秘密のお話

クランベア*

第1話

 「ドライブ行かない?」


そう言われてウチが行くことになったのは金沢の海。


「ねー、そろそろ運転変わってくれても良くない?」

「いやまだっしょ。まだ次のコンビニ着いてないし」

「遠すぎー」

「お前が行きたいっつったんじゃん」


今原付を運転してんのは妹。あ、二人乗りイケるやつだからそこんとこは気にしないで。うーん、目的地の海まではまだ一時間位かかりそう。…いや結構遠くね?


「やっぱやめる?遠くね?」

「えー、ここまで来てそれ言う?無いわー」

「えごめん。じゃあ行くかぁ」

「コンビニ近いっぽいからそこで運転交代ね」

「りょ」


 コンビニに着いた。「トイレ行ってくるわ」と言いながら奥に行った妹…もういいやめんどくさ、名前言うわ。アカリを見送って、ウチはお菓子コーナーに行く。何買おう。チョコは必須として、あとは飴とか?グミはどうしよ。


「何買うかんじ?」


トイレから帰ってきたアカリが背後から聞いてくる。


「とりまチョコは買う」

「イチゴ味?」

「もち。あと何かある?」

「飴とかじゃね?グミとか」

「やっぱ?」

「グミはそんなだけど」

「それなー。飴だけでいっか」

「バズってたやつあるじゃん。それ買お」

「うわ高。アカリ自分で買えよ」

「ここまで運転してきたからムリ。アオイおねーさま買ってー」

「ダル。双子なんだから変わんないって。もー、買ってやるから感謝しなよ」

「いえーい」


言い合いながらカゴに大量にお菓子を放り込んでいく。そのままレジに行けば、レジ打ちのおばーちゃんが会計してくれた。


 コンビニから出た後、お菓子でパンパンになっているビニール袋の中から飴だけを開けて、その中から更に二つ個包装になってる飴をとる。


「レモンでいい?」

「んー」

「はーい」


それぞれ口の中に飴を放り込んでから、それ以外のお菓子をそのまま荷物入れるとこに入れていく。そしたら今度は前後をチェンジして乗る。


「流石に書いすぎた?レシートめっちゃ長いんだけど」


アカリが言う。確かにコンビニで買う量ではないかもだけど。


「まぁいいでしょ」


ウチがそう言えば、アカリも、それもそっかと楽しそうに呟いた。


「どうせここから逃げちゃうからね」



 原付を走らせる。今の場所はさっきのコンビニの場所から十五分くらい走らせたとこ。ずっと少ししか話していなかったけど、信号で止まった時、後ろに乗ってるアカリが笑いながら言った。


「ウチら今何してんだろうねぇ」


そう言ったアカリに返事をする。


「とりあえず海目指してるよね」


事実を言えばアカリは吹き出した。


「海!あははっ!そうだった、ウチが言いだしたんだったわ」

「一応今日平日なんだけどね」

「あははっ!」


続けてそう言えば後ろの揺れが激しくなる。めっちゃ笑ってるんだけど。こわ。



 「やっと着いたー!」

「いや遠すぎ…。絶対思いつきで来る場所じゃないって…」

「思いつきなのはいつものことじゃん」

「それをやめろっていつも言ってんだけど?」

「ごめんねぇ」


到着した海は太陽でめっちゃキラキラしてた。裸足で歩いてる砂浜がひんやりする。


「やっぱ夏じゃないと寒いわ」

「それなー」


暫く砂浜を歩いていくと、ちょっとした階段があった。


「あそこでいっか」

「うん」


階段に並んで座った後、とりあえず曲をウチのスマホから流しながらさっき買ったお菓子を開けていく。


「何開ける?」

「もう飴はいーや。チョコ食べよ」

「だね」


ガサガサ。誰もいない海で二人で袋を漁る。漁りながらアカリに



「バズってたとかいう飴どうだった?」


と聞けば、


「クソマズ」


と返ってきた。思わず吹き出す。


「なんであんなのバズってんの?」


そう続けて返ってきて勢いよく


「そんなん知らない!」


と返せば、アカリも笑い出した。



 「てか、今流れてるやつってウチらがめっちゃハマってたやつじゃない?」

「あぁそーそー。『今いる場所から逃げちゃえよ』!」

「『そしたらそこはユートピア』!」


二人で歌いながらチョコをパキパキ割っていく。


「アカリが最初教えてくれたんだっけ?」

「ウチのクラスで流行ってたんだよね」

「あー、そうだったかも。ウチのクラスではまだ流行ってなかったんだよね確か」

「ウチとアオイのクラス結構離れてたもんね」


小学校と中学校では、ウチとアカリは同じクラスにもならなかったし、教室の場所も離れてることが多かった。高校はそれぞれ違う場所になったから、クラスも教室の位置も関係なくなったけど。


「なんだかんだ言って一緒の学校行ってたの楽しかったよね」

「だよねー。教室行けば大体アオイに会えたし」

「顔似てないからって、本当に双子かどうか聞かれるのはダルかったけど」

「どっちが上なのか、とかもね」

「めんどくさかったわー」


 小学校でも中学校でも、聞かれることは大体その二つのことだった。

高校生になってからはそもそも双子だってことを知ってる人が少なくなって、聞かれること自体が少なくなったけど。


「たまに休日に高校からの友達に一緒に居るの見られてびっくりされてたわ」

「ウチもー」


そう話しながら残り二つになったチョコの欠片の内の一つを取って口に入れる。


「あ!大きい方選ぶなし!」

「早いもん勝ちだって」


うまっとこぼせば、少し怒りながらアカリも残った欠片の方を口に入れる。そして同じようにうまっとこぼした。



 買ったお菓子を半分ほど食べ切った時、曲をランダム再生していたスマホの充電が切れた。曲も途切れた。…さぁ、ここからどうなるかなぁ。


「あ、切れたわ」

「えー、早くない?アオイはスマホ使いすぎなんだって」

「うるさいなーもう。いいじゃん、もうお菓子だいたい食べ終わったんだから」

「それもそっか。えー、まだこれ残ってるのに」

「曲終わるまでだって決めたじゃん。…でも、お菓子食べ切ってからにしよ」

「え?いいの?」

「お菓子もったいないし。お菓子うまいなら食べたほうがいいし」

「それもそっか」


残ったお菓子をパクパク食べるアカリを見る。ほんと、アカリは美味しそうに食べる。


「これからどうする?」


そうアカリに聞けば、少しだけ気まずそうな顔をしながら、


「お菓子食べ終わったら帰ろうかな」


って言うから、私は良かったと思った。


「うん、じゃ帰ろ」


そう言いながらウチはアカリをチラ見する。目が、さっきより少しだけキラキラしてる気がした。


どうやって一緒にいようかなぁ


そう思いながら目の前の、夕陽でキラキラしている海を見た。




 「ただいまぁ」

「おかえりー。学校遅かったじゃない?」

「あー、今日サボった。アオイも」

「えぇ、明日はちゃんと行きなさいよ。あれ、アオイは?」

「ここにいまーす。ただいま!」

「はいおかえり。アオイも、明日はちゃんと学校行きなさいよぉ」

「はーい」


そうママに言いながら二人で階段を上がっていく。ふとママがウチらに聞いてきた。


「今日はどこ行ってたの?」


ウチはアカリと顔を見合わせた。アカリの顔を見て、次にママの方を見て言う。


「思い出話的な?」

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