第8話 知らないキミと

【知らないキミとの】


ガチャリとドアが閉まる。

と同時にフワッと彼の温もりが体を包み込んだ。

えっ!!

気付くと、柔らかい彼の身体が私を包み込んでいた。

とってもいい香り…。

これはシャンプーなのか、それとも香水なのか…。

そんな事を冷静に考える頭の端で、この後の展開を妄想してフリーズしている私がいた。


「今度は本当にキスしていい?」と顔が近づいてきた。

あっ…、

いよいよ妄想の現実化だぁ!!!!!


頷く前に、チュッとおでこで音がした。


触れたおでこに手を合わせて、ここのキミ君の唇がと想像する。

口じゃなかった…


「はぁ…おでこで精一杯…」

ふっと体の力が抜けたように、キミ君はその場に座り込んだ。下から私を見上げて、子犬の様な瞳で

「ごめんね。最初からいっぱい一杯で…。」というと、恥ずかしそうに顔を手で覆った。


私はとっても愛おしい気持ちになって、

同じようにその場にしゃがみこんで彼を見つめながら、

「まだ時間はたくさんあるよ!」った言った。


キミ君の瞳にほんのりと光が見えた。


先に見える部屋のカーテンの色。私がイメージしていた薄い青だったからちょっとだけ嬉しかった。

ここから私達の物語が紡がれていくのだ。

私達はお互いを見つめ合い、ふふと声を出して笑いあった。


キミ君は

「嬉しすぎて酔ってるみたい…」とはに噛む顔で、そっと手を差し出した。

「さーちゃん、改めて……きてくれてありがとう」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る