第11話




「だってさっき、理央が寂しい顔したのも、裕太の事、引きずってるからなんでしょう!?」



「そ、それは…」



 鋭い指摘に、理央はドキリとする。


 それは、裕太の事を考えていたわけじゃないからだ。



「だいたいっ!裕太なんかと付き合うなんて、私、反対したんだよ?あいつ、中学の時から派手な子ばっかとつるんでたし、女癖悪いのも分かってたじゃない?」



「うん…」と、理央は素直に頷く。



「もう、昔みたいな奴じゃないって分かってたのに、何で付き合うかなぁ!?」



 咲は、理央が全く理解できないと言ったように、ショートヘアをガシガシとかいた。



「でもね、裕太はいつも危なっかしくて、なんか、ほっとけなくて…」



 ほっとけない?



 自分で呟いた言葉にふと、疑問を抱いた。



 ほっとけないから付き合うって、なんかおかしくない?



 咲も同じ疑問を抱いたようで、二人同時に顔を見合わせた。



「ねぇ、理央?つかぬ事をお聞きしますが…」



「あ、はい、なんでしょう?」



「あんた、本当に裕太の事好きだったの?」



 ストレートに問われて、理央は言葉に詰まった。



 理央はまだ、本物の恋がどんなものか分からない。



 だから、答えられるはずもなかった。



「ねぇ、咲ちゃん?逆に聞きたいんだけどいい?」



「はいはい、なんでしょう?」



「人を好きになるって、どんな気持ち?」



 予感が的中した咲は、ガクリとうなだれた。

 


 そして、ボソリとため息交じりに呟く。



「ねぇ、理央。私のさっきの怒り、返してくれないかな?」





  

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