第2話チュメレスが言ったこと
「セレナちゃん、最近さぁ、カリナがベタベタしてきて疲れるんだよねー」
「お前、何姉ちゃんのこと“ちゃん”呼びしてるんだよ」
「そんな細かいこといいじゃん、クルター」
「はぁ……」
クルタは呆れて頭を抱える。
「あんな事があったし、仕方ないことだわ」
「……心配してくれてるのはわかるけど」
パチッ。
「そんな事よりモナ。次に生まれてくる子達の教育に悪いわ。私のことは“お姉ちゃん”、クルタのことは“お兄ちゃん”って呼ぶように教えたはずだけど?」
「ごめんなさい、お姉ちゃん…私が悪かったです」
「私もきつく言い過ぎたわ。だからそんなにムスッとしないで」
「悪いと思うんなら、その態度改めたほうがいいと思うぞ」
「なんでそんなにお姉ちゃんは厳しいかな。あー、ミスった、お兄ちゃん」
「確かにクルタは厳しいかもね」
「お姉ちゃんまで……」
「もういーや、カリナお姉ちゃんのとこ行こーっと」
「いってらっしゃい」
「あいつ行きやがった。ベタベタされて疲れるとか言ってたくせして」
「ああいう子よ。それと、もう少し優しくしないと嫌われるわよ」
「時には厳しさも必要だろ?」
「…分かってる。優しくする努力はするよ」
「よろしい。仕事に戻っていいわよ」
____
「お姉ちゃーん」
「モナじゃない。どうしたの?」
「うーんとね、急に会いたくなって。へへっ」
「今は構う時間ないから、ちょっと待ってて」
「はーい。最近忙しくなったよね。仕事?役割?が決められたし」
「しょうがないじゃない。モナがあんな危険な目にあったんだし、危険なものは排除しないと」
「ありがたいけど、私が暇になるんだよね〜。私には仕事任せてくんないし。まあ私は尊い存在だから仕方ないっちゃ仕方ないけどね」
「あんた、そろそろその自信過剰なとこ直したほうがいいんじゃない?」
「事実言ってるだけだしー。害はないでしょ?」
「よしっ。もう危険なものはないと思うよ。帰ろうか」
「うん!」
「ただいまー」
「あら、おかえりなさい。意外と早かったわね」
「あれ? クルタお兄ちゃんは?」
「仕事しに行ったわ」
「こんな時間に行くなんて珍しいんじゃない?」
「確かにー。いつも日が暮れてから行くのに」
「私が半強制的に行かせたようなものよ。ふふっ」
「ははっ、それこそ珍しいじゃん」
「クルタ兄さん、何かしたの?」
「いいえ。たまにはいいかと思ってね」
「そうだ、セレナお姉ちゃん。今日は海に針を持った生物がいたよ。あれぐらいなら危険な存在じゃないと思うけど、一応消しといたよ」
「そんな生物いるのね。見てみたかったわ」
「私が探して持ってこようか!?」
「だめよ。モナは危なっかしいから、おとなしくしといて」
「ちぇ」
「最近では、すっかり近状報告する時間になったわね」
「確かに」
「私はそれを聞くだけとか悲しすぎー」
「一番下だから、しょうがないわね」
「はぁ……なんだか憂鬱だな〜。みんな優しいけど、私には何もさせてくれないし、頭に喋りかけてくる奴いるしで疲れた」
自分の部屋に来たモナは、ふかふかなベッドに倒れ込み呟いた。
「何が何やらさっぱりだよ」
(最近はつまらんのう。初めはお主の精神世界が楽しくて仕方なかったのに、心の持ち主がこうなってしまっては)
「あぁ〜、うるさい。誰のせいだっつーの」
「……あのトゲある生物、私のせいで消えたんだよね。そういえば、私達って消えることあるのかな。セレナお姉ちゃんは四千年以上生きてるって聞いたけど。知ってる? 頭に住み着いてるやつ」
(さあ、我にはわからんの。そんな事より、いつまでも罪悪感にしがみついてないで、他のこと考える努力せんか。我まで憂鬱な気分になってしまうわ)
「そういえば、名前なんて言うの?」
(今頃か。我の名はチュメレスである。カッコいいだろう?)
「あっははっ、なにそれ。可愛いね、ははっ」
(こら! 馬鹿にするでない)
「これからはチュメって呼ばせてもらうね」
生を授かる子、死にゆく子 かるゆく @aiaisisyami
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