ありきたりな退魔師の、よくある異変。~いや聞いてないんだけど。MP回復でこの娘との羞恥プレイ必須とか~
いぬぅと※本作読んで作者への性癖認定禁止
第1話 ありきたりな退魔師の、よくある異変。
戦って勝ったのに、まさかの罰ゲーム?
まさか、あの
「あの‥‥水貰っていいですか‥‥」
僕、
「ハイ。お水、ですね」
するとバックヤードの死角から、白衣を着た女子が現れる。コートみたいな形だけど裾の短い、襟付きの白衣。
彼女は僕の目の前のストローの刺さったコップを持ち上げると、そのままそっと僕の口元に寄せた。
「飲めますか?」
僕は、不格好に顔と顎をできるだけ突き出して、ストローをくわえて。
――彼女、
僕の両手は動かない。未だベッドの、白いシーツの上に置かれたまま。
彼女の白衣の隙間からのぞく、セーラー服と胸のリボンが揺れる。水色の、少し光沢のある綺麗なリボン。俯いたら視界に入ってきて。
おっと飲む事に集中。でないとむせてしまうんだった。
逢初さんは僕の口まわりを布でそっと拭いてくれた。柔らかくて何かいい匂いがするタオル。‥‥慌ててリボンから目を逸らした。
「ご、ごめん。こんなことさせて」
沈黙が嫌で、取りあえず話しかける。
「いえ。役目なので。それで‥‥ご決心は?」
「え~と‥‥」
「そう‥‥。でも早く処置に移らないと‥‥」
彼女の抑揚のない声が視界の外で聴こえた。
正直、この部屋の空気が良いとは言えない。
でも、それを後回しにするくらい、僕は今、重大な決断を迫られている。
「大丈夫。元通りになりますから」
右耳のすぐ上あたりで声がして、僕はぞくっとする。
きっと、僕が体をぐいっと傾けたら、僕の頭は彼女のほっぺた辺りに当たるんだろう。
まあ。動かせたら、なんだけどね。
僕の。
首から下の、身体を。
***
『じゃ、配信始めま~す』
話は一時間前に遡る。
宙に浮かぶ映像ドローンに軽く手を振って、僕の放課後の「タスク」が始まる。
早速コメント欄からは。
『おなしゃす! 咲見パイセン!』
『
なんて好意的なコメントが溢れる。
目の前に、体長3mの巨大な狼が現れた。白くて、両目は内側から発光している。
魔獣だよ。これを倒すのが僕の任務だ。
僕が大空に手を掲げると、空から光の柱が降り立つ。それが突き刺さる先は、眼前の狼魔獣だ。
「グギャアアァ!」
大地を震わす断末魔と共に、魔獣は黒い霧に変わる。その霧も、光柱の残光に焼かれて消えていった。
『おみごと! 日本の宝!』
『ホントに中学生~?』
『強ェ』
『今日も退魔、ありがとね~♡』
湧きかえるコメ欄。
でも褒められたからって偉そうにはしない。僕はドローンのカメラに軽く一礼をして、配信を切った。
僕の街には、古い祠がある。遠い昔、僕らの祖先が魔獣を封じた禁足地だ。その奥の深い洞窟が魔獣の巣で、でも最近は結界の効力が薄れてきていて。
だから魔獣がたまに出てくる。通常は「退魔の一族」である僕の親や親戚の大人が対応するけど、最近数が増えてきた。
そこで、僕とか中学生、義務教育組もついに駆り出される事になって。放課後オンリーでこうして、退魔のお手伝いをすることに。
「咲見暖斗様。こちらに」
「あ、どうも」
ガッチリ肩幅、黒スーツのSPさんが車のドアを開ける。うん。今日も送迎は黒塗りの高級車だ。後ろには、市民の避難誘導をしてた自衛隊の装甲車。
この街に魔獣が出て、当然世界中大騒ぎになった。そこで僕ら「退魔の一族」も世に出て、魔獣退治を政府に申し出たんだけどさ。
待遇は国家要人クラスなんだよね。‥‥まあ、退魔は僕らにしかできない。銃とかは効かない。無駄に怪我とかしたら大変だから、退魔師にはSPさんがつくんだけど。
あと退魔の様子を配信してるのもデカい。魔獣をやっつけるのを中継して、国民のみんなに「大丈夫だよ」ってアピってるんだけど、顔バレするからね。変なヤツから僕らを守る意味もあるんだってさ。
「‥‥病院?」
車窓から通り過ぎる街路樹を眺めてたら、家じゃなくて市立病院に着いてた。え?
ああそっか。僕らの健康を心配するあまり、国は定期健診とかを始めたのか。
病院ロビーには、白衣の看護師さんと居合わせた患者さんが大勢いた。花束を渡され、万雷の拍手。
いきなりこそばゆい。僕としては退魔は、親からずっと仕込まれてた事。楽勝だし特別な事をしたつもりは無い。やめてよ。「我が国の救世主様」、とか。
診察は二階? じゃあさっさと行こう。顔がニヤける前にね。一応クールな中二キャラだからね、配信の僕は。
片手を上げて答えながら、足早に。病院の、よく磨かれた廊下を小走りに行こうとして、でも「でも本当にピカピカな床だな。滑るぞ気をつけ‥‥」って思った刹那。
ズダン!!
本当に滑った。
一瞬視界が跳んで、両目から雷が出た。気がつくと、僕の鼻先と頬の下には、あのつるつるの床が。
居並ぶ人の前で僕は――ハデにコケていた。
うわ!? うわっ!! カッコ悪! ‥‥最悪だ!
「「きゃあぁ!?」」
悲鳴が聞こえる。黄色い声で。
「痛ってて‥‥ぐぐ」
走る痛みに声をあげたけど、慌てて奥歯で嚙み潰す。既に死ぬほど恥ずかしいのに、この上痛がるとかは出来ないよ。
顎と体中を痛打していた。呻きながら目だけで周囲を窺うと、あの看護師さん達が駆け寄って来る。
うう。やめて。痛いけどそっとしといて。
この上大袈裟に抱き起こされたら、恥ずかしいプラス情けない
「大丈夫ですか? 咲見様?」
いや、大丈夫だし。
「立てますか?」
そうだ。サッと立ち上がって、せめてノーダメージだけでもアピールしよう!
倒れた格好から、慌てて体を起こそうとして。
「‥‥‥‥!」
手足に力を込めて。
「‥‥‥‥?」
立とうとして。
「‥‥‥‥!?」
あれ? 僕は立とうとしてるんだが?
「‥‥‥‥‥‥っ!!」
僕は、自分の体の異変に気がついた。
首から下が、全く。
動かない。
「‥‥間に合いませんでしたか?」
看護師さん達とは違う、もっと澄んだ声がした。眼球を動かせるだけ向けて声の方向を見ると、黒いローファーと白い靴下と、‥‥ちらりと‥‥セーラー服のスカートからのぞくふとももが見えた。
‥‥誰かが僕の頭のすぐ側で、しゃがんでいるみたいだ。
あのピカピカの床にしゃがんでる? 慌てて視線を戻す。
この声、この制服は?
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