんかお誘いされたけど、それどころじゃない。


「すみません。幼馴染探してるんで」


「幼馴染?なにそれ?アニメの話?」


「いやリアルなんですけど。黒髪が長い女の子です。綺麗な子なんですけど見てないですか?」


「うーん?幼馴染がリアル?すごい!ははは。その子なのかはわからないけど、黒い長い髪の綺麗な子なら男の人と外に出てくの見たよ」


「え?うそ?!」


 俺はすぐに店の外に出る。すると少し離れたところで日和を見つけた。その傍にはさっきのチャラい桐生先輩がいて、日和は笑顔で話しかけていた。なんだよそれ。


「見つけた?ありゃ?あの子?」


 灰色の髪の先輩が俺の後ろから日和の方を見る。


「そんな……」


「あーもしかしてどんまい案件?」


 先輩が俺の顔を心配そうにのぞき込む。


「お気の毒かな。あいつさ、女の子に優しくするの得意なんだよね。で女の子勘違いさせるの。昔だけど私もあいつに勘違いさせられた。酷い目にあったよ」


 あのチャラい先輩そんなことしてたのかよ。いますぐに割って入りたい。だけど日和は笑顔だ。邪魔なんて……。俺が邪魔じゃん。


「なんか元気ないね?大丈夫?」


「放っておいてください」


「でもさ。君みたいな優しそうな子見過ごせないよ」


 先輩は俺の手を優しく握ってきた。


「元気だそ?こういう事故ってさ。大学だとよくあるんだよ。右も左もわからない女の子があいつみたいな男に騙されちゃうの。あいつ彼女いるんだよ」


「そんなのひどいです」


 でも割って入ることはできない。そんな勇気はなかった。打ちのめされてしまった。そして先輩が俺の手を引く。


「ねぇどうせなら二次会いかない?」


「まだ飲み会終わってないですよ」


「いいよあんなのいつも通りの光景だし、慣れてるから面白くないの。どう?二人で遊びに行こう?」


 にかっと先輩が笑う。それはとても可愛らしくて、蠱惑的で、でも今の俺には眩しくて。なにか惹かれるものを感じてしまった。


「じゃあこっちこっち!よく行く店があるの!満足度★5だから!」


 そして先輩に手を引かれるまま俺は二人だけの二次会に逃げ出したのだ。

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