前世は大賢者、今世は最下位種スライムドラゴン――規格外ステータスで最強になり、冤罪の聖女を守り抜く

ことひら☆

第1話 転生、失敗!?


……ふむ。


それは、自分の意識がはっきりと存在していることを確認した。

思考は明瞭。記憶もある。


禁忌ロスト魔法【魂環離脱アニマ・エクソダス】。

発動条件である「死」は、確かに満たしたはずだった。


――だが。


視界に映るのは、指が三本しかない手。

表面は硬く、砂色の鱗に覆われている。


人の手ではない。


「ガウ」


喉から漏れた音に、本人が一瞬だけ思考を止めた。

人間の言語ではない。

獣の声だ。


人ではない身体。

制御できない発声。


そこから導き出される答えは、一つ。


――転生、失敗。


そもそも【魂環離脱アニマ・エクソダス】は、成功率一割にも満たない魔法だ。

失敗すれば、肉体も魂も消滅する。


それでも実行した。

そのリスクは、承知の上だった。


周囲を見渡す。

闇。岩壁。湿った空気。


洞窟型のダンジョンだろう。


足元の水溜まりに、現在の姿が映る。


……竜。


しかも、竜族。


人間ではない。

この時点で、転生が想定外であることは確定していた。


だが――

異なる世界へ到達した、という点では目的は果たしている。


「不測の事態も、計算のうちか」


そう結論づけるだけの冷静さは残っていた。


場所は不明。

種族は竜。

分かっている情報は、それだけ。


さらに状況を把握しようとした、その瞬間。


視界に、半透明の板が浮かび上がった。


ステータスボード。


この世界には、そうした概念が存在するらしい。


表示内容を確認する。





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 名前:不明

 種族:竜族(ロックドラゴン)

 レベル:Lv.1


 固有ユニークスキル:【製作者メイカー

     固有スキル:【硬化】【石喰い】


 称号:【異世界からの転生者】

    【大賢者】

    【禁忌に触れし者】

    【最下位種のドラゴン】



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




名前はない。

レベルは1。


前世で得ていた力は、すべて消えている。

魔法も、スキルも、魔力も。


完全なゼロからの再出発だ。


だが――

製作者メイカー】がある。


条件さえ満たせば、

魔法も、スキルも、武器も、あらゆるものを製作できる。


代価は、経験値。


今の彼には、圧倒的に足りない。

何せ、Lv.1だ。


「……なら、話は早い」


やるべきことは決まった。


このダンジョンで生き延び、

魔獣を狩り、経験値を稼ぐ。


それが、今の最優先事項。


最下位種でも構わない。

竜であることも問題ではない。


彼は静かに、一歩を踏み出した。





以前、投稿していた小説をリメイクしたものを投稿しました。一部を変更し、更に読みやすいように短文にしました。

この作品を気に入って頂けたら幸いです。

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次話も是非宜しくお願いします。

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