[初執筆]霞む分岐点[ショートショート]

真戸 ふゆ

霞む分岐点


 最後に姉と話したのは、昨年の夏の朝、道の途中で互いに登校で別れた時だった。会話の内容は覚えていないが、おそらく他愛のないものだったと思う。

 その後姉は交通事故に遭い、すぐに亡くなった。応急手当も行われたものの、間に合わなかったらしい。

 仲は悪くなかった。むしろ、もっと話しておけば良かったと後悔している。


 ────今更ではあるが。




 それから一年が経った、ある七月の朝方。

 目が覚めた俺はカーテンを開けると、辺りは酷く濃い霧に包まれていた。

 普段通り登校しようと外に出てみるも、数十メートル先すら何も見えなかった。

 日光も遮る程の深い朝霧の中、俺は学校までのいつもの道を歩く。

 そう、いつもの道。そのはずなのに、いつも歩いている道とは違って見えてくる。

 やがて本当に学校までの道を歩いているのかどうか、不安と焦りで胸がいっぱいになった。

 その瞬間、少し先に光が射し込み、人影が見えた。同時に、それは俺を呼びかける。


「────、道はこっちだよ」


 俺は息を呑んだ。何度、その声を聞いただろう。どれだけ再会を望んだだろう。


「姉ちゃんッ!」


 全力で走った。また会えるならどんなに息切れしても良いと思った。

 近づくにつれ、人影はゆらゆらと揺れ始める。




 たどり着いた先にはその姿はなく、あの濃霧はすっかり晴れ、太陽が無慈悲にすべてを照らしていた。


 ただでさえきついその暑さが、さらに重く感じた。

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