初めて合コンに誘われた俺が、マルチの本を燃やした話
@thund_lightning
初めて合コンに誘われた俺が、マルチの本を燃やした話。(前編)
会社の先輩から一つのラインがきていた。
会社の先輩といっても、大学のサークルで知り合って仲良くしていた人で、自分がその会社に入ったのもその先輩が在籍してるからという感じのとても近しい関係の人だ。大きい会社だから仕事で一緒になることはなかったが、社会人になってからも旅行に行ったりしてよく遊んでいた。
「新人研修時代のよく知らない同期の女の子がご飯に誘ってきたから一緒に来ない?」という内容だった。その女の子も知り合いを連れてくるらしいともあって、自分は合コンじゃないかと舞い上がった。
一応、冗談でマルチじゃないですか〜と牽制したところ、向こうもそう疑っているみたいでそのため自分にも人質になってほしいという誘いらしかった。まあでも、1回行って怪しかったら会わなければいいよねってことで参加してみることにした。
当日、待ち合わせ場所に着くと、女性は一人しかいなかった。聞いてみると向こうの知り合いは、仕事の都合で来られないらしい。じゃあ合コンちゃうやん。そんな気持ちを押し殺して、予約した店に向かう。
その女性(今後はSさんと呼ぶ)と話してみたが、いきなりエンジン全開って感じではなかった。先輩と研修が同じだったらしいのでその話をサクッとして、仕事の話に入る。Sさんはもう会社をやめ別の会社でSEとして働いているそうだ。
話がはずみ警戒が解けてきたところで、ふと先輩がメッセージがきた頃はマルチなんじゃないかと疑っていたと話すと、Sさんはえ~そうだったの、全然違うよ、ていうかマルチってなんなの、と言った感じでとぼけていた。その後も変わったことはなく会は終了した。
帰りの途中で、自分が全く彼女ができないことを話すと、Sさんはよければ自分の友達を紹介しようかと詰め寄ってきた。このときから自分にターゲットが向いたような気がする。(あまり関係のない人にモテない話をして、いらないアドバイスや本当はしないくせに紹介するだといってかえって傷つけられることは少なくない。言えば損するのも分かっているのについしゃべってしまう。)
先輩との帰り道、彼女には悪意はなさそうだねと話された。自分もまた誘われたら行っちゃうかもしれませんねと言った。
そしてSさんからの次の連絡は1週間もたたずすぐにやってきた。
Sさんからは、仲の良い彼氏募集中の友達とアニキとSさんが慕っている先輩との飲み会があるけどどう?と誘われた。基本的に暇をしている自分は快諾したが、先輩の方は断っていた。Sさんは自分の周りの友達も呼んでねと頼んできたが、そんな気軽に誘える友達もいなかったので1人で行くことにした。(だれも誘わなくてよかった…)
Sさんは夕方に予定があるのかも聞いてきた。予定はないですと答えると自分のやっている店に遊びにこないかと誘ってきた。
なんだそれと思いながらつい予定がないと言ってしまったので行くことにした。
当日、その店に行くとSさんはいなかった。店はオーガニックを専門としたセレクトショップで、店員から化粧水の話をたくさん聞かされた。その人も色々と対応してくれただけに、何か買わないとと思ってしまい、3000円の化粧水とティーバックだけ買った。(オーガニックってそもそもよくわからないんだよな…人工物の方がぜったい体に効くにきまっとるやん。)
そうしたら、Sさんが遅れて到着し飲み会に行くことになった。
着いた先は、謎のマンションの一室だった。内心マジかよ…と思いつつ部屋に入ると、中はもっと謎だった。
40代の男性(以下アニキ)1人に対して取り囲むように自分と同じくらいの女性数人がパーティーの準備をしていた。その光景を見た自分はなぜだか一夫多妻を教義においたカルト新興宗教ってこんな感じなんだろうなって思った。
その後、周りの女性が呼んだ同い年の男性が何人か到着すると、パーティーが始まる。正直にいうとパーティー自体は楽しかった。何かの勧誘をされたというのではなく、美味しいご飯を食べて映画や音楽の話をしただけだった。特に馬刺しが本当に美味しかった。(なんか専用のタレがうまかった。)
アニキは、マンション辺りの地域の飲食店をいくつか持っているという経営者だった。
めちゃくちゃ怖かったのはアニキがとても聞き上手だったことだ。おじさん特有の自慢話をひけ散らかすことはなく、相手の話をうまく聞いて一言コメントを添え、次の人に回す。マルチを連想させるような儲け話や人脈等の話は一切しない。あくまでこちらの出方を伺っているように見えたのが怖い。こちらが油断した瞬間に肉の芽植え付けてくるんだろうな…
会は終了して、Sさんと途中まで一緒に帰った。楽しかったのでまた誘ってくださいねといらん一言を言ってしまうと、向こうは今度自分の人生を変えてくれた同級生に会わせたいというのだ。
なんでもその同級生は、事業に成功してカンヌ映画祭に行ける位、余裕があるらしい。(自分が映画好きだから話をあわせたんだと思うけど、カンヌ映画祭っていうほど行きたいか?ハリウッドならわかるけど、映画祭行こうって思わんよな…)
マジで勘弁してくれと思いつつも、またイエスと答えてしまった。
この頃、上司の追い詰めが本格化してきていよいよ身体がおかしくなってきていた。
会う日の当日、今まで一番上司に怒られてしまって流石にカウンセリングに相談しようと決意した。
仕事が終わり、乗りきがしない会に向かおうとしていたら、Sさんから1時間遅れると連絡がきた。なんでこんなにも落ち込んでるのに自分が待たなきゃいけないのかと思うと、自分に差し迫っている危機をはじめて話すのはこいつらではないと考え、キャンセルすることにした。
キャンセルすることをラインで伝え家に帰ろうとすると、向こうから電話がかかってきた。こっちはただでさえ忙しい同級生を連れてきている、なかなかアポを撮るのも難しいんだからどうしても行くことはできないかと懇願される。その同級生はお前にとってどんな存在なんだよ、イエスキリストでも連れてきてるのか。
自分が正直に仕事で参っていることを話しても食い下がってくる、まるでキャンセルされると誰かに責められるんじゃないかという気迫で。向こうの焦りが聞こえてくる状況にますます不信感を覚えた自分は強く断って家にベッドに倒れた。
そして、次の日会社のカウンセラーに仕事について相談し、休職することにした。家族や友人にその旨を伝えたが、みんなの反応本当に暖かくて嬉しかった。
Sさんにも一応伝えた。当分休職するので自分が話せる状況まで回復したらまた会いましょうと。このときはもう会わないでくださいって言える勇気がなくて、また会いましょうなんか付け加えたんだよなあ。
実際1ヶ月は連絡が来なかった。その1ヶ月の間で、散歩や読書など自分のしたいことを少しずつやってく中で、だいぶ体調メンタルは回復してきた。
自分の中ではこちらから連絡することはもうないと思っていたのだが、Sさんからの連絡で第二ラウンドが始まるのであった…
休職して1ヶ月後、Sさんから再び連絡がきた。
彼女は自分の調子を聞き出し、また2人でどっか遊びに行こうと誘ってきたのだ。自分もやめておけばいいのに、誘いに乗って映画に行くことを提案したりもした。結局、一緒にご飯に食べにいくことにした。
当日会って、自分の話をしたり彼女の話を聞いたりした。正直会話すること自体は楽しい。マッチングアプリと比べて一切緊張しないのでその練習になると思えば楽しめた。ただここから彼女への不信感を強める2つの出来事があった。
1つ目は、幕張での謎イベントに来てほしいと言われたことだ。
彼女からこの日は空いているかと質問された。
前回のセレクトショップで懲りた自分はまず何をするのかを聞く。そうすると、幕張でシンポジウムをやるから来てほしいと言うのだ。内容について聞いてみてもSさんはその中身をぼかそうとする。中身は来てからのお楽しみにみたいな。
いくら自分が休職で毎日暇していても、わざわざ幕張まで行って知らん人の話を聞く意味が分からない。とりあえず家族と旅行する予定があると嘘をついた。そうするとまだまだ粘ってくるのだ。1週間前に再度予定を確認されたときは本当に呆れた。なんでそんなに切羽詰まってるんだ。その行いが自分の首を絞めているってなんで分かんないかな。
2つ目は、「金もち父さん貧乏父さん」の本を勧められたことだ。自分が最近読書を始めたと話すと、ライトニング君にとっておきの本があるよとその本の良さを熱弁してきた。
自分はそのタイトルを聞くだけでも読む気が失せてしまった。明らかに二項対立を前面に押し出している。貧乏父さんの話を無視して金持ち父さんの話ばっかり聞かされるんだろなあとうんざりした。
でも自分はとんでもなく押しに弱い。本屋に買いたいものがあると彼女に着いて行くと、その本が売ってあることを教えられた。その前に適当に相槌を打ちながら今度買ってみますね〜と言ってしまった手前、退路は切られていた。彼女の監視下で1600円を払い、本と一緒に家に帰った。
試しに最初だけでも読んでみた。タイトル通り、筆者には金持ちな父さんと貧乏な父さんが別々に存在していて、どちらの話も聞いた結果金持ち父さんの言うことに従って、金もちになったというものだ。
「金もちっていうのがそういうことなら俺は一生貧乏でいい…」(NARUTO)そう思いながら、他に読みたい本がある自分はその本を机の片隅に置いて二度と読むことはなかった。後日調べてみると、ネットワークビジネスの勧誘に使われているという悪名高き本だというのがわかった。だんだんとSさんの正体が分かってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます