第7話 キミとの空間

【キミとの空間】


窓の景色が変化する中で、だんだんと会話のテンポが緩やかになってくる。

「ねぇ、さーちゃん。」

運転席の彼が、前を向いたまま私の名前を呼んだ。その声がさっきまでより少し低くなっていて、私は握ったままのココア缶に力を込めた。

温かかった缶は、空っぽでひんやりと指先を覚ました。


「俺の家、ここの5階だよ。」

彼は車を路肩に停めて、綺麗な新しいマンションの上階を指さした。


「綺麗な所だね。」

「仕事が大変だから、住む所くらいは安らげる所に住みたくて。」


私の荷物を片手でひょいと持って、慣れた手つきでマンションのオートロックを解除する。

どうぞっと招き入れられた。

エレベーターに乗る。

私の胸がまた音を立て、激しく奏で始めた。

握る手に汗が滲んだ。

部屋に入ったら…

どうなっちゃうんだろ……

本当にここまで来たんだ。

当たり前だけど、今更だけど…


ゴクリ…

生唾をのみこんだ。


玄関のドアを開けると、綺麗な光が部屋まで差し込み、隅々まで照らし出された。

とても清潔で綺麗な部屋がここからでも想像できた。

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